アップサイクルは「サステナブルだから買う」を超えられるか。伊勢丹の売場が問う商品力

残反がパジャマやジャケットに、自動車シート用の廃材が茶の道具を包む袋に。買いたくなる商品から、循環を考える。
FACTS / 「ピース de ミライ2026」で、素材は何に変わるのか
伊勢丹新宿店では10月7〜20日、「ピース de ミライ2026」を展開している。三越伊勢丹のサステナビリティ活動「think good」の期間に合わせ、残反、残糸、未利用材などを生かした商品を紹介する。売場やブランドによって会期は異なる。以下は公式ページで確認した商品例だ。
| ブランド・取り組み | 素材と具体的な商品 |
|---|---|
| ENFOLD | 過去シーズンなどの残反を活用したパジャマ、ポーチ。 |
| DEPAREILLE(デパリエ) | 過去コレクションの残反を生かしたジャケットなどのアウター。 |
| OOO(オーオ)の協業商品 | 残反・残糸を生かす取り組みから、ビスチェや靴などを展開。 |
| OOO×コヨミ×ゾクゾク | 既製靴下にも使う再生ポリエステルを袖に用いたワンピース。 |
| OOO×マーマー×モンメ | 通常は製品になりにくい形のアコヤ真珠と和紙を使ったイヤリング。 |
すべてが同じ再利用工程の商品というわけではない。例えば、靴下そのものをワンピースに作り替えた、という説明ではない。材料、加工、出来上がった商品の関係を具体的に伝えることが、価値の理解につながる。
PRODUCT / 自動車シート用の未利用材が、茶の道具を包む
嘉門工藝の公式案内では、TOYOTA UPCYCLEと小塚毛織/Canale Japanの取り組みから生まれた生地を、茶道具を包む商品へとつなげている。自動車シート用ファブリックの未利用材を活用した生地による数寄屋袋、茶礼袋、巾着型の茶器袋を展開。会期は10月7〜13日、伊勢丹新宿店本館5階のキッチンダイニング/茶道具売場だ。
服の素材が服へ戻るだけでなく、別の用途と文化に出会う。アップサイクルを「廃材を使った」という説明だけで終わらせず、暮らしの中で使いたくなる形にするという点で、事業として考える材料になる。
ANALYSIS / 環境の説明より先に、欲しくなる理由があるか
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。環境への配慮を理解しても、それだけで使いにくい形や好みに合わないデザインを買い続けるとは限らない。パジャマなら着心地、ポーチなら大きさと使い勝手、ジャケットならシルエット。購入した後の生活が想像できることが、商品としての魅力の土台になる。
限られた残反や個性のある素材は、均一な量産には不向きな場合もある。一方、素材の違いをデザインの特徴に変えたり、数量の少なさを特別感として伝えたりする余地がある。調達の都合を顧客に引き受けてもらうのではなく、制約を欲しくなる理由へ変えられるかが問われる。
未利用材の活用は資源を生かす取り組みだが、それだけで商品の環境負荷が一律に小さいと算定できるわけではない。加工、輸送、使用期間なども関係する。本記事では削減量を確認できていないため、具体的な環境効果の数値は示していない。
理想は、環境配慮を隠すことでも、それだけを売ることでもない。商品に惹かれて手に取り、使って満足し、その背景を知ってさらに好きになる。その順番で買われる商品を増やすことが、取り組みの継続性につながるのではないか。
SOURCES / 出典・元記事URL
三越伊勢丹/think good秋の取り組み・2026年10月5日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003117.000008372.html
伊勢丹新宿店/ピース de ミライ2026・商品紹介と会期
https://www.mistore.jp/shopping/feature/shops_f3/st_piecedemirai_sp/st_piecedemirai_sp_260930.html
嘉門工藝/TOYOTA UPCYCLEの生地を用いた茶道具袋
https://www.mistore.jp/store/shinjuku/shops/living/kitchen_dining/shopnews_list/shopnews026859.html
「サステナブルだから買う」より、「かわいい、欲しいと思って買った商品が、実はサステナブルだった」という状態が理想だと思います。まず、商品として魅力的であることです。
環境のためだからと顧客に我慢してもらうのではなく、デザイン、品質、使い勝手で選ばれ、その結果として環境負荷を抑えることにもつながる。その順番が重要です。アップサイクルが商品力として成立するかを、実際の売場と商品から見ていきたいと思います。
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