
ユニクロ×フランチェスコ・リッソ第2弾。感性と3Dニット技術が生む商品価値
10月30日発売の「UNIQLO F.RISSO」は、セーター5型と小物2型を展開する。デザイナーの表現を製造技術と販売基盤で商品に変える協業は、話題づくりを超えて何を生み出せるのか。
ファッションビジネスの「変化」を読む。
ニュースの先にある経営・EC・SNS・AI・店舗の変化を、編集長の視点で読み解く。
全75記事

10月30日発売の「UNIQLO F.RISSO」は、セーター5型と小物2型を展開する。デザイナーの表現を製造技術と販売基盤で商品に変える協業は、話題づくりを超えて何を生み出せるのか。

10月23日、ケリング株は取引中に約16%下落した。グループは2026年通期で少なくとも125店舗の純減を計画する。ブランド再建に必要な時間と、投資家が求める改善の速度をどう両立するか。

Gucciの2026年7〜9月売上高は12億9,100万ユーロ、比較可能ベースで6%減だった。新しい商品が届き始めても再建は一足飛びには進まない。過去の成長とクリエイティブの変遷から、ブランドを再び選んでもらう難しさを考える。

Miu Miuの2026年7〜9月の小売売上高は恒常為替で2.7%減。一方、1〜9月累計は0.8%増だった。高い前年実績を踏まえ、四半期の減速と長期的なブランド経営の課題を分けて考える。

AI関連の4指標を短期賞与の調整要素に採用し、最大±10%を反映。対象外の役員と賞与上限もある。ラルフ ローレンの制度から、AIの学習・導入と事業成果を分けて考える。

2010年と最新通期の売上を公式資料で比較。7社の変化と現在8社の規模から、順位の先にある商品・在庫・顧客接点の競争を読む。ワールド×TSIの統合も、規模と成長力を分けて考える。

着るスキンケア、LANEIGE×Matin Kim、SNIDEL BEAUTY。三つの事業モデルから、衣料の先に顧客との関係を広げる方法と、異分野へ進出する条件を考える。

バロックジャパンは通期営業利益予想を1億1,100万円へ引き下げた。EC刷新時の出荷遅延に加え、ブランド販売不振や商品評価損も重なる。決算の数字から、アパレル企業の販売基盤を支える経営課題を読み解く。

モーグル日本代表の使用済みユニフォームを全7型へ再生。来歴を伝えるDPPと競技支援を組み合わせた取り組みから、循環を商品価値と継続事業に変える条件を考える。

公式SNSは総フォロワー300万超、実店舗は10月15日時点で19店。動画の話題性を購入の確信へつなぐ、LOWYAの顧客接点の設計を読み解く。

2027年2月期の連結売上予想は10.1%増、営業利益は53.4%増。売上の上方修正と利益据え置き、事業別の動きから、増益の質と今後の課題を考える。

伸びているのは顧客の人数か、売上か。公式IRの対象期間とグループ指標を確認し、外商と専門的な接客から、百貨店が長期的な顧客関係を育てる意味を考える。

2027年3月の共同持株会社設立を予定。本部・物流・ITの効率化に加え、両社のブランドと顧客接点をどうつなぐか。公式発表と最新決算を読み、竹内真が期待する「新しい買い物体験」を考える。

コラボレーションを話題づくりで終わらせず、顧客が欲しいと思う商品と、購入へ進む体験をどう結びつけるか。ロエベとオンの2026年秋冬コレクションは、ファッション企業にこの問いを投げかける。一般発売は2026年10月15日。公式に確認できる商品内容と販売計画から、その事業上の論点を読み解く。

限定商品を並べるだけでなく、その商品が生まれた世界を店舗で体験できるようにする。メゾン マルジェラが銀座と六本木で展開する2026年秋冬のポップアップは、ファンに会いに来てもらう理由を、商品と空間の両方から設計する取り組みだ。

レスポートサック表参道店のリニューアル1周年イベントは、限定商品、使わなくなったバッグの回収、写真撮影を組み合わせる。周年という企業側の節目を、顧客が足を運ぶ具体的な価値に変えられるかが論点だ。

大丸梅田店が全館大規模改装の新構想を発表した。2027年春に一部フロアを先行開業し、2030年春ごろのグランドオープンを目指す。美、ファッション、カルチャーを集める計画と、変化する購買行動をどうつなぐか。

ファッションブランドの魅力を伝える会社と、飲食店や施設を運営する会社が組む。その接点には、広告やイベントの受託にとどまらず、ブランドや体験を自ら事業として育てる可能性がある。HiRAO INCとクラムの資本業務提携は、その可能性と難しさを考えるニュースだ。

2026年秋冬からジャケットやシャツを増やし、品番をおよそ半分に絞る。商品改革の狙いを確認し、狙う顧客とブランドの印象の距離を考える。

対話型検索、AIスタイリング、GoogleのUCP対応。Gapの具体策から、顧客とAIの両方に商品の価値を伝えるファッションECの経営課題を読み解く。

第3四半期の明暗を、ラグジュアリー対ビューティーの単純な対立で捉えない。ブランドを持つ事業と、ブランドを編集して届ける売場の違いから、成長の条件を考える。

英国のFrasers Groupがバーバリーに対する金融商品のポジションを拡大した。注目すべきは比率の大きさだけではない。売り場を持つ企業がブランドの資本にも接近するとき、商流と経営の関係はどう変わるのか。

大手メゾンで知られるキム・ジョーンズが、自身の名を冠したブランドを再始動する。日本での衣料品生産、自社ECでの販売開始、香港への出店計画をつなぐ戦略から、知名度を持続的な事業へ変える条件を考える。

上海で新たな店舗を展開するスウェーデンのアワー レガシー。中国市場の不透明さだけでは、個々のブランドの成長は説明できない。公式店舗情報とブランド側が報道で示した数値を分け、商品と売り場の組み合わせを考える。

手が届く価格で、選ぶ理由をつくるブランドが成長している。ただし、増収という結果だけで高級品の顧客が移ったとは言えない。価格帯を超えて問われる「支払う価値」を考える。

仕入れの判断材料は商品価格だけではなくなった。独立系小売の取引データから、輸送・関税・在庫・資金繰りを一緒に考える仕入れ戦略を読み解く。

H&Mはオンライン上の攻撃に関する主張を調査し、現時点でデータ環境への侵害の兆候は確認していないと回答。未確認の被害を断定せず、顧客情報を預かる企業の管理課題を考える。

価格、納期、店舗、品ぞろえを一つの購入体験へ。伸びるオーダー事業を、既存需要の獲得と新規需要の創出に分けて考える。

都立明治公園にBEAMS SPORTS初のコンセプトストア。スポーツ、古着、カフェを重ねた新拠点から、売上だけでは測れない店舗の役割を考える。

ブラジャーのカップをつくる技術が、身体を包む新しい造形へ。COCOON BODYは、日本企業の研究開発をファッションの競争力へ変える可能性を問いかける。

ナイキの中国減収と、LVMHのアジア回復は同じ話ではない。決算の範囲を分け、世界的ブランドが次の顧客に選ばれる条件を考える。

10月16日発売の2026年秋冬コレクション。2017年から続く協業を、集客・顧客創造・商品開発への投資として読み解く。継続と利益の証明は分けて考える。

2026年8月期決算を国内・海外・地域別に分解。商品を作る力と、売り切るまでをつなぐ経営構造の強さを読む。

ヒートテックとエアリズムを支えるのは、生活の不便を素材と仕様の改良に変える力。AI需要予測の先にある、生産と在庫を動かす経営まで考える。

1976〜2025年の官公庁資料から、市場金額、供給点数、EC化率を読み解く。売上の拡大だけを追う経営から、自ら変化を起こす経営へ。

発信を任せるだけでなく、学び、評価され、次の人を育てる仕組みへ。販売員と外部アンバサダー、それぞれの役割を考える。

売上の伸び以上に利益が増えた理由を、粗利・値引き・費用から分解する。巨大な会員基盤の価値は、人数の先にある。

増収増益と、アンタイトル・タケオキクチの減収を分けて読む。買収後の経営力と、主力ブランドの再生を両面から評価する。

レディース、メンズ、オーダー、化粧品に成長の柱。欧州の赤字と米国の黒字転換を分け、次に資源を投じる先を考える。

日本の公式データと直近の市場推計から、美容の強さを分解する。出品を増やす前に考えたい、商品・コンテンツ・接客のつなぎ方。

日本の15ブランドを、聖水の店頭と韓国向けECへ。逆方向のブランド流通は、体験から購入へつながるか。

一度の投稿依頼から、継続的な関係へ。商品提供、制作支援、報酬、顧客の声をつなぐ仕組みが変わり始めている。

経験と感性をデータで補強する商品企画へ。現在の活用と今後の計画を分け、AIが支える四つの判断を考える。

古着市場の拡大は、販売チャネルの話だけではない。素材や作り、過去のデザインが、次の持ち主に選ばれる価値を考える。

残反がパジャマやジャケットに、自動車シート用の廃材が茶の道具を包む袋に。買いたくなる商品から、循環を考える。

カード取引の減速と、トップ顧客への依存は同じ数字ではない。市場平均の先にある顧客構成を読み解く。

季節感は残し、素材と供給を気温に合わせる。販売期間が短くなる時代の在庫戦略を、翌年も売れる定番から考える。

市場全体の不振だけでは説明できない明暗。数字と「このブランドじゃなきゃ嫌だ」を生む顧客接点を分けて考える。

会社が下期に計画する営業利益は26億円。9月の販売回復と「五季」戦略を、秋冬の収益計画につなげて読む。

DiscoatとBEARDSLEYは増収、ノーリーズは減収減益。同じグループでも、業績を動かす条件は一様ではない。

競争力を左右するのは「顧客と商品企画の距離」。パルのブランド間格差を起点に、現場とデータ、AIがつなぐ企画のループを考える。

88店・1年の検証を経て本格展開。アンドエスティとの協業を、編集長は前向きに見る。

2025年の消費市場は金額で拡大、数量は40億点未満。価格や商品構成の見方を再確認する。

W&Dが内野の事業を引き継ぐ新会社を子会社化へ。老舗の規模と収益を分けて見る。

2024年の流通総額は70億円。編集長が注目するのは、物流・在庫を含む事業モデルだ。

9月の既存店販売が好調。客数だけでなく、秋物への移行による客単価の変化を読む。

三越伊勢丹は11%増。外商・訪日客の動きと、独自の売場を生む文化を分けて考える。

パリで新作を発表する一方、売上減と赤字が課題。編集長は商品よりも伝え方に目を向ける。

双日ファッションを取得し、バンセットへ改称。素材開発と海外販路の組み合わせに注目する。

LVMHやプラダと、ファストファッション企業の相対評価に差。知名度と成長期待を切り分ける。

海外認定バイヤー来場者数が増加。次のシーズンにも関心が続くかを見たい。

売上減が続くナイキが運営体制を再設計。効率化と、地域ごとの魅力づくりをどう両立するのか。

身長やサイズによる着用イメージをAIで補足。画像制作の効率と、購入判断への効果を分けて考える。

Re{form}の発売で問われるのは、デザインの意外性だけではない。ZARAという名前に対する価格の認識だ。

大丸東京で約6,000人が体験したXRホラーが、東京・福岡・静岡へ。小売の外に価値を作る挑戦を読む。

開業20周年に合わせ、2029年春まで段階的に刷新。コスメ、食、エンタメを通じて来館の理由を増やす。

1968年開店の西武渋谷が9月30日に営業を終了。変わる街と、売場の規模・役割の関係を考える。

福岡伊都店にHUBゾーンとリペア・ラボ。新しい店づくりを、継続する価値の視点で見る。
人気モデルの大量流通と値引き。その先で、ブランド価値をどう再構築するのか。編集長が現場の声も交えて考える。
ZARAのアーカイブをジョン・ガリアーノが再解釈。編集長自身も「買ってみたい」と感じたコラボを読む。
日本のファッションビジネスを牽引してきた企業が海外へ。価格競争力を含め、そのチャレンジを追う。
持株会社化したユナイテッドアローズ。社名変更の先に、かつての“らしさ”はどう引き継がれるのか。
人気スタッフが商品をプロデュース。販売員が“売る人”から“ファンを持つブランド資産”へ変わる。
商品企画から「ささげ」までAIを活用。アダストリアの新ブランドは、ファッション企業の利益構造を変えるか。
価格だけではない。K-POP、旅行、カルチャーへの好意をファッション消費につなげる韓国ブランドの強さ。
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人気モデルの大量流通と値引き。その先で、ブランド価値をどう再構築するのか。編集長が現場の声も交えて考える。
ナイキの売上不振は、ファッション業界でもよく話題に上がるテーマです。編集長自身も業界関係者との会話の中で、最近ナイキの売上が落ちているという話を耳にする機会が増えています。
人気モデルを量産し、広く売りすぎたことで、希少性やプレミアム感が薄れてしまった側面はないでしょうか。『みんなが持っているから、逆に持っているのが格好よくない』という空気が生まれるのは、ファッションブランドにとって怖いことです。
サードパーティECから距離を取り、値引きを抑えながらプレミアム感を取り戻す戦略は理解できます。ただ、一度値引きで買えるようになった商品を、再び値引きなしで買ってもらうのは簡単ではありません。
ナイキがここからブランド価値をどう再構築するのか。これからの動きに注目しています。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
ZARAのアーカイブをジョン・ガリアーノが再解釈。編集長自身も「買ってみたい」と感じたコラボを読む。
ZARAがジョン・ガリアーノとのプロジェクト「Re{form}」を展開。ZARAの過去の商品を再構築する企画です。
これは、めちゃくちゃいいコラボだと思います。ZARAがガリアーノを選ぶという組み合わせ自体が、少し意外でした。
コラボは名前の大きさだけではなく、『その組み合わせを見た瞬間に気になるか』が大切。その意味で今回は成功していると思います。編集長個人としても、実際に何か買ってみたいと思いました。
低価格・大量販売というZARAのイメージに、ガリアーノのクリエイティビティが加わることで、価格とは別の価値が生まれています。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
日本のファッションビジネスを牽引してきた企業が海外へ。価格競争力を含め、そのチャレンジを追う。
アンドエスティHDはベトナム市場への展開を進め、現地向けの新ブランド投入を計画しています。
アンドエスティは、日本のファッションビジネスの中でも長く成長・拡大を続けているリーダー的な企業の一つだと思っています。
一方、ベトナムは日本より物価水準が低い領域も多く、日本で成立している価格がそのまま通用するとは限りません。円安という環境を考えても、価格をどこまで現地に合わせながらブランド価値を作れるかが勝負になるでしょう。
成長を続けるアンドエスティが海外でどんな勝負をするのか。そのチャレンジは注目に値します。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
持株会社化したユナイテッドアローズ。社名変更の先に、かつての“らしさ”はどう引き継がれるのか。
ユナイテッドアローズは持株会社体制へ移行し、TABAYAホールディングスへ。グループ経営の新しいフェーズに入ります。
まず率直に感じたのは、『TABAYAホールディングス』という名前の分かりにくさです。UNITED ARROWSの『束ねる』『矢』から『束矢』という発想につながっているのだと思いますが、グループとしてどの方向へ向かうのかは、まだ少し見えにくい。
もう一つ注目したいのが経営の世代交代です。ユナイテッドアローズは創業以来、独特の美意識やカルチャーを持った会社でした。新しい世代が経営を担う今、かつての『ユナイテッドアローズらしさ』やイズムをどこまで引き継げるのか。
規模や事業領域を広げるだけではなく、『この会社だから格好いい』と感じさせてきたものを次の世代がどう再定義するのか。そこに注目しています。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
人気スタッフが商品をプロデュース。販売員が“売る人”から“ファンを持つブランド資産”へ変わる。
JEANASISではSNSで支持を集めるスタッフが商品企画にも参加。販売員の発信力を商品づくりまで広げる取り組みが進んでいます。
こういう取り組みは、すごく価値があるし、売れると思います。
今は服そのものだけで差別化することが非常に難しい。だからこそ、『何を買うか』だけでなく『誰から買うか』が重要になっています。自分が知っている人、自分が推している人から服を買いたいというユーザー心理は確実にある。
SNSで人気の販売員を育てるだけでなく、その人たちに服を作らせるところまで取り組めているのはかなり面白い。販売員は単なる販売チャネルではなく、ブランド資産になっていくと思います。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
商品企画から「ささげ」までAIを活用。アダストリアの新ブランドは、ファッション企業の利益構造を変えるか。
アダストリアがAIと共創する新アパレルブランド「ELMIRA」を展開。商品企画や制作・EC運営などにAIを組み込む試みです。
これが本当に一人で回せるようになったら、すごいことです。
もちろん、裏側にはアダストリアがこれまで蓄積してきた商品企画、物流、ささげ、販売データや各種ツールがある。その基盤があるからこそ実現できる部分も大きいと思います。
それでもAIによって制作や運営業務に必要な人数を減らせれば、ブランドの利益率は大きく変わります。そして単純に、『AIが考える商品企画って、どんな服になるんだろう?』という興味もある。注目して追いたいブランドです。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
価格だけではない。K-POP、旅行、カルチャーへの好意をファッション消費につなげる韓国ブランドの強さ。
韓国発ファッションブランドの日本進出が続き、ECだけでなくリアル店舗での展開も広がっています。
韓国ブランドは、日本ブランドと比べても手に取りやすい価格の商品が多いですよね。
それに加えて、K-POPのミュージシャンやアイドルが人気で、旅行先としても韓国は人気。つまり、若い人たちの中には『韓国そのものが好き』という大きな土台があります。
そのカルチャーへの好意を、ちゃんとファッションビジネスのチャンスにつなげて日本へ出てくる。韓国ブランドは抜け目ないなと思います。服だけを売っているのではなく、韓国カルチャー全体の勢いをビジネスにつなげているところが強い。
編集プレビュー:出典・事実関係の確認前の原稿です。写真はテーマのイメージであり、紹介商品・店舗の実物ではありません。
売上減が続くナイキが運営体制を再設計。効率化と、地域ごとの魅力づくりをどう両立するのか。
ナイキは10月1日、2027年度第1四半期(2026年8月31日まで)の決算を発表した。売上高は112億ドルで前年同期比4%減。為替影響を除くと5%減だった。一方、売上総利益率は42.8%と0.6ポイント改善した。
直販事業の売上高は41億ドルで8%減。内訳ではデジタルが13%減、自社店舗が5%減となった。卸売は68億ドルで1%減。単に販売経路を切り替えるだけでは成長に戻りきれていないことが、決算の数字から読み取れる。
新たな変革計画「Pace」は、供給網の刷新、インドの新拠点、地域区分の3地域への再編、組織の効率化を含む。2031年度までの累計削減効果は約25億ドル、税引き前の関連費用は約10億ドルを見込む。いずれも会社の見積もりで、確定した成果ではない。
ロイターによると地域は米州、アジア太平洋・中華圏、EMEAの3区分となる。再編は効率を高める一方、地域の顧客に合う商品を生み出せるかも問われる。地域区分の変更と各国への権限移譲は同じことではない。
NIKE決算発表(SEC提出資料)
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/320187/000032018726000184/q1fy27exhibit991er.htm
Reuters/2026年10月1日
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/nike-quarterly-sales-miss-estimates-china-weakness-competition-weigh-2026-10-01/
グローバルとローカライズの間を行き来するのは、大企業が定期的に繰り返していることだと感じます。ある時期は中央集権にして、どの国でも同じブランディングを徹底する。その後、現地に合わせた動きが必要になる。10〜15年ほどの周期で繰り返している印象です。
もし各国で意思決定できる余地が広がるなら、現地のアーティストとの取り組みなど、その国ならではの面白い商品が出てくることを期待したいです。
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身長やサイズによる着用イメージをAIで補足。画像制作の効率と、購入判断への効果を分けて考える。
ハイテックシステムズは10月1日、AI着用画像生成サービス「AIfitte」に着丈調整機能を追加した。平置きやトルソーの商品画像をもとに、モデルの身長・体型に応じた丈感を表現する。
同じ身長のモデルでS・M・Lの違いを見せたり、同じ商品サイズを異なる身長のモデルが着るイメージを作ったりできる。公式発表の例は167cmのモデルのサイズ比較と、155cm・162cm・167cmの身長比較だ。
年契約のライトプランは月額19,800円(税別)で月120クレジット。初回は14日間・30枚までの無料トライアルを用意する。10月7〜9日のFaW TOKYO秋展でも紹介予定だ。
提供元は、生成画像が実際の着用状態や寸法を保証するものではないと明記している。サイズ表を補う視覚情報と、実際のフィットを保証する情報は区別が必要だ。購入率がどれだけ改善するかという実測値は、この発表では示されていない。
ハイテックシステムズ発表/2026年10月1日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000187239.html
導入したい企業はあると思います。ただ、一般的なレディースやメンズのECで、これによってコンバージョンが大きく改善するかというと、効果はそこまで大きくないのではないでしょうか。
一方でキッズや、特定の体型・ニッチなニーズに応えるECでは、非常に需要がありそうです。サイズ推奨もあくまで参考値で、推奨されたサイズが実際には大きすぎることもある。画像があることと、自分に合うサイズが分かることは分けて考えたいです。
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Re{form}の発売で問われるのは、デザインの意外性だけではない。ZARAという名前に対する価格の認識だ。
ZARAとジョン・ガリアーノによる初のコレクション「Re{form}」が登場した。第1章は「Vol. 1 09/2026」。ZARAのアーカイブを裁断・解体・再構築し、クチュールの技法を持ち込んだジェンダーレスの衣服として展開する。
Vogue Japanは、複数の服をひとつのシルエットにまとめる手法やバイアスカットを紹介。バッグには手持ち、肩掛け、バックパックという3つの使い方を持つ「Tri-Chic」もある。
10月2日のVogue報道では、シフォンドレスが999ドル、フェイクファーの襟付きコートが759ドル。いずれも同記事に掲載された海外価格で、日本価格ではない。ロンドンの店舗では行列が見られ、パリでは予約制の展示兼ポップアップが開かれた。
同記事は執筆時点でオンライン86商品が売り切れと報じている。ただし初期在庫や対象市場の全体は明らかではなく、この数字だけから販売規模や完売率を断定することはできない。
Vogue Japan/2026年10月1日
https://www.vogue.co.jp/article/john-galliano-zara-collaboration-collection
Vogue/2026年10月2日
https://www.vogue.com/article/in-the-queue-for-john-gallianos-zara
これは「ZARAにいくらまで払うか」という、顧客の中にある価格の上限を、デザイナーの名前とクリエイティビティで引き上げられるかという実験として見ると面白いです。
普段のZARAより高い価格でも、ガリアーノの作品を買うという認識になれば、顧客の判断基準は変わる。コラボが話題を作るだけでなく、ブランドに対する価格の認識をどこまで変えられるかに注目したいです。
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大丸東京で約6,000人が体験したXRホラーが、東京・福岡・静岡へ。小売の外に価値を作る挑戦を読む。
大丸松坂屋百貨店は、闇、日本XRセンターと共同開発したXRホラー「迷界デパート」を外部施設へ展開する。大丸東京店では7月16日〜8月11日に開催し、会社発表によると約6,000人が体験した。
9月5日から日本XRセンターの中野ブロードウェイ店と福岡店で提供を開始。10月3日〜11月30日は松坂屋静岡店の期間限定ゾーン「XR GATE」で実施する。静岡ではホラーに加え、深海と宇宙をテーマとする計3つのXR体験を揃える。
ヘッドセットを着けて実際の空間を歩く方式で、百貨店の夜間警備員として異世界を探索する。大掛かりな造作を必要とせず、催事場や空きスペースに導入できる点を提供元は特徴に挙げる。
大丸松坂屋は商業施設、レジャー施設、観光施設などへの外部展開を掲げる。商品の販売に加え、コンテンツそのものを収益機会に変える構想だ。約6,000人という体験者数は公表されているが、利益や投資回収の実績は同発表にはない。
大丸松坂屋百貨店公式発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003903.000025003.html
まず、ナイスチャレンジだと思います。百貨店にはこれからもいろいろな挑戦をしてほしいです。
ただ、百貨店はもともと小売で、制作機能が豊富な会社とは違います。「売るのが強い人が作ったら、本当に面白いのか」という疑問はあります。今回のように専門会社と組むことも含め、売る力と作る力をどうつなげていくのかに注目しています。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介施設・商品・サービスの実物ではありません。
開業20周年に合わせ、2029年春まで段階的に刷新。コスメ、食、エンタメを通じて来館の理由を増やす。
三井不動産はラゾーナ川崎プラザで、2026年10月〜2029年春にかけて段階的な大規模リニューアルを行う。2006年9月の開業から20周年を迎える施設で、今回の規模は過去最大級と発表した。
新コンセプトは「Culture Mash up」。ファッション、エンターテインメント、スポーツ、アートが交わる場を目指し、共用部の改修と店舗の入れ替えを進める。2階の駅側モールにコスメ・フレグランスエリアを設け、フードコートも増床して店舗と客席を刷新する。
過去の大規模改装は2012年と2018年。前者ではファッションブランドの誘致、後者ではルーファ広場の人工芝や食エリアの刷新を行った。今回も、物販だけにとどまらず滞在と体験を強化する流れにある。
会社はブランドの世界観を体感する機会や、スポーツ・エンタメとの連携イベントも掲げる。商品を買う以外の来館目的を増やす計画と読める。ただし個別のイベント内容や全テナントは今後の追加発表事項となる。
三井不動産公式発表/2026年7月22日
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2026/0722_02/
「行く理由を作る」という考え方はいいと思います。商品やブランドがあるだけで、わざわざ出かけてもらえるとは限らない。
そこで期待したいのは、人に会える理由です。販売員でもタレントでも、「あの人に会いに行こう」と思える施策があると面白い。施設の魅力を、商品だけでなく人まで含めて考えてほしいです。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介施設・商品・サービスの実物ではありません。
1968年開店の西武渋谷が9月30日に営業を終了。変わる街と、売場の規模・役割の関係を考える。
西武渋谷店は2026年9月30日に営業を終了した。1968年開店から58年。そごう・西武は6月23日の公式発表で終了日を告知し、営業の歴史を振り返る写真展などを案内していた。
東急が運営する渋谷文化プロジェクトの9月30日報道も、同日の閉店を伝えている。ロフト館とモヴィーダ館はそれぞれ単館として営業を継続するとしており、周辺の関連施設すべてが閉まるわけではない。
公式の振り返り企画では、1968年の開店からのプロモーションや改装を写真で紹介した。58年という時間は、西武が渋谷のファッションやカルチャーの形成に関わってきた歴史でもある。
営業終了という事実と、その背景をどう評価するかは分けたい。来街者が街に求める体験と売場の役割が合っていたか、必要なブランドに規模を絞る選択肢があったかは、ここから先の編集長の見立てとなる。
そごう・西武公式発表/2026年6月23日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002426.000031382.html
渋谷文化プロジェクト/2026年9月30日
https://biz.shibuyabunka.com/watch/113/
今の渋谷は、買う街というより遊ぶ街になっていると感じます。そこに従来の百貨店の形をそのまま残しても、街に来る人の目的と合わなくなっていたのではないでしょうか。
もっと早い段階で、渋谷で必要とされるブランドに絞り、規模を縮小する判断があってもよかったと思います。街の変化に合わせて、売場の大きさや役割も変えていく必要があると感じます。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介施設・商品・サービスの実物ではありません。
福岡伊都店にHUBゾーンとリペア・ラボ。新しい店づくりを、継続する価値の視点で見る。
ライトオンは10月2日、イオンモール福岡伊都店を10月9日に開くと発表した。「体験・滞在型」を掲げ、見通しのよい動線と、店内を回遊しやすい構成を採用する。
中央の「HUBゾーン」では生活雑貨や季節の商品を集める。ガラス張りの「リペア・ラボ」では裾直しを間近で見られるようにし、デニムの品質や手仕事を店舗で感じられる構成にする。
オープン時にはFanatics | MLBの限定商品コーナーも設置。10月9〜12日は対象商品を購入した先着100人への特典を用意し、10月10日にはものまねタレントの来店と、対象購入者向け撮影・握手会を予定する。
商品を並べる場所に、工程を見る体験や人に会う機会を加える構想だ。開店前の発表であり、滞在時間や売上などの成果はまだ示されていない。体験型の設計が継続的な来店につながるかは、開店後に見ていく必要がある。
ライトオン公式発表/2026年10月2日
https://biz.right-on.co.jp/news/shop/1002/
始めること自体は、ナイスチャレンジだと思います。ただ、本当に価値があるのは続けること。それも、アップデートしながら続けることです。
お客さんが滞在して楽しい場所であり続けるには、開店時の仕掛けだけでは足りません。毎年更新しながら続けていく。その継続まで含めて、この取り組みを見たいと思います。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介施設・商品・サービスの実物ではありません。

9月の既存店販売が好調。客数だけでなく、秋物への移行による客単価の変化を読む。
WWDJAPANの2026年10月2日報道によると、9月の既存店売上高(EC含む)は国内ユニクロが前年同月比10.8%増、無印良品が11.6%増、ユナイテッドアローズが10.5%増だった。
ユニクロでは客数が0.5%増、客単価が11.3%増。メリノウールやカシミヤなど高単価の秋物が早めに動いた。無印良品でも客単価は9.7%増となり、ルームウエアやパジャマが好調だった。
前年の残暑に対し、今年は気温低下が秋物の購入を促したと報じられている。前年より休日が1日多く、記事は売上を1〜2ポイント押し上げる効果も見込む。増収をすべて商品力や集客施策の成果とみなすことはできない。
WWDJAPAN/2026年10月2日
https://www.wwdjapan.com/articles/2515393
各社の売上が良かったのは、まず良かったと思います。ただ、アパレルの売上が気温に左右されるのは昔から変わらず、大変ですよね。
小回りが利くのは、現場の販売スタッフだと思います。その地域の気温をつかんで、寒い日ならウールの商品をInstagramで紹介する。お客さんとLINEでつながっていれば、そちらでも紹介できる。まずは各店舗の販売スタッフがInstagramで、その日の気温に合うおすすめを発信するところから始めてほしいです。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介ブランド・施設の実物を示すものではありません。

三越伊勢丹は11%増。外商・訪日客の動きと、独自の売場を生む文化を分けて考える。
WWDJAPANの2026年10月2日報道によると、大手百貨店4社の9月売上は、三越伊勢丹が前年同月比11.0%増、高島屋が4.0%増、阪急阪神百貨店が9.5%増、大丸松坂屋百貨店が1.9%減だった。
大丸松坂屋は改装中の大丸梅田店を除くと1.5%増。三越伊勢丹では国内客売上が7.1%増、訪日客の免税売上が35.5%増となり、外商上位顧客向け催事も伸びた。
気温低下で秋物衣料が動き、国内富裕層と訪日客の消費も販売を支えた。ここで示した数値は各社の集計であり、伊勢丹新宿店単独の業績ではない。新宿店への評価は、以下の編集長の見立てである。
WWDJAPAN/2026年10月2日
https://www.wwdjapan.com/articles/2514899
特に伊勢丹新宿店は、ほかの百貨店とは一線を画していると感じます。面白いし、品ぞろえも良く、買い回りもしやすい。
他にないブランドや、面白いと思えるものをきちんと誘致できる。その背景には、脈々と続いてきた社員のカルチャーがあると思います。ほかの百貨店が簡単にまねできるものではなく、時間をかけてにじみ出てくるものではないでしょうか。
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パリで新作を発表する一方、売上減と赤字が課題。編集長は商品よりも伝え方に目を向ける。
ロイターの2026年10月4日報道によると、ヴァレンティノは同日、パリのサント・ジュヌヴィエーヴ図書館で2027年春夏コレクションを発表した。アレッサンドロ・ミケーレによる、鮮やかな色と装飾が特徴の提案だった。
同報道では、前年の売上が15%減少し、1億300万ユーロの損失となったとされる。株主は2026年6月に追加資金支援を決めている。新作への注目が販売回復につながるかが課題だが、宣伝不足が減収の原因と確認されたわけではない。
Reuters/2026年10月4日
https://www.reuters.com/lifestyle/valentino-unveils-corset-tops-and-chunky-jewellery-at-fashion-show-19th-century-2026-10-04/
再建は厳しいのではないかと感じます。ただ、ヴァレンティノのクリエイティブや服自体が悪いとは思っていません。かっこいいものもあるし、ミケーレになったことも良いと思っています。
私が弱いと感じるのは宣伝です。ルイ・ヴィトンのような強いブランドがある領域で、少なくともディオールと張り合えるくらいの存在感がほしい。広告やSNSを、まずしっかり活用していく必要があると思います。
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双日ファッションを取得し、バンセットへ改称。素材開発と海外販路の組み合わせに注目する。
WWDJAPANによると、八木通商は2026年9月30日付で双日ファッションの全株式を取得した。同日付で社名をバンセットへ変更。取得金額は非公表。
旧双日ファッションは1960年設立で、直近の年商は75億円。オリジナル生地の開発と、テキスタイル専用のネット販売システム「バンセットネット」に強みを持つ。
八木通商は欧米・アジアのネットワークを使い、テキスタイル事業の発展を目指す。海外販路を活用する方針と、実際に需要や受注が増えることは別であり、買収後の成果は今後確認する必要がある。
WWDJAPAN/全株式取得:2026年9月30日
https://www.wwdjapan.com/articles/2516941
八木通商のM&Aは独自の動きがあって、ユニークだなと思います。今回、テキスタイル企業を買収したことも、その一つとして見ています。
ただ、評価はまだ様子見です。双日のテキスタイル事業が世界でどれほどスケールするのか。日本のテキスタイルがどれくらい求められているのか。そこはまだ分からないので、今後の動きを見たいと思います。
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LVMHやプラダと、ファストファッション企業の相対評価に差。知名度と成長期待を切り分ける。
今回確認したウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、LVMHとプラダの株式が、ZARAの親会社インディテックスやH&Mに比べて大きな割安評価で取引されていると報じている。
これは服やバッグの商品価格の比較でも、1株当たりの株価の単純比較でもない。企業の成長や収益に対する株式市場の相対評価の話だ。記事は、高級ブランドの成長を支えた従来の流れへの懸念を指摘する。今回取得できた本文範囲では、評価倍率の具体的な数値は確認できないため掲載しない。
The Wall Street Journal/2026年10月5日確認
https://www.wsj.com/business/retail/luxury-stocks-are-selling-at-fast-fashion-prices-691ae978
これから成長するかと言われると、今はもう成長しきっている感じがあります。高止まりして、現状維持という見方ですね。
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海外認定バイヤー来場者数が増加。次のシーズンにも関心が続くかを見たい。
WWDJAPANの2026年10月5日発売号紹介によると、9月のロンドン・ファッション・ウイークでは海外の認定バイヤー来場者数が前年比41%増となった。数値は英国ファッション協議会によるものとして紹介されている。
同記事は、マックイーンの帰還と、クリストファー・ケインによる新生マルベリーのデビューショーを主なトピックに挙げている。
増えたのは海外の認定バイヤーの来場者数で、一般来場者全体や受注額の増加率ではない。買い付けの関心が戻る兆しとして読めるが、継続性や売上への効果は今後の確認事項となる。
WWDJAPAN/2026年10月5日発売号紹介
https://www.wwdjapan.com/articles/2514718
人が増えたのは、すごく良かったと思います。来年も、もう一度注目したいですね。
昔はロンドンコレクションが注目されていた時期もありましたが、近年はパリやミラノに比べると、あまり注目されていなかった印象があります。今回の動きが続くかを見たいと思います。
写真は記事テーマのイメージであり、紹介ブランド・施設の実物を示すものではありません。

88店・1年の検証を経て本格展開。アンドエスティとの協業を、編集長は前向きに見る。
セブン‐イレブン・ジャパンはアンドエスティと共同開発したファッション雑貨を、2026年9月25日から全国で順次発売した。「niko and ...」「LOWRYS FARM」のソックスやTシャツなどが並ぶ。9月の17アイテムと、10月23日発売予定のハローキティとの6アイテムを合わせて23アイテムとなる。
FASHIONSNAPの取材によると、2025年6月から埼玉県内の88店で約1年間テストし、品ぞろえやパッケージを検証した。試着しにくい売場では、写真で着用イメージを伝えることも重要だった。
全国で発注できる体制と、すべての店舗で同じ商品を販売することは異なる。取り扱いや売場の規模は各店舗の判断による。ベーシックな日用品への編集長の期待に加え、企業側は新たな客層と「選ぶ楽しさ」を狙っている。
セブン‐イレブン公式発表/2026年9月8日
https://www.sej.co.jp/company/news_release/news/2026/202609081100.html
FASHIONSNAP/2026年10月5日
https://www.fashionsnap.com/article/seven-eleven-convenience-store-fashion/
この取り組みは「あり」だと思います。コンビニでは、肌着や下着など、日常に必要なベーシックアイテムが強いのではないでしょうか。
セブンがアンドエスティと組んでいる点も良いと思います。身近な売場と、服を作り売ってきた会社の組み合わせを、前向きに見ています。
写真は記事テーマのイメージで、紹介ブランドや商品の実物を示すものではありません。

2025年の消費市場は金額で拡大、数量は40億点未満。価格や商品構成の見方を再確認する。
繊研新聞社の推定によると、2025年の日本の衣料品消費市場は金額ベースで5年連続で増加し、コロナ禍前の水準を上回った。数量は3年ぶりに増加したものの、40億点未満が続いた。
金額の回復は、購入点数がコロナ前に戻ったことを意味しない。一方で「数量がまったく増えていない」とするのも正確ではなく、2025年は前年に比べて増加している。
今朝の会話では、インフレや高単価商品への構成変化を回復要因の仮説として挙げた。ただし元記事の公開部分には、2025年の平均価格は若干下がったとある。単年の増加を値上げだけで説明することや、ラグジュアリー比率の上昇を確定要因とすることはできない。具体的な市場金額や要因別の寄与率は、確認できた範囲では掲載しない。
繊研新聞/2026年10月5日(公開部分を確認)
https://senken.co.jp/posts/clothing-consumer-market-261005
金額ではコロナ前を超えているのに、数量では戻り切っていない。その違いには驚きました。
今朝は、物価高やインフレ、高単価の商品やラグジュアリーの比率が変わった可能性という方向で考えました。市場の回復を読むときは、金額と数量を分けて見たいと思います。
写真は記事テーマのイメージで、紹介ブランドや商品の実物を示すものではありません。

W&Dが内野の事業を引き継ぐ新会社を子会社化へ。老舗の規模と収益を分けて見る。
ワールドと日本政策投資銀行(DBJ)の共同出資会社W&Dインベストメントデザインが、内野の事業を承継する新会社を完全子会社化する予定だ。DBJの2026年10月5日発表では、地域経済活性化支援機構の再生支援決定を受け、事業と承継対象の金融債務を吸収分割で引き継ぐとしている。
WWDJAPANによると、効力発生日は2026年12月1日を予定する。内野は約90年にわたり、タオルやホームウェアを手掛けてきた。
WWDJAPANが報じた2026年8月期速報は売上高約118億円、営業損失約5億円。繊研新聞が示した2025年8月期の売上高118億1800万円とは対象年度が異なるため、混同しない。
報道では百貨店市場の縮小、原価高騰、円安が経営の重荷となった。ワールドの企画、生産、販売、デジタル、物流などの基盤を使い、BtoBの拡大や事業の立て直しを進める方針。事業承継の決定と、再生が成功することは別であり、成果は今後の確認が必要だ。
日本政策投資銀行/2026年10月5日
https://www.dbj.jp/news/20261005_7273.html
WWDJAPAN/2026年10月5日
https://www.wwdjapan.com/articles/2518037
繊研新聞/2026年10月5日
https://senken.co.jp/posts/wdidesign-261005
今朝の会話では、まず赤字かどうかを確認しました。売上が118億円あっても営業赤字なら、規模だけで判断できません。
「その規模があるのに赤字で、どう再生するか」という切り口で見たいと思います。
写真は記事テーマのイメージで、紹介ブランドや商品の実物を示すものではありません。

2024年の流通総額は70億円。編集長が注目するのは、物流・在庫を含む事業モデルだ。
韓国発のファッションEC「nugu」は、2026年12月31日をもって運営を当面休止すると発表した。FASHIONSNAPの10月5日報道によると、再開時期は未定。ポイント、クーポン、会員情報などの取り扱いは、ストア内の案内で知らせるとしている。
nuguはインフルエンサーが商品を選び、ショップを開いて販売する仕組みを特徴としてきた。報道によると、2025年6月時点の累計会員数は150万人を超え、2024年の流通総額は70億円だった。
70億円はプラットフォーム上の取引規模を示す流通総額(GMV)で、運営会社の売上高や利益ではない。休止だけから赤字額や原因を確定することはできず、物流・在庫・配送コストが原因という見方も、現時点では編集長の仮説として扱う。韓国ファッション市場全体の失速を示す数字でもない。
FASHIONSNAP/2026年10月5日
https://www.fashionsnap.com/article/2026-10-05/nugu-close/
2022年ごろには、nuguは今後すごく大きくなるのではないかと注目していました。今回の休止を、韓国ファッションのブームが終わったという話で捉えてはいません。
私が気になるのは、物流や在庫、配送、バックエンドを含めたビジネスモデルの構造です。70億円規模の取引があっても、そこから持続的に利益を出せる仕組みだったのか。その点を見たいと思います。
写真は記事テーマのイメージで、紹介ブランドや商品の実物を示すものではありません。

市場全体の不振だけでは説明できない明暗。数字と「このブランドじゃなきゃ嫌だ」を生む顧客接点を分けて考える。
10月6日のReuters BreakingviewsによるLVMHの分析を起点に、今日の編集会議ではラグジュアリーの「ブランド間格差」を議論した。同記事は論評であり、企業の決算発表そのものとは区別する。足元を確かめるため、各社の一次資料とシャネルについてのReuters報道を読み直した。
LVMHの2026年上期売上高は386億4400万ユーロ。公表額では前年同期比3%減だが、為替と連結範囲の影響を除くオーガニック成長率は2%増だった。ファッション&レザーグッズは同基準で上期1%減、4〜6月だけでは1%増。一方、時計・宝飾は上期9%増で、同じグループの中でも動きはそろっていない。
カルティエやヴァン クリーフ&アーペルを擁するリシュモンは、2026年4〜6月のグループ売上高が為替一定ベースで20%増、宝飾メゾンが24%増と発表した。LVMHの半年間とは対象期間も事業構成も異なるため、この数字だけで企業の優劣を順位づけすることはできない。それでも、ラグジュアリーのすべての領域が一様に落ち込んでいるとは言い切れない。
シャネルの2026年上期売上高は比較可能ベースで16%増だったと、Reutersが8月5日にBloombergの報道を伝えている。これは関係者を情報源とする報道値で、シャネルの公式中間決算ではない。同社はコメントを控えており、確定した会社開示の数字と同列には扱わない。
LVMH自身も、ディオールの新デザインやルイ・ヴィトンの北京・ソウルの新店舗、ロロ・ピアーナの好調に言及している。ただし、ここで挙げられた個別ブランドの増収率は公表されていない。顧客層、地域、商品分野、新作投入や店舗展開など、差を生む要因は複数ある。
今日の議論の中心は、値上げしても指名買いされるブランドと、そうではないブランドの差が広がっているのではないか、という問いだった。今回の売上資料だけで、値上げ後の購買行動やその原因を証明することはできない。価格に納得する理由を、商品から接客まで一貫して作れているかという視点は、以下の編集長による考察として位置づける。
LVMH/2026年上期業績・7月27日
https://www.lvmh.com/en/publications/accelerating-growth-in-the-second-quarter---solid-first-half-results
Richemont/2026年6月末までの第1四半期・7月15日
https://www.richemont.com/news-media/press-releases-news/richemont-posts-strong-start-to-the-year-with-sales-up-by-20-at-constant-rates-for-its-first-quarter-ended-30-june-2026/
Reuters/シャネルに関するBloomberg報道・8月5日
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/chanels-first-half-sales-outperform-rivals-bloomberg-reports-2026-08-05/
Reuters Breakingviews/論評・10月6日
https://www.reuters.com/commentary/breakingviews/lvmhs-167-bln-unravelling-faces-tricky-restitch-2026-10-06/
強いブランドは、価格だけではなく「このブランドじゃなきゃ嫌だ」という指名で買われる理由を作れているのではないでしょうか。
それはSNSやタレント起用といった単発の施策だけではなく、商品、デザイン、歴史、店舗、接客、広告、SNSなど、すべての顧客接点で一貫した世界観を積み上げてきた結果だと思います。
市場全体が悪いという大きな括りより、なぜ選ばれるブランドとそうでないブランドの差が出るのかを見たい。これからのブランド経営では「どう売るか」以上に、「なぜ自分たちでなければならないのか」を作れるかが重要だと考えます。
写真は記事テーマのイメージで、紹介企業・ブランドの店舗や商品の実物を示すものではありません。

会社が下期に計画する営業利益は26億円。9月の販売回復と「五季」戦略を、秋冬の収益計画につなげて読む。
三陽商会が10月6日に発表した2027年2月期中間決算(2026年3〜8月)は、売上高259億5300万円、前年同期比4.0%減。営業損失は4億9900万円で、前年同期の2億1300万円から拡大した。親会社株主に帰属する中間純損失は5億5500万円だった。
それでも通期予想は売上高600億円、営業利益21億円を維持した。差し引きでは下期に25億9900万円の営業利益が必要になる。これは通期予想と上期実績からの計算だが、会社の決算説明資料も、丸めた数値で下期営業利益26億円、下期売上高340.5億円を明記している。
| 指標 | 上期実績 | 下期計画 | 通期計画 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 259.5億円 | 340.5億円 | 600.0億円 |
| 営業利益 | −5.0億円 | 26.0億円 | 21.0億円 |
| 売上総利益率 | 60.4% | 63.2% | 62.0% |
表は決算説明資料の億円単位・小数1桁の表示。営業利益と、本社ビル建て替え等の影響を除くコア営業利益は異なる指標であり、下期コア営業利益28億円を営業利益26億円と混同しない。
会社は、9月の店頭販売額速報が全社で前年比111%となり、その基調を第3四半期以降も維持すれば中間期の下振れを挽回できると判断している。ブランド別ではマッキントッシュ ロンドン117%、マッキントッシュ フィロソフィー116%。月次概況の販路区分ではリアル店舗113%、EC・通販102%だった。これらは販売動向の速報で、連結売上高や営業利益の伸び率ではない。
月次概況では、前年より早く気温が低下したことに加え、秋の新作やジャケット、アウターが売れたと説明する。7月以降に進めた定価販売の強化とセール抑制も、利益率改善の方針につながる。ただし、上期全体では6月までの不振を埋めきれず、9月1カ月の増収だけで下期利益の達成が保証されるわけではない。
三陽商会は2024年から夏を「初夏・盛夏」と「猛暑」に分け、春・秋・冬と合わせて五季と捉えている。公式の商品発表では、夏物の需要期間を従来の3カ月から5カ月に広げた展開カレンダーを説明する。秋冬物を暦だけで早く投入するのではなく、長い暑さの間に必要とされる商品を用意する考え方だ。
今回の会社資料は、売れ筋への迅速な追加対応、企画サイクルの短縮、仕入れの一部を留保する運用なども示す。下期は売上だけでなく、売上総利益率を上期60.4%から63.2%へ引き上げる計画になっている。定価で売れる商品の構成と在庫を整え、秋冬需要を利益へつなげられるかが重要になる。
「五季」が26億円の利益を生むと会社が因果関係を実証したわけではない。計画維持の直接の説明は9月の回復基調であり、五季は気候対応の継続的な商品戦略。今後は10〜11月の販売、定価販売比率、粗利率、在庫の推移を合わせて確認したい。
三陽商会/中間決算短信・10月6日、TDnet原文
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261006546359.pdf
三陽商会/中間決算説明資料・10月6日、11〜14ページ
https://www.sanyo-shokai.co.jp/assets/pdf/FY2027_Semi_Annual_Financial_Results_Explanatory_Material.pdf
三陽商会/2026年9月の月次概況
https://www.sanyo-shokai.co.jp/ir/library/monthly/
三陽商会/五季の商品展開を説明した公式発表・5月12日
https://www.sanyo-shokai.co.jp/news/2026/05/12-1187.html
三陽商会の決算で注目したいのは赤字そのものより、なぜ通期計画を変えなかったのかという点です。会社が何を根拠に、下期で挽回できると判断したのかを見たいと思います。
秋冬偏重になりやすいアパレル企業にとって、気候変動への対応は単なる商品企画の問題ではなく、経営そのものになっています。どの時期に何を仕入れ、定価で売り、利益を残すのかまで変わるからです。
三陽商会の「五季」戦略によって、本当に下期だけで営業利益約26億円を稼げるのか。9月の好調だけで結論を出さず、秋冬商戦と利益の進捗を今後も追っていきたいと思います。
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DiscoatとBEARDSLEYは増収、ノーリーズは減収減益。同じグループでも、業績を動かす条件は一様ではない。
パルグループホールディングスが10月6日に公表した2027年2月期中間決算(2026年3〜8月)は、連結売上高1219億3100万円、前年同期比4.1%増。営業利益は142億5400万円、1.1%増だった。売上・営業利益とも上期として過去最高だが、期初計画の売上1260億円、営業利益150億円には届いていない。
衣料事業は売上高744億7500万円、5.5%増、営業利益94億2400万円、5.3%増。一方、雑貨事業は売上高473億6600万円、2.3%増に対し、営業利益48億1400万円、6.3%減だった。全体の好調を、そのまま全事業の増益と読むことはできない。
| 対象・集計範囲 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| Discoat(ブランド) | 64.27億円 | 106.6% |
| BEARDSLEY(ブランド) | 40.12億円 | 106.9% |
| 3COINS(ブランド) | 438.93億円 | 資料内の不一致あり※ |
| ノーリーズ(子会社) | 56.04億円 | 91.2% |
DiscoatとBEARDSLEYは、いずれもブランド別の上期売上高で前年を上回った。一方、ノーリーズの数値は同名ブランド単体ではなく子会社の集計。営業利益は5200万円、前年同期比25.0%で、減収減益だった。会社資料は、主力のノーリーズで定番商品の販売が落ち込んだと説明している。
※3COINSの資料は前年418.28億円、当年438.93億円と掲載し、同じ図に前年比102.8%と記載する。掲載額から単純計算すると約104.9%となり、日本語版・英語版の双方で一致しない。10月7日の確認時点でこの差を解消できないため、本記事は売上額を掲載し、成長率を確定値として扱わない。いずれの数値も既存店だけの伸び率ではない。
グループ全体のEC売上高は302億3100万円、前年同期比103.4%。内訳では自社ECのPAL CLOSETが124億5000万円、102.0%、ZOZOTOWNが143億1600万円、104.7%だった。資料に登場する110%というECの伸び率は別ページのナイスクラップ子会社に関する数字で、パル全体のEC成長率ではない。
出店数や売場面積、価格、商品構成、顧客層などが異なるため、前年比だけで企画力の順位を決めることもできない。それでも、同じグループの中に伸びるブランドと苦戦する会社・ブランドがある事実は、「国内アパレルが厳しい」「若者が服を買わない」という大きな主語だけでは捉えきれない差を示している。
パルグループHD/中間決算短信・10月6日
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/10/f8125f25ea22375d0d1e87e1ffcdb308.pdf
パルグループHD/公式決算説明会資料・4〜9ページ
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/10/0e41d29abb8e043ebe0a18351ec1a642.pdf
パルグループHD/英語版説明資料・3COINSの表記を照合
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/10/512d4f80dc85778068434e7d96e993e7.pdf
パルグループHD/IR掲載一覧
https://www.palgroup.holdings/irinfo/
同じグループ、同じ市場環境でも、伸びるブランドと苦戦するブランドが存在する。今回のパルの決算は、その差を見たいと思いました。
「国内アパレルが厳しい」「若者が服を買わない」という話だけでは、DiscoatやBEARDSLEYが伸びる一方で、ノーリーズが苦戦することを説明しきれません。
グループ全体の増収増益で話を終わらせず、ブランドごとの顧客や商品、販売の違いを見ていく必要があります。数字の差が何から生まれるのかは、今後の検証が必要だと考えています。
パルの説明資料はIR一覧で10月6日付掲載。資料表紙は10月8日付で、10月7日に取得できた掲載版を使用しました。説明会を10月6日に開催済みとするものではありません。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業・ブランドの店舗や商品の実物を示すものではありません。

競争力を左右するのは「顧客と商品企画の距離」。パルのブランド間格差を起点に、現場とデータ、AIがつなぐ企画のループを考える。
これからのアパレル企業の競争力は、トレンドを当てる力だけでなく、顧客の変化をどれだけ早く発見し、商品に反映できるかで決まるのではないか。今日の編集会議で浮かび上がった問いを、「顧客と商品企画の距離」という言葉から考える。以下は確認した決算の事実を土台にした独自の考察であり、企業の内部運用を取材して実証した記事ではない。
パルグループの2027年2月期上期は連結売上高が前年同期比4.1%増、営業利益が1.1%増だった。公式説明資料では、ブランド別売上高はDiscoatが前年比106.6%、BEARDSLEYが106.9%。一方、ノーリーズ子会社の売上高は91.2%、営業利益は25.0%で、主力ブランドの定番商品が苦戦したと説明されている。
ブランド単体と子会社という集計の違いはある。それでも、同じグループの中で明暗が生じる以上、市場環境だけで業績差を説明することには限界がある。だからといって、この差が「顧客情報を企画に反映する速度」の差で生まれたとは断定できない。出店、商品構成、値引き、顧客層など別の要因もあり、ここから先は検証すべき仮説だ。
販売員は「丈がもう少し短ければ」「洗えるものが欲しい」といった購入を見送る理由に出会う。ECには検索語や閲覧、カート投入、購入、返品の動きが残る。SNSでは、何が共感され、どこに違和感があるかが言葉や反応として現れる。売れた商品の数量だけでは、まだ商品になっていない需要を見落とすかもしれない。
重要なのは、情報を集めることと、商品企画が判断できる形で届くことの間にある距離だ。月末の集計、会議、部門間の承認を何度も挟むうちに数カ月が過ぎれば、企画が届く頃には顧客の関心が次へ移っている可能性がある。商品を提案する感性に加え、その提案を顧客の反応で修正できる仕組みが必要になる。
この循環を速く回すというのは、すべての商品を短期の反応だけで作ることではない。ブランドの軸や品質は保ちながら、変えてよい仕様を決め、少量の試験投入や追加生産に必要な判断と権限を近づけることだ。分析が速くても、企画の承認や生産が動かなければ、顧客まで戻る時間は短くならない。
AIには、POSの販売推移、ECの検索・閲覧・購入、SNSの反応、接客メモなどを横断して、変化の候補を探す役割が考えられる。例えば、ある用途の検索が増え、同じ困りごとが複数店舗で聞かれるようになった時、売上が大きくなる前に企画担当へ知らせる使い方だ。これは今後の活用可能性であり、今回のパルの業績がAIで生まれたという意味ではない。
SNSの一時的な話題は購入需要と同じではなく、欠品や広告によって数字が動く場合もある。担当者が理由を確かめ、小さく商品を試し、定価での販売、粗利、返品までを見る必要がある。AIが提案を増やすだけではなく、顧客の兆しから企画判断までの日数と、販売後に学び直す時間を短くできるかを測りたい。
「顧客と商品企画の距離」は、物理的に同じ場所にいるかではなく、変化が届き、判断され、商品となって戻るまでの時間でもある。トレンドを予測することに加え、予測と違う反応を見つけた時に動ける会社へ。この速度が、今後のブランド間格差を考える一つの視点になるのではないか。
考察の事実資料:パルグループHD/中間決算短信・10月6日
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/10/f8125f25ea22375d0d1e87e1ffcdb308.pdf
考察の事実資料:パルグループHD/決算説明会資料・4、7、9ページ
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/10/0e41d29abb8e043ebe0a18351ec1a642.pdf
売れるブランドと売れないブランドの差は、商品のセンスだけではなく「顧客と商品企画の距離」にも現れるのではないかと思います。
店舗、EC、SNSで起きている顧客の変化が商品企画へ届くまでに何カ月もかかっていたら、その頃には顧客は次へ行っているかもしれません。
AIによってこの距離は劇的に短くなる可能性があります。ファッション企業の商品企画そのものが変わるタイミングに来ているのではないでしょうか。パルのブランド別の業績差を、その仮説を考える入り口として見ています。
顧客情報の循環とAI活用に関する部分はFASHION SHIFTの仮説・提案であり、パル各ブランドの社内プロセスや業績要因を断定するものではありません。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業・ブランドの店舗や商品の実物を示すものではありません。

季節感は残し、素材と供給を気温に合わせる。販売期間が短くなる時代の在庫戦略を、翌年も売れる定番から考える。
10月7日のロイターは、パリ・ファッションウィークで気温が28度に達したことを伝えた。長く暑い夏は、寒い季節向けの商品が売れ始める時期や在庫、値下げの判断にも課題を突きつけている。これはパリの報道であり、日本の10月全体の観測値ではない。
日本については、ウェザーニュースが9月18日、気象庁の3か月予報をもとに、10〜12月は全国的に気温が高い見通しを伝えている。高温の予報と、その日の実際の気温は分けて読む必要があるが、従来の月別計画だけで秋冬を動かすリスクを考える材料になる。
気温と衣料の売れ方を結びつける考え方は、新しいものではない。気象庁は、2009〜2013年の首都圏の販売データなどを用いたアパレル分野の調査で、ニットやカットソーの販売と気温との関係を整理し、気温予測を売場変更や在庫補充に使う例を示している。過去の検証であり、今年の全ブランドに同じ条件が当てはまるという意味ではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。「暑いから冬物を遅らせる」だけでは、問題の一部しか解けない。販売の終点が変わらなければ、投入が遅れた分だけ定価で売る時間が短くなる。寒くなって一気に供給しても、その後の需要が計画に届かなければ、値下げと在庫持ち越しの負担が残る。
必要なのは、秋冬を一つの素材構成でまとめて投入する計画から、季節の見え方と体感温度を分けて設計する計画への転換ではないか。9〜10月は秋らしい色やデザインを取り入れつつ、軽く通気性のある素材を使う。実際に寒くなる局面には、暖かい素材の商品を供給する。その間の構成と投入量を、地域の気温、売れ方、在庫、生産のリードタイムに合わせて変える。
変更が必要なのは企画日だけではない。素材の確保、追加生産の余地、店舗への配分、ECでの見せ方まで一緒に動かす必要がある。気温予測に合わせて毎回全量を作り直すのではなく、変えられる数量と時期をあらかじめ決めておくことが、実務の柔軟性につながる。
もう一つの論点は商品の寿命だ。そのシーズンにしか売れないデザインばかりでは、売り逃した時に価値が急速に失われる。形、品質、用途に継続的な需要があり、翌年も販売できるベーシックを育てれば、短い販売期間だけに回収を依存しない商品構成を考えられる。
もちろん、持ち越せば保管費や資金負担が生じ、翌年の需要も保証されない。定番という名前で残品を抱えることと、毎年支持される商品を改善しながら育てることは違う。継続販売する商品の範囲、品質管理、翌年の投入量まで決めて初めて、経営上の選択肢になる。
日本では季節の変化を装いで楽しむことにも価値がある、というのが今日の編集会議の視点だ。季節感をなくすのではなく、季節感は残しながら実際の気温に適応する。秋冬商戦の再設計は、その両立から始まる。
Reuters/暑い夏とファッション業界・2026年10月7日
https://www.reuters.com/sustainability/cop/paris-fashion-week-longer-hotter-summers-pose-new-challenge-2026-10-07/
ウェザーニュース/気象庁3か月予報の解説・2026年9月18日
https://weathernews.jp/news/202609/180161/
気象庁/気候情報を活用したアパレル分野の調査
https://www.data.jma.go.jp/risk/taio_apa.html
投入を遅らせれば解決する、とは思いません。遅らせるほど販売期間が短くなり、在庫を消化する難しさも増します。秋らしい色やデザインは残しながら、暑い時は軽い素材、寒くなったら暖かい素材へと、商品設計と供給を変える必要があります。
さらに、そのシーズンしか売れない商品ばかりを作るのではなく、翌年も販売できるベーシック・定番商品を育てたい。季節の変化を楽しむ日本の文化は大切にしながら、実際の気温に適応する商品を作る。それが、これからの秋冬商戦で問われる経営だと考えます。
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カード取引の減速と、トップ顧客への依存は同じ数字ではない。市場平均の先にある顧客構成を読み解く。
ロイターが10月6日付で伝えたシティのカード取引分析では、米国の9月のラグジュアリー支出は前年同月比6%減だった。7月、8月はいずれも4%減。対象となるカード取引から見た動向であり、米国の全消費や世界市場、個別ブランドの決算を表す数字ではない。
ベインが2025年12月に公表したラグジュアリー市場調査では、パーソナル・ラグジュアリーへの年間支出が2万ユーロを超えるトップ顧客の売上構成比は、2019年の30%から2025年には46%強に上昇したとされる。一方、この層の2025年の支出総額はおおむね安定していたという。
ここでいうトップ顧客は年間の購入額で定義されている。資産額で区分する「超富裕層」と同義ではない。また、2025年の世界市場についての分析であり、2026年9月の米国カード取引と期間、地域、対象が異なる。二つをつないで「今は超富裕層だけが買っている」と結論づけることはできない。
ラグジュアリーの主要顧客が高所得層だとしても、その中には購入頻度、支出余力、保有資産、ブランドとの関係の深さに違いがある。一般的な高所得層が購入を見送る局面でも、継続的に大きな金額を使う顧客の行動は違うかもしれない。これは検証すべき仮説であり、今回確認した情報から各層の現在の購入額を断定するものではない。
売上構成比が高まった理由も分解したい。トップ顧客の購入が増えたのか、それ以外の顧客が減ったのか。値上げによって購入単価だけが上がったのか。同じ構成比の変化でも、必要な商品政策と顧客への働きかけは変わる。
ブランドによって、長年の顧客、初めての購入者、旅行客、地元の顧客の割合も異なる可能性がある。ただし、それぞれの内訳を確認できなければ、特定ブランドの強さを「超富裕層が多いから」と説明することはできない。前日の記事で扱ったブランド間格差を、今日は顧客の側から掘り下げる。
経営で見るべきなのは、顧客数、購入頻度、平均購入額、新規と継続の割合、価格帯別の売れ方だ。トップ顧客の売上が維持されても、次の世代の顧客が入らなくなれば将来の基盤は細る。反対に、平均が弱くても、新規顧客の定着や特定の商品領域に成長の芽があるかもしれない。
市場全体の減速は重要な入口だが、その数字だけでは、誰に何を提案し直すべきかまでは分からない。高所得層を一括りにせず、ブランドごとの顧客構成と購買行動を確かめることが、次の判断につながる。
Reuters/シティの米国カード取引分析・2026年10月6日
https://www.reuters.com/business/finance/us-luxury-spending-slows-ahead-midterms-credit-card-data-shows-2026-10-06/
Bain & Company/Finding a New Longevity for Luxury・2025年12月18日
https://www.bain.com/insights/finding-a-new-longevity-for-luxury/
市場全体の前年比だけを見て「ラグジュアリーが不振」とまとめると、見落とすものがあると思います。高所得層の中でも、一般的な高所得層と超富裕層、トップ顧客では、買い方が違う可能性があります。ブランドごとに顧客の構成も違うでしょう。
現時点で、超富裕層だけが買っている、特定のブランドだけが強い、と決めつけたいわけではありません。市場全体の前年比だけを見るのではなく、次に見るべきは「誰が買っているのか」という内訳です。
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残反がパジャマやジャケットに、自動車シート用の廃材が茶の道具を包む袋に。買いたくなる商品から、循環を考える。
伊勢丹新宿店では10月7〜20日、「ピース de ミライ2026」を展開している。三越伊勢丹のサステナビリティ活動「think good」の期間に合わせ、残反、残糸、未利用材などを生かした商品を紹介する。売場やブランドによって会期は異なる。以下は公式ページで確認した商品例だ。
| ブランド・取り組み | 素材と具体的な商品 |
|---|---|
| ENFOLD | 過去シーズンなどの残反を活用したパジャマ、ポーチ。 |
| DEPAREILLE(デパリエ) | 過去コレクションの残反を生かしたジャケットなどのアウター。 |
| OOO(オーオ)の協業商品 | 残反・残糸を生かす取り組みから、ビスチェや靴などを展開。 |
| OOO×コヨミ×ゾクゾク | 既製靴下にも使う再生ポリエステルを袖に用いたワンピース。 |
| OOO×マーマー×モンメ | 通常は製品になりにくい形のアコヤ真珠と和紙を使ったイヤリング。 |
すべてが同じ再利用工程の商品というわけではない。例えば、靴下そのものをワンピースに作り替えた、という説明ではない。材料、加工、出来上がった商品の関係を具体的に伝えることが、価値の理解につながる。
嘉門工藝の公式案内では、TOYOTA UPCYCLEと小塚毛織/Canale Japanの取り組みから生まれた生地を、茶道具を包む商品へとつなげている。自動車シート用ファブリックの未利用材を活用した生地による数寄屋袋、茶礼袋、巾着型の茶器袋を展開。会期は10月7〜13日、伊勢丹新宿店本館5階のキッチンダイニング/茶道具売場だ。
服の素材が服へ戻るだけでなく、別の用途と文化に出会う。アップサイクルを「廃材を使った」という説明だけで終わらせず、暮らしの中で使いたくなる形にするという点で、事業として考える材料になる。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。環境への配慮を理解しても、それだけで使いにくい形や好みに合わないデザインを買い続けるとは限らない。パジャマなら着心地、ポーチなら大きさと使い勝手、ジャケットならシルエット。購入した後の生活が想像できることが、商品としての魅力の土台になる。
限られた残反や個性のある素材は、均一な量産には不向きな場合もある。一方、素材の違いをデザインの特徴に変えたり、数量の少なさを特別感として伝えたりする余地がある。調達の都合を顧客に引き受けてもらうのではなく、制約を欲しくなる理由へ変えられるかが問われる。
未利用材の活用は資源を生かす取り組みだが、それだけで商品の環境負荷が一律に小さいと算定できるわけではない。加工、輸送、使用期間なども関係する。本記事では削減量を確認できていないため、具体的な環境効果の数値は示していない。
理想は、環境配慮を隠すことでも、それだけを売ることでもない。商品に惹かれて手に取り、使って満足し、その背景を知ってさらに好きになる。その順番で買われる商品を増やすことが、取り組みの継続性につながるのではないか。
三越伊勢丹/think good秋の取り組み・2026年10月5日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003117.000008372.html
伊勢丹新宿店/ピース de ミライ2026・商品紹介と会期
https://www.mistore.jp/shopping/feature/shops_f3/st_piecedemirai_sp/st_piecedemirai_sp_260930.html
嘉門工藝/TOYOTA UPCYCLEの生地を用いた茶道具袋
https://www.mistore.jp/store/shinjuku/shops/living/kitchen_dining/shopnews_list/shopnews026859.html
「サステナブルだから買う」より、「かわいい、欲しいと思って買った商品が、実はサステナブルだった」という状態が理想だと思います。まず、商品として魅力的であることです。
環境のためだからと顧客に我慢してもらうのではなく、デザイン、品質、使い勝手で選ばれ、その結果として環境負荷を抑えることにもつながる。その順番が重要です。アップサイクルが商品力として成立するかを、実際の売場と商品から見ていきたいと思います。
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古着市場の拡大は、販売チャネルの話だけではない。素材や作り、過去のデザインが、次の持ち主に選ばれる価値を考える。
ThredUpが4月2日に公表した2026年版リセールレポートでは、世界の中古衣料市場は2030年に3,930億ドルへ拡大するとの予測が示された。GlobalDataの市場分析などに基づく将来推計であり、現在の市場規模ではない。米国の2025年の中古衣料市場は、衣料市場全体のおよそ4倍の速度で成長したとされる。市場の大きさが4倍という意味ではない。
この調査は米国の消費者・小売業者への調査と市場モデルなどを土台にしている。世界市場の予測がそのまま日本の市場規模や、個々のブランドの成長率になるわけではない。
The RealRealが8月に公表した自社のリセールレポートでは、特定の年代を指定する保存検索が前年より135%増えたという。古い商品が時代やデザインを指定して探される動きを示すが、同社内の検索指標であり、購入額や古着市場全体の伸びとは区別する必要がある。
9月9日のInStyleによる衣料の品質をめぐる報道には、Macy Eleniが古着で見つけた過去のForever 21のシルク100%のブラウスを紹介し、以前の服の素材や作りに魅力を感じる例が登場する。品質を理由に古着を探す個人の事例は確認できる。
ただし、この事例だけで「新品全体の品質が低下した」「多くの消費者がシルクやウールを求めて古着へ移っている」とまでは言えない。特に、ウールを求める消費者の広がりを定量的に裏付ける最新データは今回確認できなかった。個人の声と、市場全体の傾向を分けて考える。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。新品で売った時点で関係が終わるのではなく、何年か後に別の人が探して買う。そこでは、ブランド名に加え、素材、縫製、デザイン、状態、修理のしやすさなどが、再び商品の価値として評価される可能性がある。
毎年、新しい商品を大量に作ることだけが成長ではない。長く着られる商品を作り、手入れや修理を支え、過去のモデルについても情報を残すことが、顧客との関係を広げる選択肢になる。次の持ち主が初めてブランドに触れる入口にもなり得る。
もっとも、良い素材なら必ず高く再販できる、という単純な話でもない。需要、状態、サイズ、流通量、時々の人気によって価格は変わる。中古価格だけをブランド価値の指標にせず、長く使われるか、使った人が満足するかという本来の商品力も見たい。
本日掲載の秋冬商戦の記事では、翌年も販売できる定番商品を育てる重要性を取り上げた。リセールは、それをさらに顧客側の時間へ広げる視点になる。会社にとって翌年も売れるだけでなく、顧客が何年経っても着たい、別の人も欲しいと思える服にすることだ。
短期の新しさと、長く残る価値をどう組み合わせるか。企画の段階から、着用後の劣化、補修、情報の引き継ぎまで考えることが、売り切りの先にあるブランド経営につながるのではないか。
ThredUp/2026 Resale Report・2030年予測と2025年の動向
https://thredup.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/thredups-14th-annual-resale-report-reveals-new-era-structural
The RealReal/2026 Resale Report・自社内検索などの分析
https://investor.therealreal.com/news/news-details/2026/THE-REALREALS-2026-RESALE-REPORT-REVEALS-RESALE-IS-BECOMING-FIRST-CHOICE-FOR-SHOPPERS/default.aspx
InStyle/衣料品質をめぐる取材・2026年9月9日
https://www.instyle.com/clothing-quality-investigation-12069139
毎年新しい商品を大量に作ることだけが、成長ではないと思います。何年経っても着られる服、次の持ち主にも欲しいと思われる服を作ること自体が、ブランドの価値になるはずです。
秋冬商戦で話した「定番商品を育てる」という議論ともつながります。長く使える素材や作りを大切にし、年月が経っても価値が残る商品を積み上げる。リセール市場の拡大を、その問いから見ていきたいです。
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経験と感性をデータで補強する商品企画へ。現在の活用と今後の計画を分け、AIが支える四つの判断を考える。
アダストリアが9月30日に発表した「ELMIRA(エルミラ)」は、AIを活用する新ブランドだ。公式発表では、10月8日正午からand STで順次販売を開始するとされている。本稿は発表に基づく販売予定として記載している。
現時点の説明では、AIビジュアルなどを用いた表現とクリエイティブの効率化が紹介されている。一方、AIによるマーケットデータ分析や商品企画への活用は、今後本格的に着手する計画だ。既にAIが全商品の企画や数量を決定している、という発表ではない。
Liaroは2023年7月、アダストリアのGLOBAL WORKで、需要予測に基づくAI配分の取り組みを公表している。試験導入で欠品や残在庫、店間移動の負担軽減につながったという提供企業側の説明であり、今回確認した情報から全社の利益改善率を示すことはできない。2023年の事例を、2026年に新しく導入されたものとしては扱わない。
海外では、Mangoとo9が2025年3月、商品・財務計画、品揃え、需要計画などをつなぐAIを用いた計画基盤への取り組みを発表した。計画領域を横断する方向性は確認できるが、発表だけで導入後の収益効果が実証されたとは言えない。
天候については、日本気象協会のアパレル向けサービスが、販売・出荷・価格・在庫などと気象データを組み合わせ、需要の時期や地域差を判断する使い方を示している。これは気象データ活用の具体例であり、すべての分析をAIが行うと確認したものではない。
ここからは編集部の活用案だ。画像を作るAIと、需要や在庫を分析するAIは役割が異なる。企画を変える可能性があるのは、販売履歴だけでなく、顧客の反応、トレンド、気温、欠品や残在庫を、次の判断に使える形へつなぐことだ。
| 判断 | 分析する情報の例 | 改善を狙う仕事 |
|---|---|---|
| 何を作るか | 売れ筋の特徴、顧客の声、検索やトレンド | 求められる用途・素材・形の候補を作る |
| どれくらい作るか | 需要予測、在庫、欠品、追加生産の条件 | 初回数量と追加量の無駄を減らす |
| いつ投入するか | 気温・天候、需要の立ち上がり、生産日程 | 季節と実際の売れ始めのずれを抑える |
| どこへ投入するか | 店舗・EC別の売れ方、地域、在庫 | 店舗とチャネルへの配分を見直す |
この表は、一つの企業が既にすべて実現したという一覧ではない。予測が外れた時に少量で修正できる生産と配分の仕組みまで含めて、検証すべき使い方を整理している。データに欠品が含まれていれば、売れなかったのか、売るものがなかったのかも区別したい。
AIの候補が過去の売れ筋ばかりなら、どのブランドも似た商品へ寄る可能性がある。新しい表現や、まだ数字になっていない顧客の気持ちをどう扱うかは、人の判断が残る。ブランドが守る品質、形、世界観を明確にした上で、データを仮説の土台として使う必要がある。
効果を見るなら、企画案の数や処理時間だけでなく、定価での消化、粗利、欠品、残在庫、返品まで追いたい。AIの目的を「すべてを決めてもらう」に置くのではなく、担当者が理由を確かめ、より良い判断をするための無駄打ち削減に置くことが、商品企画への現実的な入口になる。
アンドエスティHD/アダストリアのELMIRA発表・2026年9月30日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003311.000001304.html
Liaro/GLOBAL WORKのAI配分・2023年7月27日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000022723.html
o9/Mangoとの計画基盤への取り組み・2025年3月25日
https://o9solutions.com/news/o9-and-mango-partner-to-modernize-the-fashion-brands-end-to-end-planning-capabilities
日本気象協会/アパレル向け需要予測サービス
https://weather-jwa.jp/service/apparel
これまで担当者の経験や感覚に依存していた商品企画を、AIで補強したいと思います。売れ筋、顧客、気温、在庫を一緒に見ることで、何を、どれくらい、いつ、どこへ投入するかという無駄打ちを減らせる可能性があります。
AIに全部を決めてもらうのではありません。AIがデータから土台を作り、最後に人間がブランドらしさや感性を加える。その役割分担ができれば、経験を捨てるのではなく、経験をもっと生かせる商品企画になるのではないでしょうか。
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一度の投稿依頼から、継続的な関係へ。商品提供、制作支援、報酬、顧客の声をつなぐ仕組みが変わり始めている。
Gap Inc.は2025年10月8日、Old Navy、Gap、Banana Republic、Athletaを横断するクリエイター・SNS発信プログラムを発表した。新作情報への早期アクセス、商品提供、限定プロモーション、コンテンツの協業などを、一つのハブでつなぐ仕組みだ。条件を満たすクリエイターには、アフィリエイト報酬や商品提供キャンペーンへの参加機会も設ける。
最初の発表は昨年であり、本日新設された制度ではない。今年7月には、店舗、オフィス、配送センターなどで働く社員にも参加の機会を広げたと発表した。社員が商品やスタイルを発信し、コンテンツ制作やアフィリエイトに参加する仕組みで、発信の基準や透明性を支えるガイドラインも示している。
American Eagleの公式コミュニティには、スタイルの共有、チャットでの交流、限定の機会、顧客の声を今後の商品へ届ける仕組みが案内されている。参加案内は米国の18歳以上、少なくとも一つのSNSで1,000人以上のフォロワーを持つ人が対象だ。日本向けに同じ制度を提供していると確認したものではない。
Marketing Diveが2月に報じた制度では、週次・月次のコンテンツ課題などへの参加でポイントを獲得し、商品やギフトカードに交換できるほか、アフィリエイト報酬、限定割引、ブランド自身の発信への登場機会も設ける。投稿を一度買うだけでなく、継続的な制作と関係づくりを促す設計として読める。
フォロワーの多い人に商品を渡し、一度投稿してもらう。その方法も残るだろう。しかし、今回の事例が示すのは、商品の情報、制作機会、発信の反応、報酬を継続的につなぐ基盤だ。ブランドを何度も体験し、自分の言葉で語れる人を増やす方向にある。
ハブがあるだけで販売力が育つとは限らない。商品知識や着こなしを学び、どの説明が顧客の疑問を解くかを共有し、結果を次の発信へ戻す運用が必要だ。外部の発信者を管理するというより、ブランドが発信者の学習を支える仕事が増えるのではないか。
日本のアパレルへの示唆は、外部インフルエンサーだけに対象を限らないことだ。店舗販売員には日々の接客知識があり、社員には商品を作った背景がある。ブランドのファンや顧客には暮らしの中での着用経験があり、外部クリエイターには独自の表現がある。これらを「ブランド公式クリエイターネットワーク」としてつなぐ可能性がある。これは編集部の提案であり、今回の海外制度に全員が参加できるという説明ではない。
育成するなら、フォロワー数や再生数だけで序列を決めない。商品のどこが伝わり、何件の購入につながり、返品後にどれほどの利益と顧客満足が残るかを見る。報酬と商品提供の関係も分かるようにし、本人の体験や言葉を生かすことが、信頼のある売場につながる。
単発の露出を増やすことから、実際に商品を売れる発信者を育てることへ。販売員を店舗の中だけで考えていた企業ほど、この変化を自社の人材戦略として検討する意味がある。
Gap Inc./横断クリエイタープログラム・2025年10月8日
https://investors.gapinc.com/press-releases/news-details/2025/Gap-Inc--Debuts-Cross-Brand-Content-Creator-and-Social-Media-Advocacy-Program/default.aspx
Gap Inc./社員への制度拡張・2026年7月22日
https://www.gapinc.com/nl-nl/articles/2026/07/gap-inc-expands-cross-brand-creator-and-social-adv
American Eagle/公式クリエイターコミュニティ
https://community.ae.com/
Marketing Dive/AEの報酬制度・2026年2月4日
https://www.marketingdive.com/news/american-eagle-offers-creators-rewards-to-keep-content-flowing/811374/
ブランドが100人、1,000人の「小さなオンライン販売員」を持つ。そんなイメージで考えると、単発投稿とは違う可能性が見えてきます。これは特定企業の人数を示したものではなく、これからの売場の考え方です。
日本のアパレルなら、店舗販売員、社員、ファンや顧客、外部クリエイターまで含めて、公式のネットワークを作れるのではないでしょうか。フォロワー数が多い人を探すだけではなく、実際に商品を売れる発信者を育てることが重要だと思います。
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日本の15ブランドを、聖水の店頭と韓国向けECへ。逆方向のブランド流通は、体験から購入へつながるか。
ZOZOは10月6日、韓国のMUSINSAと組み、ポップアップ「ZOZOTOWN in MUSINSA」を開催すると発表した。リアル店舗は10月16〜31日、MUSINSA STORE 聖水で、営業時間は11〜22時、入場無料。所在地はソウル特別市城東区聖水2路74だ。本稿公開時点では開催前の計画である。
MUSINSAの韓国向けECでは10月16日〜11月16日に展開予定で、期間が延長される可能性もある。店頭の会期が終わった後も、オンラインで商品に出会える期間を設ける構成になっている。
ADRER、BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS、CLEL、FEKETE、GRANCY、GYDA、merry jenny、MONO-MART、OLUN、shesaidthat、Smyeon、SNIDEL、SNIDEL HOME、URBAN RESEARCH、WYM LIDNM。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。韓国ブランドが日本で存在感を高める中、日本のブランドを韓国の顧客へ届ける方向にも注目したい。今回の開催だけで流れが本格化したとは断定できないが、複数ブランドをまとめて紹介することで、単独では作りにくい発見の機会を設ける試みになる。
海外展開をECの配送先を増やす話だけで考えると、知らないブランドを購入するまでの距離が残る。素材に触れ、サイズを確かめ、着用した姿を見られるリアルな場所は、その距離を短くする可能性がある。聖水の店頭体験と、会期後まで続くECを組み合わせる設計に意味があるのではないか。
ただし、店舗を見た人が後日ECで買ったという成果は、まだ確認できない。ブランド別の閲覧、試着、購入、会期後の検索や再購入を分けて追い、どこで関心が購入へ変わるかを測る必要がある。リアルとECが同時に存在することと、両者が事業としてつながることは、分けて検証したい。
BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWSやURBAN RESEARCH、SNIDELやGYDA、ADRERやWYM LIDNM、さらにSNIDEL HOMEまでが並ぶ。参加ブランドの幅からは、一つの「日本らしさ」に絞るより、複数の装いと使い方への入口を用意する狙いが読み取れる。これは編集部の考察であり、特定ブランドが韓国の若者に既に支持されたという結果ではない。
若い顧客が日常のコーディネートに取り入れやすいか、SNSで見た装いを自分の体型や暮らしに合わせられるか。ブランド名だけでなく、商品の着用提案、価格、サイズ、購入後の対応までを含めて確かめたい。韓国向けECでの見せ方と、店頭で受けた質問をつなぐことも、次の展開の材料になる。
日本ブランドを海外へ届けるには、一度のイベントを販売実績のゴールにせず、現地の反応を学ぶ入口にすることが重要ではないか。今回の聖水は、その仮説を試す場として注目したい。
ZOZO/ZOZOTOWN in MUSINSA開催発表・2026年10月6日
https://corp.zozo.com/news/20261006-007668/
韓国ブランドが日本で存在感を高めている一方、日本のブランドも韓国やアジアへ出ていける。その流れがもっと大きくなってほしいと思います。
ECだけで売るのではなく、聖水のような場所で商品やブランドを体験してもらい、その後もECで買える。日本ブランドを知ってもらう入口と、買い続けられる売場をつなぐモデルとして期待しています。どのブランドがどんな顧客に届くのか、開催後の反応も見ていきたいです。
確認した参照情報は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業のイベント・商品の実物や実際のサービス画面を示すものではありません。

日本の公式データと直近の市場推計から、美容の強さを分解する。出品を増やす前に考えたい、商品・コンテンツ・接客のつなぎ方。
TikTok Shopは2025年6月30日に日本で提供を開始した。流通総額(GMV)は、プラットフォームで取引された商品の総額を示す指標であり、運営会社の売上や利益とは異なる。以下ではTikTok公式の公表指標と、外部分析会社の推計を区別する。
| 公表主体・対象時点 | 確認できた数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| TikTok公式/2026年7月28日発表 | 開始から2026年6月30日までのGMVの70%以上がコンテンツ起点 | GMVの金額ではなく、購入の起点の比率 |
| 同公式/日本のコンテンツ経由GMV | そのうち約60%がLIVE配信経由 | 全GMVの60%ではない |
| 同公式/2026年6月時点 | 利用者数は2025年7月比30倍以上 | 増加倍率。利用者の実人数はこの発表では示されない |
| TikTok公式/2026年2月3日の半年発表 | セラーは5万店規模、クリエイターは約20万人 | 半年時点のデータ。現在の総数へ置き換えない |
| Nint/2025年7月〜2026年6月 | 年間の推計流通額は約536億円 | 受注ベースの第三者推計。TikTok公式の確定値ではない |
| Kalodata/2026年9月21〜27日 | 週間の推計GMVは22.62億円 | 独自収集・分析に基づく第三者推計 |
本稿で確認したTikTok公式発表には、日本のGMVの絶対額は記載されていない。また、9月29日の公式発表が示す月間利用者4,950万人超は、2026年5月末のTikTokとTikTok Liteの合計から重複を除いた数であり、TikTok Shopの購入者数ではない。利用者、セラー、ショップの数も、定義と時点をそろえず比較しない。
Nintの年次推計はランキング上位の集計などによる分析で、市場全体の実数ではないと明記されている。Kalodataとも手法や期間が違うため、年間値と週間値をつないで正確な成長率や年間予測を計算することは避けた。いずれも日本市場を見る参考値として使う。
10月1日に公表されたKalodataの9月21〜27日分の独自集計では、カテゴリー別の上位は次の通りだ。公開前に確認できた直近の同社週次公表値を採用しており、10月8日当日の販売構成を示すものではない。すべて推計で、TikTok公式のカテゴリー構成比ではない。
| カテゴリー | 推計GMV | 推計構成比 |
|---|---|---|
| 美容・パーソナルケア | 4.74億円 | 20.9% |
| 食品・飲料 | 3.08億円 | 13.6% |
| レディースウェア・インナー | 2.74億円 | 12.1% |
| おもちゃ・趣味 | 1.43億円 | 6.3% |
| スマートフォン・エレクトロニクス | 1.36億円 | 6.0% |
同じ週次報告では、電動美容カッサが伸び、レディースでは秋の重ね着に使うシアートップスが売れ筋として紹介された。美容が最大シェアであることと、すべての美容商品が売れることは同じではない。
TikTok公式の2026年上半期の整理では、ビューティのGMV上位領域はスキンケア、メイクアップ、ヘアケア・スタイリングの順。ファッションではレディーストップス、レディースボトムス、バッグの順だった。これは各ジャンル内部の順位であり、上のKalodataの週次構成比とは対象期間も分類も異なる。
Nintの年次推計でも、同社の統合ジャンルでは化粧品が16.3%で首位だった。「化粧品」と「美容・パーソナルケア」は同じ分類ではないため、16.3%と20.9%の差をそのまま美容の成長幅と読むことはできない。
なぜ美容が強いのか。以下はデータと事例をもとにしたFASHION SHIFTの仮説であり、カテゴリーの売上差の原因を実験で特定したものではない。美容には、塗り方、発色、テクスチャー、仕上がりなど、クリエイター自身の実演を商品理解につなげやすい領域がある。
メイクなら使用前後の見た目や色の違い、ヘアケアなら使い方やスタイリングの工程を見せられる。説明を読むだけでは分かりにくい点が、短い動画の題材になる。もっとも、画面で見える変化が長期的な効果の証明になるわけではない。肌への効果や使用感には個人差があり、すべてを映像で伝えられるわけでもない。
公式の事例として、TikTok for Businessは9月10日、TEABLESSの取り組みを紹介した。ブランド側は「リリームスクホワイトティー」のボディローションとボディソープを人気商品に挙げている。動画では質感を見せ、画面では届かない香りを言葉で補い、クリエイターの体験とLIVEの質問対応を組み合わせる。
同事例では7月の公式セール中の売上が通常時のおよそ2倍になったとされる。ただし、広告運用も変更した施策であり、実演だけの効果や商品の市場全体での順位を示した結果ではない。それでも、動画で伝えられるものと伝わらないものを見極め、言葉と接客で補う設計は参考になる。
LIVEでは「自分ならどう使うか」という疑問にその場で答えられる。そして、偶然見つけた商品を、理解し、欲しいと思った時にアプリ内で購入できる。発見から購入までの距離が短いことは、衝動的な購入を後押しする可能性もある。一方、コンテンツ起点というだけで、全員が衝動買いしたとは言えない。LIVEには、納得して買うための接客という役割もある。
ファッションには、サイズや体型、合わせ方への不安がある。美容の実演に相当するものは、ただ服を正面から見せる映像ではなく、自分の暮らしでどう着られるかが分かる提案ではないか。編集部は次のような設計を提案する。
| 顧客が知りたいこと | 動画・LIVEで伝える方法 |
|---|---|
| 自分の体型に合うか | 身長・体型・着用サイズを明示し、複数スタッフで比較する |
| どう着回せるか | 仕事、休日など場面を変えたコーディネートを見せる |
| サイズや動きやすさはどうか | 丈、ゆとり、座る・歩く動作を見せ、LIVEで質問に答える |
| 買った後も使えるか | 販売員やクリエイター自身の着用から、手持ちの服との合わせ方を伝える |
| 今すぐどれを買えばよいか | 紹介中の商品・色・サイズへ迷わず進める購入導線を用意する |
TikTok公式は、ギャップジャパンが店舗販売員のスタイリング知識をショート動画へ転換した事例も紹介している。服の特徴を知り、顧客から実際に質問されてきた人の発信を、オンラインの売場に生かすという点が重要だ。
商品担当、EC担当、動画制作、販売員を別々の仕事として置くと、説明する商品と買える在庫がずれたり、問い合わせの答えが届かなかったりする。まず実演しやすい商品を選び、誰が何を説明し、どの在庫へつなぐかを一緒に決めたい。再生数だけでなく、購入、返品、利益、再購入まで見て、売れた理由と売りすぎた理由を学ぶ必要がある。
TikTokは10月5日、米ニューヨークのAdvertising Weekで、会話型のShopping Assistantと、アプリを離れずブランドから購入するBuy Directを発表した。公式説明では、AIが文脈や利用者の希望を踏まえ、商品情報、サイズ、配送、在庫、購入について支援する方向が示されている。
日本向けの公式発表は9月29日付で、Shopping Assistantなどを含むAgentic Commerceの日本でのローンチを「2027年頃」の予定としている。10月8日時点で日本に提供済みとは書けない。また、これらは既存のTikTok Shopと同一の機能として一括りにせず、新しい購買支援・ブランドからの購入の仕組みとして区別する。
今後は、人が商品を一つずつ探すだけでなく、AIが発見、比較、推薦を支え、購入までの手順を短くする可能性がある。ただし、AIが消費者の確認なしに自動で買うサービスが日本で始まった、という話ではない。ファッション企業側には、正確なサイズ、素材、在庫、配送・返品条件を整え、動画の説明と商品データを一致させる準備が求められるだろう。
TikTok Shopを新しいECモールとして捉えると、本質を外すと思います。これは、コンテンツ・接客・購買が一体化した新しい売り場です。これまでのECでは商品ページを作り、広告や検索で人を連れてきて、購入してもらっていました。TikTok Shopでは、コンテンツそのものが集客であり、接客であり、そのまま売り場になります。
美容が売れている理由を、単にカテゴリーの人気だけで片づけたくありません。使い方や違いを見せ、本人が実演し、LIVEで質問に答え、欲しいと思った時に買える。その一連の体験が作られていることに注目したいです。
ファッション企業も「何を売るか」だけではなく、「動画でどう売れる状態を作るか」から、商品・コンテンツ・販売員の役割を設計し直す必要があります。さらにAIが商品を発見・比較・推薦する方向へ進めば、売場の作り方はまた変わるでしょう。現在できることと将来の可能性を分けながら、今から準備したいと思います。
TikTok公式/提供1周年の利用動向・2026年7月28日
https://newsroom.tiktok.com/tiktok-shop-japan-1st-year-anniversary?lang=ja-JP
TikTok公式/半年時点のセラーなど・2026年2月3日
https://newsroom.tiktok.com/tiktok-shop?lang=ja-JP
Nint/1年分の市場推計・2026年7月14日
https://www.nint.jp/topics/topics-18751/
Kalodata調査/9月21〜27日週の推計・2026年10月1日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000167462.html
TikTok for Business/TEABLESSの事例・2026年9月10日
https://ads.tiktok.com/business/ja/blog/tiktokshop-teabless-interview
TikTok公式/日本のAgentic Commerce導入予定・2026年9月29日
https://newsroom.tiktok.com/tiktok-ad-awards-2026-japan5?lang=ja-JP
TikTok公式/Shopping AssistantとBuy Direct・2026年10月5日
https://newsroom.tiktok.com/tiktok-unveils-ai-powered-updates-for-advertisers-driving-discovery-action-and-measurable-business-outcomes?lang=en
確認した参照情報は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業のイベント・商品の実物や実際のサービス画面を示すものではありません。

レディース、メンズ、オーダー、化粧品に成長の柱。欧州の赤字と米国の黒字転換を分け、次に資源を投じる先を考える。
オンワードホールディングスが10月8日に発表した2027年2月期中間決算の対象期間は、2026年3月1日〜8月31日。連結の主な数値は以下の通りだ。純利益は親会社株主に帰属する中間純利益を示す。
| 指標 | 中間実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,175億2,500万円 | 4.3%増 |
| 営業利益 | 61億3,900万円 | 7.0%増 |
| 中間純利益 | 56億2,500万円 | 16.6%増 |
決算短信の地域別セグメントでは、国内の外部顧客向け売上高が1,088億1,000万円、セグメント利益が70億6,600万円。前年の1,046億5,000万円、62億円を上回った。海外は売上高87億1,500万円に対し、セグメント損失4億9,700万円。前年の損失1億3,000万円から赤字が拡大した。
会社の決算説明資料で確認できるブランド売上高の前年同期比は次の通りだ。利益の伸びや既存店だけの伸びではなく、ブランドの上期売上高の比較である。
| ブランド | 売上高の前年同期比 |
|---|---|
| UNFILO(アンフィーロ) | 13.5%増 |
| KASHIYAMA(カシヤマ) | 42.5%増 |
| J.PRESS | 15.2%増 |
| CHACOTT COSMETICS | 23.9%増 |
| 23区 | 0.3%減 |
KASHIYAMAではオーダーシャツや新店などに加え、今春に百貨店のオーダー事業を引き継いだKASHIYAMA PREMIUMも展開する。成長をすべて既存事業の自然増とみなすのは適切ではない。一方、23区はほぼ前年並みで、グループの増収だけから全主力ブランドが伸びたとは言えない。
説明資料の地域別の事業会社集計では、欧州は売上高60億円、営業損失5億7,100万円。前年の損失2億1,100万円から拡大した。一方、米国は売上高13億8,500万円、90.2%増で、営業利益400万円と前年の営業損失4,100万円から黒字へ転じた。
この地域別集計は単純合算を含む会社別の区分であり、前述の決算短信の海外セグメントとは集計範囲が違う。数字を足し合わせて海外セグメントの損失と一致させるものではない。会社は欧州について通期の営業黒字を予想しており、今回の発表で撤退を決めたわけではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。国内で評価したいのは、特定のレディースブランドだけに成長を依存していないことだ。メンズ、オーダーメイド、化粧品などに柱が育てば、顧客の用途や購入機会の違いを取り込む余地が広がる。既存の事業にとらわれず試してきたことが、複数の成長領域につながっているのではないか。
ただし、売上が増えても利益が同じように増えるとは限らない。新しい領域には開発、出店、販促の費用がかかる。どの事業が継続的に利益と資金を生むかを確かめ、成長ブランドへ配分する資源と、既存主力を維持・改善する資源を両方考えたい。
海外も「伸ばすか、全部やめるか」の二択ではない。国別・ブランド別に、投資額、利益、在庫、資金回収の見通しを見たい。米国の回復を評価しつつ、欧州の赤字が長く続くなら、事業縮小や撤退も検討するというのが今日の編集会議の視点だ。国内に成長余地があるなら、その強みをさらに伸ばすことも経営上の選択肢になる。
会社は通期計画を据え置き、成長ブランドや店舗とECをつなぐ施策を進める方針を示している。上期の売上総利益率は54.5%へ1.0ポイント低下したが、販管費率は49.2%へ1.2ポイント改善した。販管費の金額は増えており、一律の経費削減ではない。
成長領域を広げながら、店舗運営や顧客接点を効率よく使い、利益を残せるか。国内の好調さを次の投資へつなげる力と、不採算を見極める力をセットで評価することが、この決算を読むポイントになる。
オンワードHD/中間決算短信・2026年10月8日(冒頭、地域別セグメント)
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/1846c9cb78505a53261e00e24de64c87c23b3bcb.pdf
オンワードHD/上期決算説明資料・2026年10月8日(資料8〜9、13、15、24ページなど)
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/07834404b6d18e9e822cf86a5b966ee4aeb00b4a.pdf
オンワードの国内事業が好調なのは、非常に良いことです。特にレディースだけでなく、メンズ、オーダーメイド、化粧品など、複数のカテゴリーで成長ブランドが育っていることを評価したいと思います。従来の事業にとらわれず、新しい領域に挑戦する企業風土があると感じます。
一方、海外事業は国別・ブランド別に収益性を見たい。成長している事業と不採算事業を分ける必要があります。赤字が続くのであれば、撤退や縮小も含めて検討すべきではないでしょうか。無理に海外展開を続ける必要はありません。国内で成長できる余地があるなら、国内の強みをさらに伸ばすという選択肢もあると思います。
出典と数値・制度の対象時期は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業の実際の商品・店舗・販売員を示すものではありません。

増収増益と、アンタイトル・タケオキクチの減収を分けて読む。買収後の経営力と、主力ブランドの再生を両面から評価する。
ワールドが10月5日に発表した2027年2月期中間決算は、2026年3月1日〜8月31日を対象とする。売上収益は1,424億8,900万円、営業利益は84億900万円となった。主要数値は以下の通りだ。
| 指標 | 中間実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,424億8,900万円 | 4.1%増 |
| 営業利益 | 84億900万円 | 1.2%増 |
| 事業利益 | 83億5,800万円 | 0.3%増 |
| 親会社の所有者に帰属する中間利益 | 58億7,700万円 | 4.2%増 |
同社はIFRS第18号を早期適用し、前年の比較数値も組み替えている。「事業利益」は従来のコア営業利益に相当する会社の管理指標で、IFRSの営業利益とは異なる。以下で買収企業の寄与を扱う際も、この指標の違いを明記する。
公式データブックの国内ブランド・会社別売上高は、店舗、EC、卸、催事などを含む日本基準の集計だ。表示単位の都合で金額は概数となる。既存店だけの増減やブランド別利益を示す表ではない。
| ブランド・会社 | 上期売上高(概数) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| UNTITLED(アンタイトル) | 67億円 | 3.2%減 |
| TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ) | 40億円 | 8.7%減 |
| DRESSTERIOR | 15億円 | 1.9%増 |
| SHOO・LA・RUE | 90億円 | 9.5%減 |
| ナルミヤ・インターナショナル(会社) | 199億円 | 4.9%増 |
| ライトオン(会社) | 97億円 | 新規連結 |
| ワールドスタイルレーベルズ(会社) | 22億円 | 新規連結 |
アンタイトルやタケオキクチは減収だった。一方、成長するブランドや会社もある。全体が増収だから既存ブランドの競争力も高まった、という読み方では、課題を見落とす。
決算説明資料の連結事業利益の前年比増減分析では、ライトオンの寄与が2億7,100万円、ワールドスタイルレーベルズが2億8,400万円と示される。これはグループの事業利益の増減への寄与であり、それぞれの単体のIFRS営業利益として読み替えることはできない。
また、会社はライトオンについて直近12か月の黒字化が近づいていると説明する。中間期の寄与があったからといって、通年の黒字化が既に完了したと断定しない。買収先の売上を連結売上の増加額から単純に差し引き、正確な既存事業の減収額を出すことも、集計基準の違いがあるため避けたい。
会社は、買収先での構造改革や商品・品揃えの改善、グループの調達・物流の統合を進めるとしている。一方、既存アパレルでは商品企画・仕入れ・販売の改革効果が一部にとどまり、過度な仕入れ抑制による販売機会損失も発生したと説明する。計画未達を単に市場の弱さだけで説明することはできない。
10月5日公表の9月月次では、国内小売売上は前年同月比12.8%増、既存の実店舗は5.2%増、ECは0.5%減だった。会社はタケオキクチなどの伸長を挙げている。これは月次の小売集計で、中間期のブランド売上表とは範囲が異なり、速報値を含む。1か月の改善だけで再生が完了したとは言えない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。一つは、自社の基幹ブランドが顧客から選ばれ続ける力。もう一つは、買収した事業を運営し、グループの基盤を使って改善する力だ。M&Aで規模が広がることと、既存ブランドが強くなることは違うが、買収後の運営が容易というわけでもない。
買収先では、在庫、店舗、人材、システム、商品計画を一度に見直す必要が生じる。グループの調達や物流を共通化しながら、それぞれのブランドの顧客と商品価値を守れるか。売上を足すだけでなく、継続的に利益と資金を生む事業に変えることが、買収後の経営の仕事になる。
既存ブランドでは、在庫を減らすだけでは解けない課題もある。過度に仕入れを絞れば、需要がある時に売る商品がない。顧客の変化を商品へ戻す力と、売れる量を用意する判断を組み合わせる必要がある。会社が示す商品開発・生産工程の見直しや、重点ブランドへの資源集中が、定価で売れる商品と利益へ結びつくかを追いたい。
ワールドを見る際は、「M&Aだから成長した」と評価を終えるのでも、「既存ブランドが弱いから全体も評価できない」とまとめるのでもなく、買収後の経営成果と基幹ブランドの再生をそれぞれ確かめる。二つの力がそろうことが、次の成長の持続性につながる。
ワールド/中間決算短信・2026年10月5日(冒頭、業績説明)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544846.pdf
ワールド/中間決算説明資料(資料11、19〜20、24ページなど)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544854.pdf
ワールド/データブック(国内ブランド売上・資料9ページ)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544879.pdf
ワールド/9月月次売上・2026年10月5日
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544880.pdf
企業全体として増収増益を達成していることは評価したいです。ただし、M&Aによって売上が増えていることと、既存ブランドの競争力が高まっていることは別の問題です。アンタイトルやタケオキクチなど、既存ブランドの立て直しは引き続き重要な経営課題になります。
一方、M&Aを実行し、買収した企業を経営していくこと自体も簡単ではありません。買えば必ず成功するわけではない。統合や事業運営を通じて企業全体の成長につなげる経営力は、評価されるべきです。買収先が実際にどれだけ利益を生むかは公開資料に基づいて慎重に判断し、既存ブランドの再生とM&Aによる成長の両面から見たいと思います。
出典と数値・制度の対象時期は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業の実際の商品・店舗・販売員を示すものではありません。

売上の伸び以上に利益が増えた理由を、粗利・値引き・費用から分解する。巨大な会員基盤の価値は、人数の先にある。
アンドエスティHDが9月30日に発表した2027年2月期中間決算は、2026年3月1日〜8月31日を対象とする。正確な連結数値は売上高1,521億1,000万円、営業利益107億3,100万円。会社の説明資料に基づく営業利益率は7.1%で、前年の5.3%から改善した。
| 指標 | 中間実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,521億1,000万円 | 1.9%増 |
| 営業利益 | 107億3,100万円 | 34.6%増 |
| 営業利益率(会社表示) | 7.1% | 前年5.3% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 59億5,100万円 | 0.6%減 |
営業利益の増加と純利益の増加は同じではない。一過性の費用などもあり、中間純利益はわずかに減った。利益率の改善幅を示す際は、会社が小数点以下1桁で表示した5.3%と7.1%の比較であることにも注意したい。
会社は、原価低減による値入率の改善と、在庫コントロールによる値引きの抑制を説明している。売上総利益率は55.2%から56.5%へ上昇。値入率は販売価格と仕入れ原価の関係、値引きは実際の販売時の価格調整であり、二つを分けて読む必要がある。
一方、販管費率は49.8%から49.5%へ低下した。広告宣伝の効率化に加え、前年の旗艦店オープンに伴う費用との比較も影響する。人件費は処遇改善などで増えており、全面的な費用削減で利益を作ったという説明ではない。
| 金額の変化(前年同期比) | 決算数値からの計算 |
|---|---|
| 売上総利益の増加 | 36億2,400万円 |
| 販管費の増加 | 8億6,600万円 |
| 差し引き営業利益の増加 | 27億5,800万円 |
この表は決算の金額差を編集部が整理したものだ。粗利の増加が、費用の増加を上回った形を示しており、施策別に利益を配分した会社の効果測定ではない。また、8月末の在庫は前年同期比2.5%増だった。在庫が減ったから増益になったと断定せず、値引きを抑えながら売れる商品を用意できたかを見るべきだ。
ブランド別の上期売上高は、公式データブックで以下の数値を確認した。ブランドの売上であり、既存店だけの増減ではない。
| ブランド | 上期売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| GLOBAL WORK | 261億2,400万円 | 0.1%増 |
| niko and ... | 193億4,800万円 | 8.8%増 |
| LOWRYS FARM | 131億500万円 | 8.1%増 |
| LEPSIM | 99億1,500万円 | 13.7%増 |
| JEANASIS | 54億3,300万円 | 0.5%減 |
| BAYFLOW | 53億3,100万円 | 3.8%減 |
会社はGLOBAL WORKについて、値引き販売を抑えたため売上の伸びは小さかった一方、収益性が改善したと説明する。売上の増減だけでは商品・販売政策の成果を読み切れない事例だ。ただし、ブランド単独の利益額はここでは確認できない。グループ内には減収ブランドもあり、全体の好決算を一律のブランド成功とみなさない。
8月31日時点の店舗・EC共通会員は約2,270万人、アクティブ会員は約810万人。確認した資料にはアクティブの期間や行動の定義が明記されておらず、810万人を購入者数と読み替えることはできない。
and STの上期GMVは248億円で10.9%増。グループ外のGMVは37億円、77.7%増で、外部ショップは82に拡大した。GMVは流通総額であり、連結売上高やプラットフォームの利益とは異なる。外部ブランドの取り扱いが伸びていることは確認できるが、それだけで会員が生む利益を算定できるわけではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。会員基盤の強さは、単に多くの人へ広告を届けられることだけではない。同じ顧客が店舗で試し、ECで買い、別のブランドにも出会う。その接点を継続できれば、一度の購入にとどまらない関係を作る余地がある。
しかし、会員数が増えても買わない人が増えるだけなら、収益の基盤にはならない。他社ブランドが加わって選択肢が広がった時、自社の商品に代わるだけなのか、購入頻度や用途が増えるのかも確かめたい。GMVの伸びと、手数料や費用を含む事業としての利益を両方見る必要がある。
今後注目したいのは、購買頻度、客単価、継続率、店舗とECの相互送客、会員との関係に対して残る利益だ。本決算は、売上を追うだけでなく、粗利を守りながら顧客接点を育てる方向を考える材料になる。会員数を強みとして評価しつつ、その先の収益化を継続して追いたい。
アンドエスティHD/中間決算短信・2026年9月30日(冒頭、損益計算書)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/0b8752f197577e62c1cfaa3c0ea1a8f087e840378383c07c2ef9e93c31494dc6.pdf
アンドエスティHD/決算説明資料・説明文付き(6〜9、12、17ページなど)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/2727feb7904a109591d274ec3efd35f9caefaca2e4862cfe57c74e7eb3b4bf15.pdf
アンドエスティHD/DATABOOK(ブランド別売上高・5ページ)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/db7005791ce28b7c080b8404a8bfab67c88e8360050184c7f0cb11c2b817b9ee.pdf
特に注目したいのは営業利益率の高さと改善幅です。売上高の伸び以上に営業利益が伸びていることは、収益構造の改善を示しています。売上だけでなく、どれだけ利益を残せたかを見たいと思います。
and STの約2,270万人という会員基盤は非常に大きな強みです。ただし、人数が多いだけでは意味がありません。その会員基盤が実際にどれだけ売上や利益を生むかが重要です。購買頻度、客単価、継続率、ECと店舗の相互送客にも注目したい。巨大な顧客基盤を継続的な収益へ変えるところに、今後の成長可能性があると考えます。
出典と数値・制度の対象時期は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業の実際の商品・店舗・販売員を示すものではありません。

発信を任せるだけでなく、学び、評価され、次の人を育てる仕組みへ。販売員と外部アンバサダー、それぞれの役割を考える。
ワールドの公式STYLE SNAPでは、店舗に所属するスタッフのコーディネート投稿を、年齢、身長、骨格、体型などから探せる。商品写真だけでなく、自分に近い人がどう着ているかを確かめられる接点だ。ムービー、ブログ、スタッフを探す機能も用意されている。
STAFF STARTの提供会社は2021年12月、ワールドの35ブランド、約1,500店舗からの導入を発表した。コーディネート投稿と、接客した商品のEC情報をQRコードで渡す機能を紹介し、投稿経由のEC売上や閲覧数を可視化できるとしている。この規模は当時の導入開始時点のものだ。現在の全社導入数や投稿経由の売上額・比率とは区別する。
販売員の発信力を高める際には、着用情報をECの商品へ結びつけ、Instagramなどの外部SNSからも関心を届ける設計が考えられる。ただし、確認した情報では、全販売員がInstagramを運用し、同時投稿を全社標準にしているとは断定できない。投稿が可能な機能と、実際の参加範囲・売上成果を分けたい。
ワールド・ソリューションズの教育研修サービスでは、現場経験のある講師による対面・オンデマンド研修を案内している。SNS関連には「映えるSNS投稿写真の撮り方」「SNS活用講座」がある。写真撮影や発信ノウハウを提供する能力は確認できる。
一方、このページは企業や商業施設向けのサービス案内であり、全ワールド販売員に同じ研修を必修化しているという証拠ではない。グループ共通の受講頻度や、現在の社内講師育成制度の詳細は確認できなかった。
参考になるのが、2023年6月にSTAFF START側が公開したライトオンの担当者インタビューだ。当時は、本部の講座を毎月1回、半年間受講したスタッフが、地域店舗で撮影や投稿のノウハウを教える形を設けていた。地域をまたぐ共有会や撮影ワークショップも紹介されている。
同記事では当時、月20件以上投稿したスタッフに直接売上の2%をインセンティブとして付与し、SNS流入や閲覧なども含めて表彰すると説明している。これは2023年当時のライトオンの制度で、現在のワールドグループ共通の報酬制度ではない。現在も同じ条件で継続しているかは確認できなかった。
この事例の示唆は、上手に投稿できる人を増やすだけでなく、次の人へ教えられる人を育てることだ。本部の少人数だけが全店舗を支える構造から、現場に学びが広がる構造を考える材料になる。売上増のすべてが研修で生じたと因果を断定するものではない。
ワールドの公式報告では、2024年の社内表彰に「SNSインフルエンサー部門」とスタッフスタート部門が、2025年には「ソーシャルプロモーション部門・インフルエンサー部門」などが掲載されている。発信活動を組織として認める接点があったことを確認できる。
最新の2026年の開催報告は、B2C・B2Bの業態を横断した表彰や特別賞を紹介するが、公開一覧には以前と同じ名称のSNS部門を列挙していない。継続も廃止も、この情報だけでは断定できない。投稿数、売上、フォロワー数の評価配点、現在のSNS活動に対する賞金や給与・報酬への反映も確認できなかった。
投稿数の条件だけを見て「多く投稿すれば評価される」と一般化したり、ライトオンの過去の料率をワールド全体へ当てはめたりすることは避けたい。制度の存在に加え、どの成果と学習を評価するかが、育成の実効性を左右する。
ワールドオンラインストアの公式Instagramアンバサダー募集ページでは、18歳以上、応募時にフォロワー500人以上、提供商品をInstagramで発信できることを条件としている。毎月案内されるブランド商品から希望品へ応募し、商品を投稿する流れが示される。全応募者へ無条件に配布する制度ではない。
特典には投稿商品の提供、展示会・プレスルームへの招待、公式SNSやWEBで紹介される可能性が掲載されている。確認した公開ページには、金銭報酬やコミッション、投稿回数・活動期間などの詳細は明記されていない。現金報酬がないとも断定しない。募集条件は10月9日に確認した情報で、今後変更される可能性がある。
販売員は日々の接客から商品の疑問と選ばれる理由を知っている。外部アンバサダーは、自分の暮らしやコミュニティの中で商品を伝える。役割や雇用関係が異なるため、研修、報酬、活動条件も一つにまとめずに設計する必要がある。
ここからはFASHION SHIFTの提案だ。発信を任せるだけでは、撮影時間や周囲の協力が足りず、個人の努力に依存しやすい。商品説明、写真、文章、着こなし、結果の振り返りを学べる場と、店舗が活動を支えられる時間を用意したい。
評価も、投稿数や売上だけで終わらせない。顧客の疑問を解いた説明、着用後の満足、他の販売員へ共有した知見などを組み合わせる。そして、成果を出した人が次の人を育てる場を作れば、担当者が替わっても組織の発信力が残る。これらは現在のワールドの全社制度を断定したものではなく、記事から導いた経営上の提案だ。
社員、店舗販売員、顧客、外部クリエイターが、それぞれの立場からブランドを伝える。本部だけで発信を完結させるのではなく、顧客に近い現場の言葉が届く仕組みを整えることが、今後の情報発信力を高める鍵になる。
ワールド/現在の公式STYLE SNAP(2026年10月9日確認)
https://store.world.co.jp/snap-search.html
バニッシュ・スタンダード/ワールドのSTAFF START導入・2021年12月21日
https://note.com/vanishstandard/n/na324ae6cb260
ワールド・ソリューションズ/教育研修サービス(2026年10月9日確認)
https://solutions.world.co.jp/service/education-training/
STAFF START/ライトオンの担当者インタビュー・2023年6月15日
https://media.staff-start.com/seminar-report/righton_20230615/
ワールド/2024年の社内表彰報告
https://corp.world.co.jp/company/worldforfuture/8158/
ワールド/2025年の社内表彰報告
https://corp.world.co.jp/news/company/2025/11388/
ワールド/2026年の社内表彰報告
https://corp.world.co.jp/news/company/2026/14482/
ワールド/公式Instagramアンバサダー募集(2026年10月9日確認)
https://store.world.co.jp/s/campaign/week/ambassador/
これからのアパレル企業にとって、販売員による情報発信は非常に重要になります。日々お客様と接しているからこそ、何を求めているのか、商品のどこに魅力を感じるのかを理解している。その販売員が、自分の言葉で商品やブランドの魅力を発信することには、大きな価値があります。
企業はSNSを任せるだけでなく、教育、育成、評価の仕組みを整える必要があります。さらに、優秀な販売員が次の販売員を育てる仕組みができれば、情報発信力を継続的に高められるでしょう。
外部アンバサダーの活用も重要です。社員、販売員、顧客、外部クリエイターが、それぞれの立場でブランドの魅力を発信する。その鍵は、本部だけではなく、顧客に最も近い現場にあると考えます。
出典と数値・制度の対象時期は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業の実際の商品・店舗・販売員を示すものではありません。

2026年8月期決算を国内・海外・地域別に分解。商品を作る力と、売り切るまでをつなぐ経営構造の強さを読む。
ファーストリテイリングが10月8日に発表した2026年8月期決算は、5期連続で過去最高の業績となった。連結売上収益は3兆9,633億円、前年比16.6%増。事業利益は7,184億円、30.4%増、営業利益は7,431億円、31.7%増だった。親会社所有者帰属の当期利益は5,425億円、25.3%増。集計期間は2025年9月1日〜2026年8月31日だ。
ただし、連結全体とユニクロ単独は異なる。以下では国内・海外ユニクロを分け、さらに海外の地域別収益性を見る。金額は公式説明資料の億円表示、率は同資料の小数第1位表示に合わせた。金額の端数処理により、足し算が表示上の合計と一致しない場合がある。
同社の事業利益は、売上収益から売上原価と販売費・一般管理費を引いた指標。営業利益には、さらにその他収益・費用が反映される。連結の事業利益率は18.1%、営業利益率は18.7%だ。為替差益や減損なども含む営業利益の伸びを、そのまま商品の採算改善と読むことはできない。
| 事業 | 売上収益 | 事業利益 | 事業利益率 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内ユニクロ | 10,848 | 1,960 | 18.1% | 1,966 | 18.1% |
| 海外ユニクロ | 24,111 | 4,398 | 18.2% | 4,481 | 18.6% |
国内ユニクロの事業利益率は前年の17.7%から18.1%へ、海外は16.0%から18.2%へ改善した。国内は売上増で人件費・賃借料の比率が下がり、販管費率は32.6%へ0.4ポイント改善。一方、粗利益率は50.6%で0.1ポイント低下しており、すべての採算指標が良くなったわけではない。
| 地域 | 売上収益 | 事業利益 | 事業利益率 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| グレーターチャイナ | 7,240 | 1,120 | 15.5% | 16.2% |
| 韓国・東南アジア・インド・豪州 | 8,094 | 1,683 | 20.8% | 21.0% |
| 北米 | 3,649 | 679 | 18.6% | 18.7% |
| 欧州 | 5,126 | 917 | 17.9% | 18.2% |
地域別の数値は円換算。グレーターチャイナは中国大陸・香港・台湾を含み、中国大陸単独の成長率とは違う。中国大陸の売上は現地通貨で約3%増、事業利益は約18%増だった。海外全体の円ベースの増収率26.2%には為替の影響もある。売上規模と利益率を同じ表で見ると、地域ごとに収益の姿が違うことが分かる。
海外の利益率改善には、販売拡大に加え、値引き抑制と費用効率の改善がある。米国では値引率の改善が粗利を押し上げ、欧州では値引き抑制に加えて、一時的な複数倉庫体制の解消が物流費率の改善につながった。好決算を、AIや定番商品という一つの要因だけで説明するのは早い。
SPAは、商品企画から生産・販売までを一貫して運営する製造小売の考え方だ。ユニクロの公式ビジネスモデルは、企画・生産・物流・販売を自社で管理しつつ、ほとんどの商品を取引先工場に委託して生産すると説明する。すべてを自社工場で作っている、という意味ではない。
FASHION SHIFTが注目するのは、その一体運営が意思決定につながる点だ。顧客の声から仕様を改善し、売場で何を打ち出すかを決め、工場・物流・在庫まで連動させる。担当部門が別々の数字を追えば、販売側が売れていると感じても、追加生産が間に合わないことがある。一つの商売として見れば、売上と在庫、粗利の関係をまとめて判断できる。
ヒートテック、エアリズム、ボトムスやTシャツといった核の商品は、顧客理解と素材開発を積み上げる土台になる。定番とは、前年と同じ服を無条件に作り続けることではない。核となる価値を残しながら、着心地やシルエット、使い方を更新することだ。2026年の公式説明でも、商品企画担当者は販売状況に応じて生産部と増減産を調整し、売り切るまで責任を持つとされる。
在庫管理も、残った服を最後に処分する仕事に限らない。公式資料は、店舗別の売れ行きと在庫水準に応じた配分、継続販売する商品と売り切る商品の選別、売価変更の時期の調整を説明している。地域ごとに顧客と気候が違う以上、同じ商品を同じ時期に同じ数量並べるだけでは足りない。
高収益の構造を学ぶには、商品単位の粗利、欠品、在庫の滞留、物流費を同時に見る必要がある。売上を伸ばした部門が評価され、残った在庫を別部門が引き受ける仕組みでは、問題が見えにくい。商品を作るところから、販売と在庫の結果を次の企画へ戻すところまでを、経営の責任として設計することが重要だと考える。
ファーストリテイリング/2026年8月期決算短信・2026年10月8日(冒頭、その他収益・費用)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/tanshin202608_4q.pdf
ファーストリテイリング/2026年8月期業績説明資料(3、7〜16ページ)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20261008_results.pdf
ファーストリテイリング/決算サマリー・2026年10月8日
https://www.fastretailing.com/jp/ir/news/2610081800.html
ファーストリテイリング/ユニクロのビジネスモデル・2026年3月9日更新
https://www.fastretailing.com/jp/group/strategy/uniqlobusiness.html
ユニクロの強さは、良い商品を作るだけでも、売り方が上手いだけでもないと思います。商品企画から生産、販売、在庫までが、一つの経営として動いている。その構造が強い。定番商品を育て、売れ行きを見ながら数量や投入先を調整し、売り切るところまで責任を持つ。部門ごとに分断して考えるのではなく、顧客に価値を届け、利益を残すまでを一体で運営することに注目したいです。中堅企業も、規模をそのまま真似する必要はありません。まず、自社で商品企画と販売と在庫の情報がつながっているか、同じ判断基準で動けているかを見直すことが大切だと考えます。
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、過去の記録写真ではありません。

ヒートテックとエアリズムを支えるのは、生活の不便を素材と仕様の改良に変える力。AI需要予測の先にある、生産と在庫を動かす経営まで考える。
ユニクロはなぜ、ヒートテックやエアリズムを長く売れる商品に育てられるのか。新しい流行を当てるだけでは説明できない。顧客の生活に残る不便を見つけ、素材や仕様を改良し、必要な場所へ届ける。その仕組みを、公式資料から読み解く。
ヒートテックはユニクロと東レの共同開発商品だ。ユニクロが2023年9月に公表した世界累計販売枚数約15億枚という数字は、2003〜2022年の累計を指す。現在の累計として扱うべきではない。同年の商品発表には、薄いウルトラライトの投入、リブ商品の編地改良、超極暖の柔らかく軽い着心地への改善が並ぶ。暖かさという機能だけでなく、重ね着のしやすさや着心地を磨いている。
エアリズムも、使用場面の不満が進化につながってきた。2013年のユニクロ公式インタビューでは、通勤電車で蒸れるという声を受け、東レが糸をさらに細くして通気性を高めた経緯が紹介されている。なお、当時のウィメンズ向け素材は旭化成のキュプラと東レのナイロンの複合糸だった。全商品を東レ単独の技術として一括りにはできない。
直近の具体例は2026年3月のエアリズム発表だ。インナーとして紫外線対策もしたいという声から、UVカットUネックTの長袖を開発し、首元の開きや袖丈を調整。顧客の要望に応じて、脇に汗取りパッドを備えたアセトリキャミソールも再販した。
ここから読み取れるのは、定番の核となる価値を保ちながら、生活の変化や使用時の不満に応じて更新する考え方だ。毎年すべてを新商品に置き換えるより、顧客理解と開発成果を積み重ねられる可能性がある。ただし、これらの改良が利益にどれだけ寄与したかを、公開資料だけから切り分けることはできない。
ファーストリテイリングは2024年11月の説明会で、2024年8月期に3,140万件の顧客の声を収集・分析したと説明した。これは当時の公表値であり、2026年の件数とは区別する。有明プロジェクトは、声を集める仕組みだけではない。商品開発から販売計画、工場、物流までを連動させ、必要な商品を必要な時に届ける全社改革として位置づけられている。
企業にとって重要なのは、レビューを集計すること自体ではなく、『丈が合わない』『汗が気になる』といった声を、次の素材・型紙・仕様の判断に変えることだ。どの部署が受け取り、いつ試作し、誰が変更を決めるのか。その経路まで整って初めて、顧客情報が商品になる。
2021年10月の公式説明資料には、GoogleとAIを使った需要予測モデルを開発し、予測を販売計画へ反映する取り組みが明記されている。販売計画を生産・在庫計画へつなぐアルゴリズム、工場との情報共有、素材備蓄、輸送の短縮も合わせて説明された。2024年11月の説明では、需要予測を生産計画と連動させ、週次の生産調整が可能になったと公表している。同時に、素材備蓄や生産能力の確保も必要な取り組みとして挙げている。
予測精度が上がることと、実際の生産数量を変更できることは別の課題だ。素材の調達期間、工場の能力、発注条件、輸送日数が残る。2026年3月更新の公式ビジネスモデルでも、販売状況を踏まえ、商品企画担当者が生産部と連携して工場に増減産を指示すると説明している。AIがすべての商品を自動で自在に増減産している、とまでは言えない。
FASHION SHIFTの提案は、まず初回発注、店舗間移動、値下げ時期という、実際に変更できる判断にAIを結びつけることだ。販売・在庫・気温のデータを同じ商品単位で整理し、欠品しそうな店舗と余っている店舗を見つける。値下げも売れ行きと残りの販売期間から検討する。これはユニクロが中堅企業向けに提示した施策ではなく、公開資料を踏まえた本誌の考察である。
定番を育てる商品開発と、需要に応じて数量・配置を変える運営をつなぐ。ヒット商品を一度当てることから、売れる理由を継続的に磨くことへ。学ぶべき点は、巨大なシステムそのものより、顧客の変化を意思決定へ戻す経営の設計にある。
ユニクロ:2023年ヒートテック発表(累計販売対象期間・東レ共同開発・改良)
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2023/09/23092611_HT.html
ユニクロ:AIRism開発の舞台裏・前篇(2013年)
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2013/04/040510_airism_1.html
ユニクロ:AIRism開発の舞台裏・後篇(2013年、旭化成・東レ複合糸)
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2013/04/040510_airism_2.html
ユニクロ:2026年3月エアリズム発表
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2026/03/uv_19.html
ファーストリテイリング:有明プロジェクト説明資料(2021年10月14日、6ページ)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20211014_tanaka.pdf
ファーストリテイリング:LifeWear説明会(2024年11月13日)
https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/news/2411131510.html
ファーストリテイリング:ユニクロのビジネスモデル(2026年3月9日更新)
https://www.fastretailing.com/jp/group/strategy/uniqlobusiness.html
ユニクロの強さは、商品のアイデアだけでなく、お客様の不便を見つけて改良し、それを生産・販売・在庫までつなげられるところにあると思います。定番商品も、同じものを作り続けるだけではなく、毎年少しずつ良くしていく。その蓄積が、また買いたいという理由になる。AIはこの仕組みを補強できますが、予測が出た後に誰が何を変えるかまで決めなければ、経営は変わりません。中堅企業も、最初からユニクロと同じ仕組みを目指す必要はない。初回発注や店舗間移動、値下げの判断など、自分たちが動かせるところから始める。そのうえで、顧客と商品企画の距離を短くしていくことが大切だと考えます。
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、過去の記録写真ではありません。

1976〜2025年の官公庁資料から、市場金額、供給点数、EC化率を読み解く。売上の拡大だけを追う経営から、自ら変化を起こす経営へ。
日本のアパレル市場を50年という時間軸で見るとき、過去を「服を作れば売れた時代」と一括りにするのは正確ではない。1976年の経済企画庁『年次経済報告』は、婦人服やニット製品が堅調な一方、1973年ごろの輸入増などで過剰在庫が残った綿スフ織物やメリヤス肌着では、減産体制が続いていたと記している。商品分野による明暗と在庫調整は、すでに重要な課題だった。
同報告は、高度成長から安定成長へ移るなかで、需要の伸び悩み、売上競争、コスト削減要求、国際分業の進展に言及。技術力、市場開拓力、情報収集力、従業員の能力開発を求めていた。50年前の資料を読むと、変化に対応する経営の必要性は新しい話ではないことがわかる。
経済産業省の2024年6月の繊維産業政策資料によると、衣料品等の国内市場規模は1991年の15.3兆円をピークに減少し、2022年は8.7兆円だった。差は6.6兆円、比較した2時点では約43%の減少になる。2000年代以降は横ばいの時期もあり、2020年前後には新型コロナウイルス感染症による外出制限などの影響で急減した。毎年同じ速度で縮んできたわけではない。
ここでいう市場規模は、同資料の図注にある「織物・衣服・身の回り品小売業」の推移である。小売事業所を業種で分類した名目の販売額であり、あらゆる販売チャネルの衣類だけを商品別に足した数字とは異なる。物価の変化を取り除いた実質額でもない。国内市場の長期的な変化を示す指標として読みたい。
経産省の調査資料では、国内衣料品の供給量は1990年の約20億点に対し、2022年は約37.3億点と推計されている。比較した2時点では約1.9倍だ。ただし、途中に増減があり、「現在も毎年増え続けている」とは言えない。
供給点数は外衣、下着、補整着、寝着類について、国内生産量に輸入量を加え、輸出量を差し引いた推計だ。国内生産の一部品目は従業者30名以上の企業の数値を計上しており、統計範囲の制約もある。消費者が購入した点数や、売れ残りの数を直接示すものではない。市場金額と供給量の対象範囲も一致しないため、8.7兆円を37.3億点で割って平均購入単価を算出することは避けるべきだ。それでも、金額の伸びだけを追い、商品の量を増やす経営の難しさを考える材料にはなる。
経産省の資料では「衣類・服飾雑貨等」のEC化率は2013年に約7.5%だった。2025年8月26日公表の『令和6年度電子商取引に関する市場調査』で確認できる2024年の「衣類・服装雑貨等」は23.38%、EC市場規模は2兆7,980億円。2023年の22.88%から0.50ポイント上昇し、EC市場規模は前年比4.74%増えた。
EC化率は、対象商品カテゴリーの取引金額に占めるBtoCの電子商取引の割合である。前掲の業種別小売販売額と分母が同じではなく、「国内市場8.7兆円の23.38%がEC」と計算してはいけない。またEC化率は、購入者の人数割合や、店舗を使わなくなった人の割合でもない。オンラインで商品を知り、店舗で試着するなど、購買の途中には複数の接点がある。
名目額。「織物・衣服・身の回り品小売業」の販売額。間の年を補間していません。
出典:経済産業省の公表資料
| 年 | 値 |
|---|---|
| 1991 | 15.3兆円 |
| 2022 | 8.7兆円 |
国内生産+輸入−輸出の供給推計。購入点数や売れ残り数ではありません。間の年を補間していません。
出典:経済産業省の公表資料
| 年 | 値 |
|---|---|
| 1990 | 20億点 |
| 2022 | 37.3億点 |
BtoCの商品カテゴリー別。2013年は約7.5%。23.38%は2024年実績、2025年公表。
出典:経済産業省の公表資料
| 年 | 値 |
|---|---|
| 2013 | 約7.5% |
| 2023 | 22.88% |
| 2024 | 23.38% |
本稿の対象は1976〜2025年。起点の1976年は当時の官公庁資料で経営環境を確かめ、定量比較は出典と定義を確認できた年に絞った。2025年は上記EC調査の公表年であり、23.38%は2024年の実績値である。2025年や2026年のEC化率として紹介しない。1976年と同一定義で連続する市場系列や、2025年の確定値は本稿では確認できていない。
グラフは市場規模、供給点数、EC化率を分け、確認できた時点のみを表示する。市場金額の減少、数量の増加、売り場の変化は重なっているが、それだけで特定企業の業績や商品の品質を説明できるわけではない。必要なのは、それぞれの指標が何を測り、何を測っていないかを理解することだ。
以上の数字からFASHION SHIFTが考えるのは、売上目標のために商品数や発注量を増やすだけでは成長を設計しにくくなったということだ。粗利益、在庫、顧客との継続的な関係を含めて、事業の質を測る必要がある。同時に、EC、データ活用、商品開発、新しい顧客接点の試行を、日常業務の合間に任せるだけでは限界がある。
新しい施策を担う人材を置き、判断できる権限と実験の予算を渡し、既存部署をまたぐ体制を設ける。売上だけでなく、検証から得た学びや収益構造の改善も評価する。これは統計が直接証明する処方箋ではなく、変化を起こす経営に向けた本メディアの提案である。
経済企画庁/1976年年次経済報告「中小企業」(内閣府アーカイブ)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/keizaiwp/wp-je76/wp-je76-s0014.html
経済産業省/2024年6月・繊維産業政策資料(市場規模、図6)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/textile_industry/pdf/20240625_1.pdf
経済産業省/2023年度調査報告書(国内衣料品供給量)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2023FY/000493.pdf
経済産業省/繊維製品における資源循環システム検討会報告書(2023年9月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/resource_recycling/pdf/20230928_1.pdf
経済産業省/新たな顧客の獲得〜ECの動きの拡大〜(2013年等)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_production_area/pdf/003_03_00.pdf
経済産業省/令和6年度電子商取引に関する市場調査(2025年8月26日公表、2024年値)
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html
経済産業省/令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書・衣類等の表
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005-a.pdf
市場が縮小し、商品の供給量と売り場の構造が変わっているのに、従来と同じやり方で売上だけを追い続けてよいのか。私は、アパレル企業が売上至上主義を一度見直す必要があると思います。売上は大切ですが、在庫を積み上げたり、値引きに頼ったりして増やす売上が、将来の強さにつながるとは限りません。
変化への対応を、誰かのやる気や現場の残業に任せてはいけない。イノベーションを担う人材、判断する権限、使える予算、そして部署や横断的な体制を、経営が用意する必要があります。既存事業を守る仕事と、新しい可能性を試す仕事は、求められる役割も評価の仕方も違います。
時代が変わったから仕方がない、と受け止めるだけではなく、自分たちから変化を起こす。そのための仕組みを作ることが、これからのアパレル経営には必要だと考えます。
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、過去の記録写真ではありません。

ナイキの中国減収と、LVMHのアジア回復は同じ話ではない。決算の範囲を分け、世界的ブランドが次の顧客に選ばれる条件を考える。
ナイキとルイ・ヴィトンは、なぜ中国で以前と同じように選ばれなくなるのか。この問いを考えるには、まず確認できる業績と、ブランドへの評価を分ける必要がある。最新資料は、両社が同じ状態にあるとは示していない。ナイキには中国事業の減収がある一方、LVMHには日本を除くアジアの回復と、北京のルイ・ヴィトン新旗艦店の好調が記されている。
ナイキが10月1日に発表した2027年5月期第1四半期は、2026年6〜8月の実績だ。全社売上高は112億ドルで前年同期比4%減、為替変動を除くと5%減。10月2日提出の四半期報告書によると、NIKE Brandのグレーターチャイナ売上高は11億8,000万ドル、報告ベース22%減、為替変動を除くと26%減だった。同地域のEBITは2億4,800万ドルで34%減。EBITは利息・税金控除前利益で、全社純利益とは異なる。
同報告書は、中国での店頭客数の減少、販促の増加、市場に積み上がった在庫を課題として挙げる。地域売上は中国大陸単独の数字ではなく、NIKE BrandにはJordanも含まれる。再建に伴う調整もあるため、減収を『商品の機能が落ちたから』と決めつける根拠にはならない。
LVMHが7月27日に公表した2026年上期の売上高は386億4,400万ユーロ。報告ベース3%減だが、為替と連結範囲の変動を除くオーガニック成長率は2%増だった。ファッション&レザーグッズ部門は181億4,600万ユーロ、報告ベース5%減、オーガニックでは1%減。ただし、第2四半期はオーガニックで1%増へ転じている。
地域別の日本を除くアジアは、グループ全体の上期オーガニック売上が6%増、売上構成比は29%だった。これは中国だけでも、ルイ・ヴィトンだけでもない。部門の数字にはDiorなど複数ブランドが含まれる。今回参照した資料では、ルイ・ヴィトン単独の中国売上額・増減率を確認できない。
公式発表は、北京とソウルのルイ・ヴィトン新旗艦店が良好な業績を収めたと説明している。したがって、過去のラグジュアリー市場減速や部門減収から、現在のヴィトンの中国事業全体が不振だと断定するのは適切ではない。問いは、中国で何が変わり、どんな顧客接点が次の成長につながるかへ進めたい。
中国国家統計局の9月公表資料では、2026年1〜8月の社会消費品小売総額は前年比1.1%増、8月単月は0.4%増だった。一定規模以上の企業を対象とした衣服・靴・帽子・繊維製品の小売は、1〜8月が5.1%増、8月は0.5%減。全国の衣類消費や高所得者だけを測った統計ではなく、名目額の変化である。
一方、ANTA Sportsの公式IRでは、2026年上期のグループ売上高は435億1,000万元、営業利益率は27.0%だった。ANTAだけでなくFILA、DESCENTEなどを含む多ブランド企業の数字であり、全額を中国ブランドANTA単独の売上と読んではいけない。それでも、同じ消費環境のなかで事業を育てる競争相手が存在することは、ブランド責任者が見ておきたい点だ。
McKinseyの2026年4月の中国消費分析は、成長領域の違いと、現地企業によるソーシャルコマースでの迅速な商品検証・顧客獲得を指摘している。2025年5月公表の同社調査は、2024年末に中国の1万7,000人超を調べ、雇用や不動産価値への不安と、生活の充実を重視する姿勢を示した。高所得の都市消費者については、住宅や車などのモノに加え、喜びを得られるサービスや体験にも支出を向けると分析している。これはモノを買わなくなったという意味ではない。調査・分析の時点と対象は企業決算とは異なるが、『中国全体が悪い』だけでは競争を説明しきれないことを考える材料になる。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。世界的な知名度や長年の技術は強みだが、それだけで次の購入が決まるとは限らない。すでに十分な服やバッグを持つ顧客にとって、買い足す意味は何か。スポーツに参加する楽しさ、店舗で文化や職人技に触れる時間、長く使うための修理など、商品と一緒に得られる価値を設計する余地がある。ヴィトンが新旗艦店で独自の体験を提供しているという公式説明も、この問いにつながる。
さらに、リユース、環境への配慮、社会貢献につながる購買が、選択理由になる可能性もある。ただし、今回の決算や調査だけで、中国の消費者全体が所有から体験、さらに社会貢献へ移行したとは言えない。その変化が両ブランドの売上低迷を引き起こしたという因果関係も確認できない。これは編集長の仮説として、今後確かめたい論点だ。
経営として確かめたいのは、誰が買わなくなり、誰が新しく買っているかだ。初回購入と買い替え、定価と値引き、商品だけの購入と体験を伴う購入を分けて見れば、次に投資すべき接点が見えてくる可能性がある。環境配慮も言葉だけでは足りない。修理の利用、再販への参加、顧客の継続購入などで、実際の価値を検証する必要がある。
商品力を否定する前に、持っている強さが今の顧客の生活に届いているかを問う。中国での競争は、名の知られたブランドが、選ばれる理由を更新し続けられるかという経営課題でもある。
ナイキもルイ・ヴィトンも、世界的な商品力とブランド力を持っています。業績が伸びないことを、単純にデザインや機能性が落ちたからだとは考えたくありません。まず、地域や顧客層ごとの数字を見て、どこで何が起きているのかを分けて考える必要があります。
そのうえで、すでに多くのモノを持つ人の間では、所有することから体験することへ、さらに環境や社会への貢献へと、価値観が徐々に動いている可能性があるのではないかと思います。リユースや環境配慮型商品、社会貢献につながる商品は、新しい選ばれる理由になり得る。
ただし、それが中国での売上低迷の原因だと断定するつもりはありません。今回確認した資料では、LVMHのアジア事業には回復も見えます。調査で分かることと仮説を分けながら、強いブランドが次の顧客に何を届けるかを追っていきたいです。
NIKE/FY2027第1四半期決算・2026年10月1日発表
https://about.nike.com/en/newsroom/releases/nike-inc-reports-fiscal-2027-first-quarter-results
NIKE/2026年8月31日終了四半期・10-Q(10月2日提出)
https://investors.nike.com/sec-filings/all-sec-filings/content/0000320187-26-000193/nke-20260831.htm
LVMH/2026年上期決算・2026年7月27日
https://www.lvmh.com/en/publications/accelerating-growth-in-the-second-quarter---solid-first-half-results
LVMH/2026年上期決算説明資料(地域別構成・成長率)
https://lvmh-com.cdn.prismic.io/lvmh-com/68yUok3lubOY0jf__LVMH_2026FirsthalfResults_Presentation.pdf
中国国家統計局/2026年1〜8月小売統計(英語版9月16日)
https://www.stats.gov.cn/english/PressRelease/202609/t20260916_1965341.html
ANTA Sports/2026年中間決算・公式IR
https://ir.anta.com/en/index.php/financial.php
McKinsey/中国消費分析・2026年4月9日
https://www.mckinsey.com/cn/our-insights/our-insights/china-consumption-update-what-is-new-in-the-year-of-the-horse
McKinsey/中国消費者調査に基づく分析・2025年5月7日
https://www.mckinsey.com/cn/our-insights/our-insights/chinese-consumption-amid-the-new-reality
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

10月16日発売の2026年秋冬コレクション。2017年から続く協業を、集客・顧客創造・商品開発への投資として読み解く。継続と利益の証明は分けて考える。
ユニクロとJW ANDERSONの協業は、2017年秋冬に始まり、2026年も続いている。デザイナーの知名度で一度だけ売り場を盛り上げる企画とは違い、長く関係を育てることにどんな経営的な意味があるのか。10月16日発売予定の秋冬コレクションと、過去の公式IRを手掛かりに考える。
ユニクロは2026年10月9日、UNIQLO and JW ANDERSONの秋冬コレクションを発表した。発売は10月16日から順次。フルラインナップの取り扱いは国内103店舗とオンラインストアを予定し、一部商品は国内全店舗で展開する。構成はウィメンズ13アイテム、メンズ12アイテム、グッズ4アイテムだ。この記事の公開時点では発売前であり、今季の売れ行きは評価できない。
今季は演劇やアカデミックな文化から着想を得て、短い丈のブルゾンやパデッドショートジャケット、Vネックセーターなどを用意する。ヴィンテージの表情と日常で使える機能性を組み合わせた提案だ。商品を買う目的に加え、いつものユニクロとは異なる着こなしを発見する入口にもなり得る。
集客との関係は、単なる期待だけではない。2018年4月12日の上期決算説明資料では、国内ユニクロの上期客数が前年同期比4.2%増となった背景として、コア商品の好調に加え、JW ANDERSONやイネス・ド・ラ・フレサンジュなどのコラボ商品の情報が顧客に伝わったことが挙げられている。
ただし4.2%という数字は国内事業全体の客数伸び率で、JW ANDERSONだけの効果ではない。気温や防寒衣料の販売、他のコラボなどが重なるなか、個別企画の寄与率を分離して測った数字でもない。公式説明が確認できるのは『集客要因の一つだった』という範囲だ。
より最近の資料にも手掛かりがある。2025年7月10日の決算質疑では、岡﨑CFOがJW ANDERSONのストレートジーンズなどを例に、コア商品へ新しさを加えることで既存顧客の新しい需要が生まれていると説明した。2026年7月9日の質疑でも同じ商品が、コア商品へ新しい価値や魅力を加える事例として示されている。
ここから読み取れるのは、コラボを特別な商品だけの世界に閉じず、ジーンズなど普段着の需要を更新する役割としても捉えていることだ。一方、この説明は『JW ANDERSONの商品が通常ラインへ移管された』という証拠ではない。確認できない具体的な転用事例を事実としては扱わない。
ジョナサン・アンダーソンは2013年にロエベのクリエイティブ・ディレクターに就任し、2025年3月に退任が発表された。ディオールのメンズ担当就任は2025年4月17日に発表され、同年6月2日にはウィメンズとオートクチュールにも役割を広げた。現在の肩書をロエベの現職と混同してはいけない。
ユニクロの協業開始はディオール就任より前の2017年。すでにロエベを率いていた才能と関係を築き、その後も協働を続けた点に戦略的な価値を見いだせる。ただし『無名の新人を発掘した』という理解は正確ではない。
FASHION SHIFTは、この協業を売上施策に加え、ブランドイメージや顧客との関係を育てる投資として読む。普段ユニクロへ来ない人が訪れる、既存顧客が新しい着こなしを知る、デザインの知見が次の商品開発につながる。これらは検証すべき経営上の仮説であり、公開された成果指標ではない。
今回確認した公式発表・IRでは、コラボ単独の売上高、利益、契約費用、投資回収率は公表されていない。長く続いていることは一定の価値が認められている可能性を示すが、黒字の証明にはならない。
ブランド責任者が企画を評価する際には、販売額だけでなく、新規顧客の購入、通常商品の併買、その後の再来店まで分けて追う必要がある。商品開発への学びも、何をどう反映したか記録して初めて資産になる。単発の話題を継続的な顧客価値へ変えられるかが、長期コラボの経営的な問いだ。
デザイナーコラボは、単発の売上を作るだけではなく、集客、ブランドイメージの向上、新規顧客の獲得、将来の商品開発まで含めたマーケティング投資ではないかと思います。コラボで支持された商品を通常の定番へ育てる仕組みも合理的です。ただし今回の資料だけで、特定の商品が実際に通常ラインへ転用されたとは言えません。2017年から協業を続けていることは、ユニクロが何らかの経済的・戦略的価値を認めている可能性を示す。世界的デザイナーとして存在感を高め、ディオールを率いるようになったアンダーソンと、それ以前から関係を築いてきた先見性も評価したいです。ただ、当時もすでにロエベを率いていた人であり、無名の才能を発掘したという話とは違う。そして継続しているだけで利益が出ていると断定はできません。コラボで生まれた出会いを、通常の商品や次の購買へどうつなげるか。そこまで設計することが重要だと考えます。
ユニクロ:2026年秋冬コレクション公式発表(2026年10月9日)
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2026/10/uniqlo_and_jw_anderson_2026202.html
ファーストリテイリング:2018年8月期上期決算説明資料(2018年4月12日、8ページ)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20180412_results.pdf
ファーストリテイリング:2025年7月10日決算質疑(Q9・コア商品の新需要)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/faq20250710.html
ファーストリテイリング:2026年7月9日決算質疑(Q8)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/faq20260709.html
LVMH:2025年上期決算発表(ディオールでの役割を確認)
https://www.lvmh.com/en/publications/solid-results-in-the-first-half-of-2025-despite-the-prevailing-environment
Vogue:ディオールのメンズ担当就任発表(2025年4月17日、ロエベ就任歴も確認)
https://www.vogue.com/article/dior-confirms-jonathan-anderson-will-take-menswear-helm
Reuters:ディオールでの担当拡大発表(2025年6月2日)
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/dior-appoints-jonathan-anderson-design-chief-womens-wear-haute-couture-2025-06-02/
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価格、納期、店舗、品ぞろえを一つの購入体験へ。伸びるオーダー事業を、既存需要の獲得と新規需要の創出に分けて考える。
スーツを毎日着ることが当然ではなくなった時代に、オーダーメイドのKASHIYAMAはなぜ伸びるのか。オンワードグループ全体の増収増益を扱った前回記事から一歩踏み込み、今回は購入体験と事業モデルの変化に焦点を当てる。
ただし「縮小市場なのに成長した」という整理にも注意が必要だ。オンワードの2026年1月30日付事業説明資料は、国内ビジネスウエア市場についてコロナ後は微増傾向と説明する。各社IRや矢野経済研究所を参照し、一部推計を含む主要オーダースーツブランドの売上合計は2024年が2022年の約130%とする。長期的なスーツ離れと、直近のオーダー市場の拡大は両立する。
10月8日公表の2027年2月期中間決算説明資料によると、KASHIYAMAを展開するオンワードパーソナルスタイルの2026年3〜8月の売上高は54億6,300万円、前年同期比42.5%増。営業利益は2億4,300万円だった。同社の営業利益を売上高で割った営業利益率は約4.45%となる。これは運営会社別の実績であり、スーツだけの売上や利益を示す数字ではない。
今期の会社別通期予想は売上高113億1,000万円、営業利益4億2,000万円。上期の成長率をそのまま下期に延長して予想するのではなく、会社が公表する年間計画と区別して読む必要がある。
公式ブランドサイトはクラシックスーツを税込3万3,000円から、最短1週間で届けると案内する。全商品・全時期に1週間を保証する意味ではなく、店舗案内には時期によって時間がかかる場合があると記載されている。
2026年2月の公式発表は、大連の自社グループ工場でCAD・CAMを活用し、工場から顧客へ直接届ける仕組みを説明する。同発表時点で店舗は全国70以上。出張採寸や、2着目以降のオンライン注文にも対応していた。価格だけでなく、採寸、納期、受け取り、再注文までをつないだ購入体験が特徴だ。
最新の中間決算資料は、都心旗艦店、郊外・地方の商業施設、アウトレットでの試験展開に加え、百貨店オーダースーツ事業を継承したKASHIYAMA PREMIUMを説明する。オーダーシャツの生産体制強化、カットソーやシャツ・ブラウス、パンツなど既製品の販売も進む。コートやニットは今後の展開として記載されており、すべてが販売済みとは扱わない。
オーダーの選択肢を身近にすることは、既製品を買っていた人の乗り換えにつながり得る。一方、サイズが合う服を見つけにくかった人や、オーダーを高価で時間がかかるものと考えていた人が購入を始めれば、新しい需要にもなる。ただし、ブランドの新規顧客は市場全体の新規需要と同義ではない。他社からの移行、購入頻度の増加、初めての購入を分けるデータがなければ、その比率は断定できない。
また、運営会社の増収には出店、品ぞろえ拡張、事業継承など複数の要素がある。42.5%という数字だけで既存店の競争力向上や市場の拡大を説明するのも早い。既存店売上、新規客の獲得費用、リピート率、納期遵守率、店舗と工場の稼働率を合わせて見たい。
1月30日の公式事業資料には2030年度の売上高300億円計画がある。一方、4月公表の中長期ビジョン資料ではKASHIYAMA事業の2030年度目標は250億円と記載されている。10月10日付WWDJAPANは、保元道宣社長が2030年2月期に約300億円を目指す意向を示したと報道した。今回確認できた最新の公式決算資料では、この期限と規模の組み合わせを再確認できなかった。2030年度と2030年2月期は異なる。4月資料には一部の会社別数値にグループ会社間取引の相殺消去後の金額を使うという注記もあり、数値の差だけで目標引き下げと判断できない。報道を公式の確定計画へ置き換えない。
経営への示唆は、スーツの着用機会を増やす宣伝だけに頼らず、購入をためらう理由を事業の仕組みで取り除くことだ。買いやすい価格、納期への見通し、生活動線上の店舗、再注文の便利さ、関連商品の提案は、それぞれ顧客の不便に働きかける。商品力と販売方法、生産体制を別々に改善するのではなく、一つの体験として設計する視点が必要になる。
同時に、出店を増やせば家賃や人員、生産能力への投資も増える。規模の拡大が利益に結びつくかは自動的には決まらない。KASHIYAMAを成長事例として評価する際にも、売上の伸びと、獲得した顧客が繰り返し利用する収益構造の両方を追っていきたい。
オンワードHD/2027年2月期中間決算説明資料・2026年10月8日(運営会社実績・予想・事業施策)
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/056ea2a79ba77e781ab5c2675af426596add355b.pdf
KASHIYAMA/公式ブランドサイト(価格・最短納期)
https://kashiyama1927.jp/
KASHIYAMA/公式店舗案内(納期の留意事項・店舗)
https://kashiyama1927.jp/shop/
オンワードHD/2026年2月6日発表(F2C・店舗・注文方法)
https://www.onward-hd.co.jp/release/2026/20260206_1.html
オンワードHD/カシヤマ事業説明会・2026年1月30日(市場認識・2030年度計画)
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/kashiyama20260130.pdf
オンワードHD/中長期ビジョン事業領域別計画・2026年4月(2030年度目標)
https://www.onward-hd.co.jp/ir/management/onward_vision_2030_20260414.pdf
WWDJAPAN/2026年10月10日(社長の約300億円目標に関する報道)
https://www.wwdjapan.com/articles/2524130
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都立明治公園にBEAMS SPORTS初のコンセプトストア。スポーツ、古着、カフェを重ねた新拠点から、売上だけでは測れない店舗の役割を考える。
ビームスは10月2日の公式発表で、BEAMS SPORTS初のコンセプトストアを10月12日、東京都新宿区の都立明治公園A棟1階に開くと告知した。営業時間は10〜19時。今回の新店は、服を買うだけでなく、人が集まり交流する拠点を目指す。
店舗面積については、10月9日のFASHIONSNAPが約155平方メートルと報じている。一方、今回確認したビームスの公式発表には面積の記載がないため、これは報道に基づく数値であり、カフェとの面積区分などは確認できない。開業後の来店数や売上実績も、今回の参照資料では公表されていない。
公式発表が挙げる強化領域は、ランニング、トレイルランニング、バスケットボール。R.A.D RUNNING、Winiche & Co.とAKTRの協業商品、スポーツ関連の古着を扱い、店舗限定のオリジナル商品は8型を展開する。競技のための機能と、普段の服として楽しめる感性を結び付けた構成だ。
別の公式商品紹介では、ランニングブランドALEX ZONOも紹介されている。古着は新品の代替というより、スポーツの歴史やカルチャーを身に着ける選択肢として並ぶ。機能性だけを比較する売場でも、流行だけを追う売場でもない。スポーツを楽しむ人の生活を、商品を通じて広げる提案と読み取れる。
併設するParkletは株式会社Stapleが運営するベーカリーカフェ。公式告知では営業時間は9〜19時とされ、パンやコーヒーなどを提供する。ビームスは、カフェの座席や空間を使ったスポーツ関連イベントやトークショーの開催が可能になると説明している。継続イベントの具体的な日程や頻度がすべて決まったという意味ではない。
10月12日の開業パーティーは18〜21時、入場無料と告知された。DJ、ランニング企画の中継、バスケットボールのフリースロー企画などが予定されている。本記事では公式の事前告知内容として紹介し、実際の参加人数や成果を確認したものとは区別する。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。ECで商品情報を調べ、比較し、注文できる時代に、店舗の役割を販売だけで説明することは難しくなる。公園で体を動かした後に立ち寄る。観戦前に仲間と会う。コーヒーを飲みながら新しいブランドを知る。こうした訪れる理由があれば、購入予定のなかった人にも商品との接点が生まれ得る。
重要なのは、カフェを付ければ必ずコミュニティが育つということではない。誰に向けて、どんな活動を続け、その場にいる人同士が何を共有できるかまで設計する必要がある。店舗スタッフにも、販売に加えて場を案内し、初めて来た人が参加しやすくなるよう支える役割が求められる可能性がある。
このモデルを評価するなら、その日のレジ売上に加え、新規来店者、イベント後の再来店、会員登録、継続購入を追うことが考えられる。顧客生涯価値は、顧客が長期にわたりもたらす利益を見る指標だ。ただし、BEAMS SPORTSがこれらを現に採用していると確認したわけではない。経営側に提案したい測り方である。
イベントの参加人数が多くても、運営費や人件費が膨らめば持続しない。顧客との関係が深まっているかと、その関係を育てる費用が適切かの両方を確認したい。会員情報や購買履歴を用いる場合は、顧客の同意と利用目的を前提に、店舗とECを横断して把握する方法を考える必要がある。
店で商品を知り、後日ECで買うことも、ECで見てから実物を確かめることもあり得る。その場合、オンラインの注文だけを見て店舗の貢献をゼロと評価すれば、体験に投資する判断を誤る可能性がある。ただし、今回確認した発表では、この新店固有のEC連携施策や相互送客の成果は開示されていない。成果を先取りせず、今後確認したい課題として位置付ける。
服を売る店舗が不要になったと結論づける必要はない。問われているのは、服を買う理由と、その場所に通う理由を一緒につくれるかだ。商品の品揃えにスポーツと交流の文脈を加える今回の試みは、店舗を顧客との関係が蓄積する場所として捉え直す材料になる。
BEAMS/コンセプトストア公式発表・2026年10月2日
https://www.beams.co.jp/company/information/pressrelease/261
BEAMS/商品構成・開業パーティー・Parkletの公式案内
https://www.beams.co.jp/news/5030/
BEAMS SPORTS/公式店舗ページ
https://www.beams.co.jp/shop/bsm/
FASHIONSNAP/2026年10月9日・面積約155平方メートルの報道(公式値とは区別)
https://www.fashionsnap.com/article/2026-10-09/beams-sports-open/
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ブラジャーのカップをつくる技術が、身体を包む新しい造形へ。COCOON BODYは、日本企業の研究開発をファッションの競争力へ変える可能性を問いかける。
ワコールは2026年10月7日、ISSEY MIYAKEと共同制作した「COCOON BODY(コクーン ボディ)」を発表した。作品が披露されたのは、現地時間10月2日13時に行われた2027年春夏パリ・ファッションウィーク。コレクションの年と、実際の発表年を分けて読む必要がある。
核となるのは、ワコール人間科学研究開発センターの立体成形技術「Melooop(メループ)」だ。身体と衣服の関係を探究するISSEY MIYAKEの創作と、人体研究を重ねてきたワコールの技術を組み合わせた。両社には、1977年に始まったHAI SPORTING GEARなどの協業の歴史もある。
メルトブロー法は、樹脂を溶かしてノズルから出し、熱風で細い繊維にして不織布をつくる方法だ。Melooopは、この方法を立体物の成形へ応用する。ロボットアームで型の動きを制御しながら繊維を吹き付けることで、平らな生地を裁断して縫い合わせることを前提としない造形ができる。
一般的な裁断・縫製では、生地から部品を切り出し、それを組み立てて形をつくる。対して今回のプロジェクトでは、胴体の型に向けて材料を積み重ね、身体を包む形を直接つくった。これは、従来の製法を一律に置き換えたという話ではない。異なる服のつくり方を、作品として示した取り組みだ。
ISSEY MIYAKEの公式説明によると、原型づくりには衣服を着せたトルソーを用いた。濡らした衣服の表情を3Dスキャンし、型へ反映する。デジタルデータだけで自動的に完成するのではなく、人がつくった形と感覚を、成形の工程へ受け渡している。
Melooopでは、ロボットの動かし方を調整して厚みや伸び方などを変えられる。ISSEY MIYAKEは、COCOON BODYの原料となる樹脂ペレットの6割が植物由来だと説明する。植物由来という説明だけから、生分解性や製品全体の環境負荷の低さまで断定することはできない。
ワコールの2025年1月の発表は、単一素材での製造によるリサイクルのしやすさや、型への吹き付けによる廃棄材料の少なさを特徴に挙げる。2026年5月のラボ開設資料では、3Dプリンタで作る型を用いるため金型が不要で、小ロット生産に適すると説明している。型そのものを使わない製法ではない。ISSEY MIYAKEは、成形時に切り落とした材料を原料へ戻し、材料廃棄をゼロにすることも可能だと説明している。これは製造時の材料循環の説明であり、使用済み衣服の回収網が完成したことや、環境負荷全体がゼロになったことを意味しない。
Melooopは2020年からブラジャーのカップ部分の生産技術として実用化されている。2024年には経済産業省の人材育成プログラムを通じて用途開発を進め、doubletとの作品も発表した。COCOON BODYは、突然登場した実験ではなく、下着からファッションへ適用範囲を広げる流れの中にある。
2026年5月には、京都市南区に研究開発拠点「Melooopラボ」を開設。公式資料は、小型設備でCW-Xの高校生向けスポーツブラ用カップの量産展開を開始したと説明する。一方、今回参照した資料には、COCOON BODYの販売価格、発売日、量産規模、製造コストは示されていない。カップの量産実績を、衣服全体の大量生産が成立した証拠として扱うべきではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。日本企業の競争力は、ブランド名や販売網に加え、長く蓄積した人体研究、素材の扱い方、成形のノウハウにもある。ワコールの技術がISSEY MIYAKEの造形と結び付いたことは、ある企業の内部で育った知識を、別の市場の価値へ変える可能性を示す。
2026年6月にはBASFとの自動車内装向けアームレストのコンセプトモデルも発表された。これも量産採用の実績とは区別すべきだが、技術の価値を下着だけで評価しない方向は読み取れる。用途ごとに要求される品質を確かめ、社外の材料・デザインの知識と組み合わせることが、新しい事業領域への足場になり得る。
経営として次に確かめたいのは、見た目の新しさに加え、着心地、洗濯への耐久性、サイズ展開、成形時間、設備の稼働率、歩留まり、回収の仕組みだ。試作で成立することと、顧客が買える価格・供給量で事業が成立することは別の課題になる。
COCOON BODYを「縫製工場が不要になる未来」と読むのは早い。むしろ、製造方法そのものを商品価値の源泉にできるかという問いが重要だ。素材・身体・デザイン・生産の担当者が共に試作し、技術の可能性と事業の条件をつなぐ。その取り組みが、日本のものづくりを次のファッションの競争力へ変える鍵になるのではないか。
ワコール/COCOON BODY発表・2026年10月7日
https://www.wacoal.jp/news/newsrelease/202610/release193450.html
ISSEY MIYAKE/2027年春夏コレクション・COCOON BODY技術説明
https://www.isseymiyake.com/en/blogs/news/18826
ワコール/Melooop実用化・doublet協業・2025年1月29日
https://www.wacoal.jp/news/newsrelease/202501/release183614.html
ワコール/Melooopラボ開設・2026年5月27日
https://www.wacoalholdings.jp/news/pdf.html?dn=20260527549567
BASF/ワコールとの自動車用途コンセプト・2026年6月17日
https://www.basf.com/jp/ja/media/news-releases/asia-pacific/2026/06/jp-26-69
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

第3四半期の明暗を、ラグジュアリー対ビューティーの単純な対立で捉えない。ブランドを持つ事業と、ブランドを編集して届ける売場の違いから、成長の条件を考える。
LVMHが10月12日に発表した2026年第3四半期の売上高は185億400万ユーロ。比較可能な範囲と為替で見るオーガニック成長率は1%だった。ファッション・レザーグッズは82億4,500万ユーロでオーガニック5%減、セレクティブ・リテーリングは40億7,000万ユーロで同8%増。8%はセフォラ単独の伸びではない。
同四半期のワイン・スピリッツは同6%増、香水・化粧品は同1%増、時計・宝飾品は同6%増。香水・化粧品のブランド事業と、セフォラを含む小売事業は別の部門だ。1〜9月累計のグループ売上高571億4,800万ユーロは報告ベース2%減、オーガニックでは2%増。対象期間と計算方法で見え方が変わる。
公式説明資料の地域別オーガニック成長率は、7〜9月に米国5%増、日本6%増、欧州4%増、アジア〈日本を除く〉5%減。最後の数値は中国単独ではない。1〜9月の売上構成は米国25%、日本8%、日本を除くアジア27%、フランス8%、フランスを除く欧州18%、その他14%だった。構成比と成長率も区別する必要がある。
LVMHはセフォラの成長要因として、既存ブランド、RhodeやC-Beautyの独占投入、店舗拡張を説明する。セフォラ自身も8月4日、OLIVE YOUNGが選ぶ韓国の19ブランドを8月20日から米国500店超とECに導入すると発表。国を越えて有望な商品を発見し、顧客へ届ける仕組みを広げている。
9月2日の別の公式発表では、米国で9月19日からTikTok Shopの試行を始めると告知した。毎月の商品投入に、クリエイターのコンテンツとLIVEでの質問対応を組み合わせる設計だ。これらの個別施策が第3四半期の成長に何ポイント寄与したかは開示されておらず、成長の原因を一つに絞ることはできない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。ブランド事業は、自社の世界観と商品に対して、顧客が価格以上の価値を認め続けることが重要になる。小売事業は、複数ブランドの中から今の顧客に合うものを選び、試し、比較できる場をつくる。どちらも商品を扱うが、顧客に提供する価値の構造は同じではない。
複数ブランドを扱う売場には、関心の移動に合わせて提案を組み替えられる余地がある。一つのブランドへの需要が鈍っても、別のブランドやカテゴリーとの出会いを用意できる。ただし、品揃えを増やすほど在庫、教育、売場の複雑さも増す。選択肢の多さだけで勝てるという話ではなく、選びやすさを保てるかが経営課題になる。
美容には、使い切った後の補充や、新しい色・用途を試す購入機会を設計しやすい商品がある。高額な服やバッグとは購入の間隔や心理的な負担が違う可能性がある。しかし、この決算だけで顧客がバッグの予算を化粧品へ移したと証明することはできない。両部門の増減をそのまま消費者の乗り換えとして説明するのは避けたい。
アパレル企業への示唆は、価格を下げて購入頻度を増やすことに限らない。新しい着方、季節ごとの手入れ、用途に合う買い足しを、顧客の生活に沿って提案できるか。来店や動画視聴が、一度の販売で終わらず、次の相談につながるか。ブランドへの憧れに加え、利用を続ける理由をつくることが考えられる。
独占商品を投入して来店が増えても、仕入れや販促、スタッフ教育の費用が増えれば、収益が同じように改善するとは限らない。新規顧客の継続購入、店舗とECを横断した利益、在庫の回転を合わせて見たい。本記事で参照した四半期売上資料から、セフォラ単独の四半期利益率や施策別採算までは判断できない。
5%減と8%増が示すのは、市場を一つの大きな主語で語ることの難しさだ。強いブランドを育てる力と、変化する顧客へ適切な商品を届ける力。その両方をどのように組み合わせるかが、ファッション企業にとっての問いになる。
LVMH/2026年第3四半期売上・10月12日公式発表
https://www.lvmh.com/en/publications/continued-growth-in-the-third-quarter-of-2026
LVMH/2026年第3四半期説明資料・地域別成長率と構成比
https://lvmh-com.cdn.prismic.io/lvmh-com/XaBcZxt5bk9LlGo__LVMHQ32026presentation.pdf
SEPHORA/OLIVE YOUNGの19ブランド導入・8月4日公式発表
https://newsroom.sephora.com/sephora-introduces-olive-young-curated-k-beauty-to-u-s-consumers-beginning-august-20/
SEPHORA/米国TikTok Shop試行・9月2日公式発表
https://newsroom.sephora.com/sephora-launches-on-tiktok-shop-bringing-a-new-beauty-shopping-experience-to-u-s-customers-with-its-sephora-drop-shop/
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

英国のFrasers Groupがバーバリーに対する金融商品のポジションを拡大した。注目すべきは比率の大きさだけではない。売り場を持つ企業がブランドの資本にも接近するとき、商流と経営の関係はどう変わるのか。
バーバリーが2026年10月12日に公表した大量保有に関するTR-1では、Frasers Groupの金融商品を通じたポジションは7.420529%。前回の6.321192%から増加した。基準となる到達日は10月8日、バーバリーへの通知日は11日である。
開示の内訳を読むと、株式に直接・間接に付く議決権の比率は0.000000%で、7.420529%はすべて金融商品によるものだった。対象は売建プット・オプションで、2026年10月満期が500万株相当、2027年3月満期が1,200万株相当、同年9月満期が1,000万株相当。合計は2,700万株相当となる。
プットの売り手は、条件が満たされた場合に株式を取得する義務を負い得る立場にある。ただし、今回の開示だけでは個別契約の行使価格や詳細条件までは分からない。現在7.42%の現物株を所有し、その議決権を行使できるという意味ではない。バーバリーを買収した、経営支配を獲得した、と読むこともできない。
比較すると違いが明確になる。Frasersの9月1日の開示では、ヒューゴ ボスの直接保有株は3,305万4,959株、株式資本・議決権の47.89%に達していた。50%超への拡大を目指す意向も示したが、実現の時期や価格、達成そのものは確定していないと説明している。
一方、8月13日に発表したハーヴェイ・ニコルズの取得は事業の買収である。英国6店舗、オンライン事業、在庫などが対象に含まれ、Frasersは店舗網、組織、運営モデル、コストの見直しが必要だとした。バーバリーへの金融商品、ヒューゴ ボスの直接株、百貨店事業の取得を、同じ「出資」という言葉でまとめると、実際に得られる権利と負う責任を見誤る。
以下はFASHION SHIFTの分析である。ブランドにとって小売企業は、商品を買い付け、消費者に届ける取引先だった。しかし、販売網と顧客接点を持つ小売が資本関係も築くと、関係は商品の卸売だけでは説明できなくなる。店舗でどんな商品が支持されるか、どの地域で需要があるかという知識を、投資判断や事業再建にも使える可能性がある。
ブランド側にも利点は考えられる。新市場の売り場、運営基盤、販促の経験を持つ相手と連携すれば、独力で店舗を増やす負担を抑えられるかもしれない。ただし、今回のバーバリーの開示は、そのような具体的協業や販売条件の変更を示していない。資本上の接近が、そのまま商品展開の協力につながると断定することはできない。
経営者が確認したいのは、金融商品の比率、現物株の議決権、取締役会への関与、事業の取得を分けたうえで、何が実際に変わるかである。販売先への依存が高いブランドでは、取引条件だけでなく、その小売の資本政策も経営上の観察対象になる。逆に小売側は、ブランドに近づけば必ず売り場の魅力が増す、とは限らない。
買収後は、在庫を処分し、店舗を改装し、人材を育て、システムを統合する費用が発生し得る。価格訴求に強い小売の運営方法を高級ブランドへそのまま持ち込むと、ブランド価値との摩擦が生じる可能性もある。取得した資産の規模より、顧客体験と利益を持続的に改善できるかが重要だ。
今回の動きが示すのは、小売がすでにバーバリーを支配したという事実ではない。ブランドと売り場の間に、金融商品、株式、事業買収という複数の関係が積み重なっていることだ。業界再編を読むには、比率の見出しだけでなく、権利の中身と、その後の収益改善を追う必要がある。
Burberry/TR-1大量保有開示・2026年10月12日(RNS配信)
https://www.investegate.co.uk/announcement/rns/burberry-group--brby/holding-s-in-company/9818629
Frasers Group/HUGO BOSSへの投資更新・2026年9月1日(RNS配信)
https://www.investegate.co.uk/announcement/rns/frasers-group--fras/update-on-investment-in-hugo-boss/9747153
Frasers Group/Harvey Nichols取得・2026年8月13日(RNS配信)
https://www.investegate.co.uk/announcement/rns/frasers-group--fras/frasers-group-acquisition-of-harvey-nichols/9720947
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

大手メゾンで知られるキム・ジョーンズが、自身の名を冠したブランドを再始動する。日本での衣料品生産、自社ECでの販売開始、香港への出店計画をつなぐ戦略から、知名度を持続的な事業へ変える条件を考える。
キム・ジョーンズによる同名ブランド「KIM JONES」の再始動が、2026年10月12日に発表された。WWDJAPAN、Wallpaper*、FAD Magazineの発表内容に基づく報道では、最初のコレクションは2027年秋冬。2027年半ばから自社サイトkimjones.comで販売し、その後、同年10月に香港のCentral Yardsへ最初の店舗を開く計画だ。
今回のニュースは、すでに商品が販売され、事業として成功したというものではない。今後の発売・出店計画であり、実際の売上、利益、購入者数は確認できない。報道ではアジアでの追加出店や選定した販売パートナーとの展開も予定されており、ECだけに販売を限定し続ける方針と理解するのも正確ではない。
発表を伝えた各媒体によると、衣料品は主に日本、レザーグッズはイタリアで生産する。Wallpaper*はロンドンのスタジオでデザインすると報じた。品質やクラフツマンシップを重視する姿勢が示されているが、具体的な商品価格、工場名、生産数量、投資額は今回の参照資料では明らかでない。
WWDJAPANによれば、ジョーンズは2003年に自身のメンズブランドを始め、その後ダンヒル、ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディなどに携わった。大企業での経験を経て自分の名で再び事業を構築する点が、今回の再始動の背景にある。一方、デザイナーとしての評価と、新会社の販売・収益の実績は別の指標である。
以下はFASHION SHIFTの分析である。ECから販売を始める利点は、実店舗を多数構える前に、誰がどの商品を買うかを自社で把握できる点にある。購入履歴、問い合わせ、返品理由を蓄積できれば、次の企画や販売方法に顧客の反応を戻しやすい。ブランドの世界観も、外部の売り場の編集だけに任せず、自ら伝えられる。
ただし、ECは店舗の固定費を回避すれば成立する事業ではない。広告やコンテンツの制作、決済、物流、返品への対応には費用がかかる。服では、サイズ感、生地の手触り、着たときの印象を画面越しにどう説明するかも課題になる。デザイナーの名前を知っている人が多くても、その全員が新ブランドの価格と商品に納得して購入するとは限らない。
有名デザイナーの独立には、最初から注目を集めやすいという強みがある。しかし、それは初回購入を保証せず、さらに継続購入を保証しない。どの顧客に、どんな場面で着る服を、どの価格で提供するのか。その設計を明確にして初めて、知名度が事業上の資産として働く。
日本での生産も、品質を伝える要素にはなり得るが、それだけで収益性が高まるわけではない。生産ロット、納期、品質管理、追加発注への対応、為替などが在庫と資金繰りに影響する。企画の自由度を持つ独立ブランドであっても、素材や工場の条件まで自由になるとは限らない。何を少量で試し、何を継続して供給するかという判断が必要になる。
最初の実店舗には、商品を実際に触り、着用し、接客を受ける拠点という役割が考えられる。ECで得た関心をリアルな体験へつなぎ、来店後もオンラインで購入してもらう関係ができれば、売り場を一つ開く以上の意味を持ち得る。
一方、出店すれば賃料、人材、設備、店頭在庫などへの投資が必要になる。店舗の話題性と、そこで生まれる粗利益や継続顧客を分けて評価しなければならない。香港での出店が成功するという実績は、まだ存在しない。
今回の計画で注目したいのは、著名な名前だけを前面に出すのではなく、製造、直接販売、リアルな拠点を組み合わせようとしている点だ。独立の成否はデザイナーの才能だけでなく、その価値を顧客へ届け、在庫と資金を回し続ける経営の仕組みによって決まる。2027年の発売後は、その実行力を確認していく必要がある。
WWDJAPAN/キム・ジョーンズのブランド再始動計画・2026年10月12日
https://www.wwdjapan.com/articles/2524673
Wallpaper*/発表内容・制作拠点・EC開始予定・2026年10月12日
https://www.wallpaper.com/fashion-beauty/kim-jones-launches-eponymous-label
FAD Magazine/発表内容・販売と出店の予定・2026年10月12日
https://fadmagazine.com/2026/10/12/kim-jones-launches-eponymous-fashion-label/
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上海で新たな店舗を展開するスウェーデンのアワー レガシー。中国市場の不透明さだけでは、個々のブランドの成長は説明できない。公式店舗情報とブランド側が報道で示した数値を分け、商品と売り場の組み合わせを考える。
アワー レガシーは公式サイトで、上海・永嘉路689号のVilla 1に新店が営業していることを案内している。営業時間は毎日11〜20時。10月13日時点の公式情報で開業済みを確認できるが、このページ自体には具体的な開業日の記載はない。
店舗の設計はクリストファー・ニインと長年のパートナーであるProfanによる。スペイン風のヴィラに工業的な要素を組み合わせ、1階はミュージアムショップ、2階は建設現場を思わせる構成としている。コンクリート、スチール、鏡、再生木材などを使い、建物が持つ家庭的な雰囲気に異なる素材の表情を加えた。
10月11日のVogueは、ブランド側の説明として、中国事業が近年年約25%成長し、世界売上の約13%を占めると報道。上海店は300㎡超で、Dongliangが運営を担う。参考価格はパンツ約300ユーロ、革ジャケット約1,700ユーロと紹介した。これらは監査済みの地域別決算や中国の店頭価格を示すものではない。
公式ブランド紹介によると、アワー レガシーは2005年に創業したストックホルム拠点の独立したファッションブランドである。独自に開発した素材を特徴的な形に使い、メンズ・ウィメンズの既製服を展開する。素材の再活用や、見慣れた服の形を作り直すことも、その表現に位置付けている。
大手ラグジュアリーとの比較では資本関係にも注意が必要だ。2024年には、LVMH傘下の投資ファンドLVMH Luxury Venturesによる少数株式取得が報じられた。大手グループのメゾンと同じ立場とみなすことも、大手資本と完全に無関係なブランドと描くことも避ける必要がある。
以下はFASHION SHIFTの分析である。市場全体が伸び悩む局面でも、すべての企業が同じ方向へ動くわけではない。もともとの規模、販売先、顧客層、価格、供給する商品が異なれば、同じ地域で業績の差が生まれる。アワー レガシーの成長を、中国のラグジュアリー市場全体が回復した証拠として扱うことはできない。
大手グループの四半期成長率と、今回報道された「近年」のブランド側の成長説明も、そのまま横並びにできない。期間と集計対象が違うからだ。急成長の背景には小さい売上規模からの拡大もあり得る。経営者が見たいのは、率だけでなく、売上の規模、利益、既存顧客の継続購入、新規出店の寄与を分けた内容である。今回の参照資料では、これらすべてを確認できるわけではない。
公式情報から確認できるのは、独自素材や再構成したシルエットという商品表現と、建物・素材を組み合わせた店舗表現の両方に工夫があることだ。服の特徴が売り場の空間にもつながれば、購入前からブランドらしさを体験してもらえる可能性がある。
ただし、その空間設計が中国の売上成長を引き起こしたと断定することはできない。新店の売上や顧客獲得への貢献も、今後検証する事項である。運営パートナーとの協業も、地域の商習慣や店舗運営を補う仕組みになり得るが、具体的な役割分担や収益配分が公開されていなければ、成功要因として確定はできない。
ブランド責任者にとっての示唆は、「中国では売れない」と市場名だけで結論を出さず、自社の商品が誰のどんな需要に合うかを見直すことにある。価格を下げるか上げるかという判断の前に、顧客が他のブランドと比べて何を評価しているのかを把握したい。
今後の店舗拡大では、出店数より、再来店、継続購入、販売価格を維持した消化、店舗とECをまたぐ顧客の動きなどが重要な検証項目になる。これは同社が採用していると確認された評価制度ではなく、FASHION SHIFTが提案する観察の視点だ。
市場の逆風は経営の条件であって、すべてのブランドに同じ結果をもたらす命令ではない。商品と顧客の関係を丁寧に作り、拡大に伴う費用と収益を管理する。その積み重ねが成長に結び付くかを、今後の実績から見ていきたい。
OUR LEGACY/上海店の公式紹介・営業情報
https://www.ourlegacy.com/our-legacy-shanghai
OUR LEGACY/公式店舗一覧
https://www.ourlegacy.com/stores
OUR LEGACY/公式ブランド紹介
https://www.ourlegacy.com/info
Vogue/中国事業・上海店のブランドインタビュー・2026年10月11日(数値はブランド側の説明)
https://www.vogue.com/article/our-legacy-ceo-talks-betting-on-china-and-its-biggest-store-yet
WWDJAPAN/LVMH Luxury Venturesの少数株式取得
https://www.wwdjapan.com/articles/1963173
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手が届く価格で、選ぶ理由をつくるブランドが成長している。ただし、増収という結果だけで高級品の顧客が移ったとは言えない。価格帯を超えて問われる「支払う価値」を考える。
10月12日の英フィナンシャル・タイムズは、ユニクロやZARAなど、ラグジュアリーより手が届きやすい価格のファッションブランドが注目されていると論じた。ただし、これは市場の読み解きであり、特定の高級ブランドの顧客が何人移ったかを示す購買追跡調査ではない。本記事でも、企業業績と顧客移動の仮説を分けて扱う。
ファーストリテイリングが10月8日に発表した2026年8月期の連結売上収益は3兆9,633億円、前年比16.6%増。事業利益は7,184億円、30.4%増だった。これはユニクロだけの数字ではなく、GUなども含むグループの実績である。また、事業利益を営業利益と同じ数値として扱わない。
ZARAを展開するインディテックスの2026年度上期は、7月31日までの6カ月で売上高197億5,500万ユーロ、前年比7.6%増。売上総利益率は58.7%となり、前年同期の58.3%から改善した。グループの増収であり、ZARA単独の売上成長率ではない。両社の決算期間と通貨も異なるため、数字をそのまま優劣比較することは避けたい。
価格の一例を公式サイトで確認すると、ユニクロの10月16日発売予定のUNIQLO and JW ANDERSONでは、フリースショートブルゾンが4,990円と案内されている。ZARAのOriginsコレクションでは、ウール100%のレギュラーフィットスーツブレザーが2万5,990円で掲載されていた。10月13日の確認時点の表示価格であり、前者は発売前の商品、後者の素材説明は裏地を除く。商品の種類が異なるため、品質や価格の直接比較には使えない。
この幅は、ユニクロとZARAを一律の「中価格帯」とすることにも注意を促す。価格帯の呼び方は、地域、商品カテゴリー、比較対象によって変わる。確認できるのは、同じブランドの中でも、用途や素材、デザインに応じて異なる買い方が提案されていることだ。
背景として、マッキンゼーとThe Business of Fashionの2025年1月の分析は、2019〜2023年のパーソナル・ラグジュアリー市場の成長の8割超が値上げによるものだったとする。2026年8月公表の顧客調査も、米国・中国の2,000人超を対象に、商品に加え感情的なつながりや体験が重視されると分析する。ただし、両資料はユニクロやZARAへの顧客移動を直接測ったものではない。
企業側の説明では、ユニクロは機能性商品や新しいシルエット、商品・売場・情報発信の連動を成長の要素に挙げる。インディテックスは商品提案、接客、店舗とオンラインの統合を重視する。こうした戦略は、低価格だけで支持を得ているという解釈を狭める材料になるが、各施策の売上寄与を分離した数値ではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。ラグジュアリーの値上げを受け、顧客が別の価格帯を選ぶ可能性はある。しかし、ある日は高級バッグを買い、日常のシャツはユニクロを選ぶ人も考えられる。購入回数を減らす、買うカテゴリーを変える、中古を選ぶ、購入を先送りするなど、反応は一つではない。
したがって、手が届きやすいブランドの増収を、そのまま「高級ブランド離れ」の証拠にすることはできない。新規出店や海外進出によって顧客が増えている可能性もある。元の購入ブランド、購入頻度、使った金額、用途まで追えて初めて、移動の実態が見えてくる。
経営側が参考にしたいのは、価格差だけでなく、顧客が支払う理由の設計である。通勤で扱いやすい、着用感が良い、今のシルエットを取り入れられる、手持ちの服と組み合わせやすい。その用途が商品と売場で伝われば、単なる代替品を超えた選択肢になり得る。
一方、安さだけで顧客を集めれば、より安い商品が登場した時に関係は切れやすい。素材や縫製への投資、試着時の説明、サイズの選びやすさ、購入後の満足を一緒に設計したい。価格を下げる前に、今の価格で何が得られるかを顧客が理解できているかを確かめる必要がある。
ラグジュアリー側も、価格を維持するか下げるかだけで議論を終えるべきではない。顧客が以前より高い支払いを求められた時、商品の独自性、サービス、長く使う満足がその差を説明できるかが問われる。逆に手が届きやすいブランドには、価格を超える信頼を積み重ねる余地がある。
高級品と日常着を対立させるより、用途ごとに何が選ばれているかを見る。顧客の財布が厳しくなった時ほど、企業が語りたい価値と、顧客が実際に感じる価値のずれは大きな経営課題になる。今の成長は、顧客が完全に移ったという結論ではなく、そのずれを測り直すきっかけとして受け止めたい。
ファーストリテイリング/2026年8月期決算概要・2026年10月8日
https://www.fastretailing.com/eng/ir/news/2610081800.html
インディテックス/2026年度上期決算・スペイン証券市場委員会提出資料
https://www.cnmv.es/webservices/verdocumento/ver?t=%7Bfd6314ae-a7a5-44fe-9edb-5cafcb617c95%7D
ユニクロ/UNIQLO and JW ANDERSON公式商品・発売予定価格
https://www.uniqlo.com/jp/ja/women/special-collaboration/uniqlo-and-jw-anderson?sort=1
ZARA/ウール100%レギュラーフィットスーツブレザー・公式商品情報
https://www.zara.com/jp/ja/%E3%82%A6%E3%83%BC%E3%83%AB100-%E3%83%AC%E3%82%AD%E3%82%99%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%84%E3%83%95%E3%82%99%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%82%99%E3%83%BC-p01223554.html
Financial Times/中価格帯ブランド再評価の論考・2026年10月12日
https://www.ft.com/content/ac617b3d-4506-4c26-aff8-64ab14a66f4f
McKinsey / The Business of Fashion/State of Luxury 2025・過去の成長に占める値上げの寄与
https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/state-of-luxury-2025
McKinsey/State of Luxury 2026・米国中国顧客調査・2026年8月6日日本語版
https://www.mckinsey.com/jp/our-insights/state-of-luxury
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

仕入れの判断材料は商品価格だけではなくなった。独立系小売の取引データから、輸送・関税・在庫・資金繰りを一緒に考える仕入れ戦略を読み解く。
独立系小売とブランドを結ぶ卸売マーケットプレイスFaireは9月25日、関税をめぐる環境の変化と取引動向を分析した。2025年の国ごとに異なる追加関税の導入後、米国小売による米国登録ブランドへの支出割合は60日で約1.1ポイント上昇し、その後の累積では約2ポイント上昇したという。
この統計で使う国は、ブランドの登録国であり、商品の製造国ではない。「米国ブランドへの支出が増えた」ことを、「米国内で製造した商品の仕入れが増えた」と言い換えることはできない。また、Faireの取引データから見た傾向であり、米国小売市場全体の統計でもない。同社も、政策変更と取引変化の関連を示すもので、因果関係の証明ではないと説明している。
同じ分析では、多くの国へ一律に課される関税の場合、仕入れ先の選択に目立つ変化は見られなかったとされる。関税が利益を圧迫しても、仕入れ先同士の相対的な価格差が変わらなければ、移す先を見つけにくい。負担が増えることと、調達先が変わることは別の問題だ。
10月12日のVogue Businessは、米国のブティックShoppe CozetteがデンマークのSkall Studioからの2026年1月の入荷で1,700ドルの関税請求に直面した事例を報じた。店側との協議を受け、ブランド側が当該費用を負担し、関税支払いを売り手が扱うDDP条件へ変更したという。個別の取材事例であり、全小売に同じ条件が適用されるわけではない。
Faireの返品制度にも条件がある。新しいブランドへの初回注文には無料返品が用意される一方、追加注文は原則対象外。元の配送費や輸入費用は返金されない。試験導入の在庫負担を減らせても、輸入にかかる費用すべてをなくす制度ではない。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。仕入れ担当者が比較したいのは、商品代に輸送費、関税、通関費用などを加えた着荷までの総額である。見積もりの単価が低くても、後から請求が届けば、想定した粗利益は残らない。DDPは責任の所在を整理する助けになるが、費用が見積もりに含まれる場合もあり、関税が消えるわけではない。
価格と同時に、支払いの時点を確認したい。先払いで入荷を待つのか、販売開始後に支払えるのか。追加発注時の価格が固定されているのか。売れた商品を補充できても、現金の回収より支払いが先行すれば、成長が資金不足を招く可能性がある。
小さく仕入れ、売れ行きを見て追加する方法の利点は、需要を外した時の在庫を抑え、判断を修正できることにある。価格や政策が変わる環境では、長期間の発注を一度に固定しないこと自体が選択肢になる。売場の反応を毎週確認できれば、追加発注、品揃え変更、予算配分を近い時点の情報で考えられる。
ただし、小ロットには単価や配送費が高くなる可能性がある。補充したくてもメーカーの生産枠がなければ、売れる期間を逃す。短サイクルを実現するには、小さい発注書だけでなく、補充リードタイム、最低発注量、輸送条件、供給先との合意が必要だ。
小規模な企業は承認段階が少なく、顧客の反応を仕入れへ戻しやすい場合がある。一方、大企業には購買量を使った条件交渉、物流への投資、複数の供給先や市場への分散という強みがある。どちらが常に有利という話ではなく、何を早く変えられ、何を規模で吸収できるかを見たい。
経営の評価指標も、仕入れ金額や売上だけでは足りない。着荷原価を踏まえた粗利益、在庫週数、販売消化率、補充までの日数、現金回収と支払いの間隔を並べる。そのうえで費用上昇や納期遅延のシナリオを試す。小ロット・短サイクルは万能策ではないが、判断を修正する時間を確保する経営手段になり得る。
Faire/Independent Retail Pulse: Tariff Data and Insights Tracker・2026年9月25日
https://www.faire.com/news/faire-independent-retail-tariff-tracker
Faire/返品の公式案内
https://www.faire.com/support/articles/46751621809563
Faire/小売向けヘルプ・返品条件と輸入費用
https://www.faire.com/support
Vogue Business/How Tariffs Are Testing Indie Retail・2026年10月12日
https://www.vogue.com/article/how-tariffs-are-testing-indie-retail
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

H&Mはオンライン上の攻撃に関する主張を調査し、現時点でデータ環境への侵害の兆候は確認していないと回答。未確認の被害を断定せず、顧客情報を預かる企業の管理課題を考える。
10月12日のTheIndustry.fashionは、英タイムズが伝えたH&M Groupの広報回答を紹介し、オンライン上の潜在的なサイバーセキュリティ事案の主張を同社が調査していると報じた。同社は、その時点でデータ環境が侵害された兆候は見つかっていないと説明し、調査中のため追加の詳細は示していない。
さらにスウェーデンのEFNが掲載した10月12日更新のNyhetsbyrån Direktの記事では、H&Mの広報部門は現時点で侵入の兆候はないと回答し、同社IT部門の調査でもデータ侵害の兆候は見つかっていないと説明している。これは報道機関が取得した会社回答に基づく情報であり、攻撃者の主張を会社が認めたという意味ではない。本記事は10月13日の確認時点で参照できた10月12日の回答を基礎としている。
攻撃の成功、情報漏えいの有無、対象となる顧客の人数、被害額、侵入方法は、今回の確認資料では確定できない。報道に登場する犯罪集団名についても、H&Mへの侵害主体として確認された事実とは区別する。他社の事件や、犯罪集団が過去に用いた方法を、そのまま今回のH&Mの事案へ当てはめることはできない。
米国のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャー庁CISAは、一般的な企業向け対策として、フィッシングに強い多要素認証の導入や、巧妙なソーシャルエンジニアリングへの教育を推奨している。これはH&Mの実装状況や侵入経路を示す資料ではなく、情報管理を考えるための一般的な指針である。
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。ファッション企業が守るべき顧客情報は、商品を注文するECサイトだけに集まるとは限らない。会員管理、メール配信、アプリ通知、接客履歴、問い合わせ対応など、購買の前後で複数のサービスや担当者が情報に触れる。外部サービスへ連携した後も、自社の顧客との関係は続いている。
そのため、「ECは正常に動いている」という確認だけで、情報管理全体を判断するのは難しい。どの情報が、どこに保存され、誰が閲覧や書き出しをできるのか。会社の外へ渡した情報を含めて把握する必要がある。これは今回のH&Mに不足があるという指摘ではなく、同様の主張が出た時に自社で答えられるかという問いである。
施策を早く回すために、担当者や委託先へ広い権限を与えることはある。ただ、その権限が退職、異動、契約終了後も残るなら、便利さと引き換えに接点が増え続ける。閲覧、配信、データ出力、設定変更を分け、担当する業務に必要な範囲へ絞る考え方が重要になる。
認証の強化とともに、権限変更や大量のデータ出力が記録され、必要な時に確認できるかも点検したい。問い合わせ窓口でパスワード変更を依頼された際には、電話口の説明だけを信用せず、あらかじめ定めた経路で本人確認をする。技術設定と業務手順の両方が、情報を守る土台になる。
攻撃を受けたという主張が出た時、最初に必要なのは、断定を急ぐことではなく、確認できた事実と不明な点を整理することだ。ログを確認する担当、外部サービスへの照会先、経営への報告経路、顧客への説明を判断する責任者を決めておきたい。技術部門だけでなく、EC、CRM、法務、広報が同じ状況を共有できる準備が求められる。
顧客への説明も、「何も起きていない」と「調査中でまだ分からない」を混同してはいけない。確認した範囲、調査が続く項目、次に情報を更新する条件を明確にすることが、信頼を守る対応につながる。
ECやCRMは、購入履歴を使って適切な商品を案内し、継続的な関係をつくる仕組みだ。その価値は、預かった情報を適切に扱うことが前提になる。販促の効果と情報管理を別々の部門の問題として切り離さず、新しいサービスを導入する段階から、保存する情報、利用目的、権限、契約終了時の処理を確認したい。
今回のH&Mについて、未確認の被害を大きく語る必要はない。経営側が受け取るべき問いは、自社で同じ主張が出た時、顧客情報の所在と管理責任を説明できるかである。売る仕組みを広げるほど、その裏側を見渡す仕組みも育てていく必要がある。
EFN/Nyhetsbyrån Direkt・H&M広報部門の回答・2026年10月12日更新
https://efn.se/handm-tillbakavisar-uppgifter-om-hackerattack
TheIndustry.fashion/H&M広報担当者の回答を含む報道・2026年10月12日
https://www.theindustry.fashion/hm-investigates-claims-of-potential-cyberattack/
The Times/H&Mによる主張の調査に関する報道・2026年10月12日
https://www.thetimes.com/business/companies-markets/article/h-and-m-xbnlq60g7
CISA/企業向け多要素認証の指針
https://www.cisa.gov/audiences/small-and-medium-businesses/secure-your-business/require-multifactor-authentication
CISA/StopRansomware Guide・認証とソーシャルエンジニアリング対策
https://www.cisa.gov/stopransomware/ransomware-guide
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

対話型検索、AIスタイリング、GoogleのUCP対応。Gapの具体策から、顧客とAIの両方に商品の価値を伝えるファッションECの経営課題を読み解く。
Gap Inc.は2026年10月5日、1996年のGap Online開始から30年の節目に、AIによる新たな購買体験を発表した。サンフランシスコのTech Weekで取り組みを示したのは、最高技術責任者〈CTO〉のSven Gerjets。検索窓や絞り込みに、意図を言葉で伝える買い物を加える構想だ。従来型ECを全面的に置き換える発表ではない。
Old NavyとBanana Republicでは、自然な言葉で欲しいものを説明し、関連する商品提案を受ける対話型の商品発見機能を紹介。GapブランドはAlta Dailyとの連携で、好みや着想に応じたスタイリングと、Altaのアバター上でGap商品を試す体験を打ち出した。Daydreamでも、日常の言葉を使ってGap Inc.の商品を発見できるとしている。
検索、組み合わせ、見つける場所をそれぞれ広げる施策だ。ただし、この発表には日本を含む全地域での利用開始日や、対象者全員への提供条件、機能別の売上・購入率改善の実績は記載されていない。アバターによる試着表現も、実物のサイズ適合を保証するものと解釈してはいけない。
これに先立つ3月24日の公式発表では、Bold MetricsのAgent Sizing Protocolによるサイズ提案と、GoogleのUniversal Commerce Protocol〈UCP〉への対応を説明している。UCPは、AIと小売の間で購買の処理をつなぐ共通の仕組み。GapはGoogle検索のAI ModeやGeminiアプリの利用中に購入できる体験を目指すとした。将来形の説明を、全ブランド・全地域で実装完了という実績に読み替えることはできない。
Googleの10月2日更新の公式導入資料では、Merchant CenterのUCP統合ハブは米国で段階的に提供され、対象は米国内販売の商品。一部の事業者が参加し、技術対応と商品ごとの購入対象設定が必要とされる。日本語の説明ページがあることと、日本で同じ購入機能が提供されていることは別だ。本記事では日本でのGapのAI内決済提供を確認したとは書かない。
また、10月9日更新のGoogle公式資料では、AI上のカートを事業者のサイトへ移すCart APIと、Google内で決済するNative checkoutを区別している。「AI経由の購買」は一つの形ではなく、自社ECへ戻って購入する経路もある。連携という言葉だけで、注文をどこが受けるかを判断しないことが重要になる。
ここからはFASHION SHIFTの分析だ。検索型ECでは顧客が商品名やカテゴリーを選び、一覧から比較する。対話型ECでは、「出張に持っていけて、しわが気になりにくい服」のように、用途を入口にできる。これは説明のための仮例であり、Gapでその質問への推薦結果を検証したものではない。
この変化が広がれば、SEOで検索結果へ出ることに加え、AIが相談内容と商品を結び付けるための情報が重要になる可能性がある。ただし、各AIサービスの推薦基準や順位付けは同一ではなく、今回の発表から内部の仕組みは分からない。情報を整えれば必ず推薦される、広告費が不要になる、といった保証はない。
日本の企業がまず取り組めるのは、説明文を増やすことより、情報の意味を揃えることだ。素材の組成、厚さ、伸縮性、透け感、寸法、シルエット、手入れ、想定する用途を整理する。画像の雰囲気や「上品」「万能」といったコピーだけでは、顧客の具体的な条件に答えにくい。
さらに、同じ商品でも色とサイズを識別できる商品ID、最新の価格、在庫、配送、返品条件が必要になる。商品ページ、外部へ渡すデータ、注文システムで情報が食い違えば、魅力的な提案が購入時の失望につながり得る。商品データの構造化は、項目を機械が扱いやすい形に揃えることであり、検索や接客の品質を支える業務でもある。
着用シーンやサイズ感には主観も含まれる。モデルの身長、着用サイズ、実寸などの確認可能な情報と、スタッフの感想を分けたい。「細く見える」を寸法のような事実に変えたり、AI向けに機能を誇張したりする必要はない。曖昧さを減らすことと、ブランドらしい表現を消すことは別である。
外部サービスへ商品情報を渡す際は、何を更新し、どの売場へ送り、誰が注文と返品に対応するかを先に決める。すべての機能を一度に導入するより、対象商品を絞って発見から購入までを追い、誤った説明、在庫切れの提案、返品理由を確認する方法が考えられる。国内で使える機能と、海外向けの技術対応も分けて判断したい。
評価するのはAI経由のアクセス数だけではない。購入率、粗利益、返品、問い合わせ、継続購入まで見なければ、流入が増えても利益が残るとは限らない。AIは入口を増やす一方、顧客が自社の売場を訪れる前に比較を終える可能性もある。公式の商品情報を正しく届ける力と、ブランドに直接相談したくなる理由の両方が必要になる。
これまでファッションECの成長戦略は、SEO、Web広告、SNS、購入率の改善が中心だった。しかし、AIが商品選びを支援する時代には、消費者に加えて、AIにも商品を正しく理解してもらうことが重要になる。
日本のファッションECでは、画像やキャッチコピーが充実していても、素材、サイズ感、用途、着用シーンの情報を、もっと整理できる余地があるのではないか。今後は商品情報の設計そのものが、マーケティング戦略の一部になると考えている。
一方、ファッションは合理性だけで選ばれるものではない。人間の感性を動かすブランドづくりと、AIに正しく理解される商品情報設計。この二つを両立することが、次世代のファッションECの競争力を左右するのではないか。
Gap Inc./EC開始30年とAI購買体験・2026年10月5日公式発表
https://www.gapinc.com/en-us/articles/2026/10/30-years-after-putting-fashion-online,-gap-inc-loo
Gap Inc./Bold MetricsとGoogle UCP対応・2026年3月24日公式発表
https://www.gapinc.com/ja-jp/articles/2026/03/gap-inc-elevates-online-shopping-with-ai-powered-f
Google/Merchant Center UCP統合ハブ・2026年10月2日更新、提供条件・地域
https://developers.google.com/merchant/ucp/guides/tools/merchant-center/overview
Google/UCP Cart API・2026年10月9日更新、サイトへのカート転送と決済の区別
https://developers.google.com/merchant/ucp/guides/overview/cart-overview
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

コラボレーションを話題づくりで終わらせず、顧客が欲しいと思う商品と、購入へ進む体験をどう結びつけるか。ロエベとオンの2026年秋冬コレクションは、ファッション企業にこの問いを投げかける。一般発売は2026年10月15日。公式に確認できる商品内容と販売計画から、その事業上の論点を読み解く。
オンは2026年10月12日の公式発表で、ロエベとの新たなフットウエア・レディ・トゥ・ウェアのコレクションを紹介した。発売日は10月15日で、両ブランドの一部店舗とオンラインで取り扱う予定だ。発表した日と、消費者が一般に購入できる日を区別する必要がある。
新作シューズはCloudsolo Hiker(クラウドソロ ハイカー)とCloudtilt Cosmic(クラウドティルト コズミック)の2型。前者はハイキング由来の造形にラグ付きアウトソールや金属バックルを組み合わせ、後者はCloudTec Phaseのクッション構造とメッシュを用いる。ウェアには、調節可能なフードなどを備えたパーカ、軽量なリップストップ素材のジャケット、収納できるポンチョ、カーゴパンツなどが含まれる。機能と形の双方で、コラボの接点を具体的な商品へ落とし込んでいる。
ロエベの日本向け公式ページは、10月14日午前10時59分(日本時間)まで事前登録を受け付け、同日に登録者を対象とするオンライン先行販売を実施する計画を案内している。WWD JAPANも同じ日程を報じている。本記事公開日の14日は、その先行販売の実施予定日に当たる。ただし、公開情報の案内を確認したもので、先行販売の実行結果や在庫状況まで確認したわけではない。
先行販売は、登録した顧客に一般発売より早く購入機会を示す仕組みである。登録すれば必ず商品を購入できる、あるいは希望サイズを確保できると保証される仕組みとしては扱わない。
ここからはFASHION SHIFTの分析である。コラボの価値を考えるとき、両社の名前を組み合わせた効果だけを見ると、商品開発の意味を見落とす。アウトドアや移動の場面で使える機能と、街で着たくなるデザインが一つの商品にまとまっているか。顧客が日常のどこで使いたいと思うか。その具体性が、話題を購買意欲へ変える条件になる。
登録者向け先行販売は、興味を持った人に次の行動を用意する施策として読み取れる。告知を見て終わるのではなく、登録し、販売の案内を受け、商品を検討する。広告の露出とECの購入導線を別々に運用せず、つなげて設計するという論点だ。ただし、登録者数、購入率、今回の売上は公表資料から確認できず、この仕組みの成果を断定することはできない。
日本企業が参考にするなら、先行販売という形式の模倣より、その前段階で欲しくなる商品ができているかを問いたい。希少性を強調しても、機能、デザイン、使う場面が顧客に伝わらなければ、継続的な支持につながるとは限らない。
このコラボは、とても良いと思います。オンは今、とても人気があると感じますし、私自身も素直に欲しいと思います。
On公式発表(2026年10月12日)
https://press.on-running.com/loewe-and-on-debut-the-cloudsolo-hiker-with-a-collection-designed-for-artistic-exploration
LOEWE公式:新作と登録者向け先行アクセス
https://www.loewe.com/jpn/ja/pd/stories-collection/loewe-on-running.html
WWD JAPAN:新作2型・日本向け先行販売案内
https://www.wwdjapan.com/articles/2525035
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限定商品を並べるだけでなく、その商品が生まれた世界を店舗で体験できるようにする。メゾン マルジェラが銀座と六本木で展開する2026年秋冬のポップアップは、ファンに会いに来てもらう理由を、商品と空間の両方から設計する取り組みだ。
FASHIONSNAPが2026年10月13日に報じた開催概要によると、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DSMG)の会期は10月8〜25日、エストネーション六本木ヒルズ店は10月9〜23日。記事が公開された13日に始まった催事ではなく、それぞれ8日、9日に開始したポップアップである。
銀座の会場はギンザコマツ西館1階・3階、六本木は六本木ヒルズ ヒルサイド けやき坂コンプレックス2階。両会場とも営業時間は11〜20時と案内されている。DSMGでは、バージンウールのモックネックドレスとフロック加工のデニムジャケットを限定商品として販売する。六本木でも同じ商品が限定販売されるとは確認できていないため、限定商品の説明は銀座に限る。
FASHIONSNAPによれば、両会場は秋冬ショーの空気感を再現し、タペストリー柄を壁や床に使い、同柄を組み合わせた家具を配置している。背景にある2026年秋冬コレクションについて、ブランドの公式ページは2026年4月1日の日付を示し、上海でレディ・トゥ・ウェアとアーティザナルの両コレクションを披露したと説明している。
公式説明の中心にあるのは、古いものに新しい役割を与える再利用・再解釈のアプローチだ。タペストリーの修復や古着の再解釈といった服の発想が、今回の店内でも視覚的な接点になる。会期と銀座の限定商品はFASHIONSNAPの報道に基づく。
ここからはFASHION SHIFTの分析である。ポップアップには、販売する商品数を増やす以外の役割がある。ブランドに関心のある顧客が、その表現をより近くで理解する場になることだ。ショーの映像で見た世界観を空間として歩き、商品を手に取る。その接点は、ECの商品ページだけでは伝えにくい感覚を届けられる。
限定商品の位置づけも、購入を急がせるだけの仕掛けに限定する必要はない。訪れた場所と商品が結びつけば、ファンにとってその一着は、ブランドとの関係を思い出す対象になり得る。今回は空間の設計と銀座の限定商品が同時に示されており、来店の理由を複数用意する構成として捉えられる。
一方、実際の来場者数、売上、ファンの満足度は確認できていない。こうした体験が業績にどれだけ寄与するかは別途検証すべきであり、今回の開催を集客成功や収益改善の実績として紹介することはできない。日本企業にとっての論点は、期間限定という形式よりも、既存のファンが何を見て、何を感じ、何を持ち帰れるかを明確にすることにある。
こうしたエクスクルーシブな取り組みは、とても良いと思います。マルジェラが好きなファンにとって、喜びの大きい機会になるのではないでしょうか。
FASHIONSNAP(2026年10月13日):会期・会場・限定商品
https://www.fashionsnap.com/article/2026-10-13/margiela-popup-26aw/
Maison Margiela公式:2026年秋冬コレクション
https://www.maisonmargiela.com/ja-jp/mm-brand-show-fw26.html
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レスポートサック表参道店のリニューアル1周年イベントは、限定商品、使わなくなったバッグの回収、写真撮影を組み合わせる。周年という企業側の節目を、顧客が足を運ぶ具体的な価値に変えられるかが論点だ。
レスポートサックは、表参道フラッグシップストアのリニューアル1周年イベントを2026年10月14日から18日まで開催する。公式サイトの告知は10月9日付、レスポートサック ジャパンのプレスリリースは10月13日12時59分付だ。告知日と実施期間は異なる。営業時間は11時から20時、所在地は東京都渋谷区神宮前6丁目29-1。
表参道店は2025年10月、バッグとウエアを扱う複合店舗としてリニューアルした。今回の周年施策は、その店舗の現在地を見せる機会でもある。ただし、イベントの来店者数や売上実績は発表資料で確認できず、集客や販売への効果はこれから検証すべきものだ。
限定カプセル「NYC:1974」はブランド創業年をモチーフに、ブルックリンを拠点に活動するノア・プレビッシュのグラフィックを採用する。公式掲載価格ではポーチのRECTANGULAR COSMETICが4,730円、トートのGRAMERCY LG TOTEが15,400円、LULUが7,920円。
ニューヨークと東京のチームが企画開発するLeSportsac AtelierからはLG TOP HANDLE WIDE BAGを30,800円で展開する。ただし公式サイトは、同商品を表参道店と公式オンラインストアで販売すると記載している。「店頭でしか買えない」とまとめるのは正確ではない。ウエアではメモリータフタブルゾンの限定チェック柄が31,900円で登場する。
期間中は同ブランドの使用済みバッグとポーチを1人2点まで受け付け、ARChemiaプロジェクトを通じて資源循環につなげる。持ち込み1点につきクーポン1枚を配布し、購入額に応じて1,000円、2,000円、3,000円の値引きを設定する。回収品がすべて新しい同ブランドのバッグになるという発表ではないため、循環の出口をそれ以上具体化して断定することはできない。
オリジナルフレームのフォトスナップブースも設置する。公式Instagramのフォローが参加条件で、すでにフォローしている人は画面を提示する。会員向けには、期間中の表参道店での購入に通常より5%のポイントを追加する施策も告知されている。
編集部の分析として注目したいのは、施策の入口が一つではないことだ。限定品を探す顧客、使い終わったバッグを持ち込む顧客、写真を残したい顧客では、店舗に向かう動機が異なる。同じ期間に複数の接点を用意すれば、周年に関心がなかった人にも来店の理由を示せる可能性がある。
一方、限定商品や値引きを並べれば十分というわけではない。回収の受付、商品の説明、撮影の案内まで、現場が無理なく運営できるかも顧客体験を左右する。施策別の参加者数や購買との関係、普段は来店しない人に接点をつくれたかを見れば、周年施策の価値を評価しやすくなる。これは本イベントで確認された成果ではなく、店舗施策を検証する際の経営上の視点である。
取り組み自体は良いと思います。ただ、周年は売り手側の区切りです。お客さんからすると、「周年だから何なのか」という話でもある。周年という理由そのものより、お客さんにとって、その店に行く価値があるかどうかが大事だと思います。
レスポートサック公式:表参道フラッグシップストア リニューアル1周年記念イベント(2026年10月9日)
https://shop.lesportsac.co.jp/Page/News/Detail/20261009.aspx
レスポートサック ジャパン公式発表(2026年10月13日12時59分)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000018334.html
WWDJAPAN:表参道店で5日間のイベント
https://www.wwdjapan.com/articles/2525227
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大丸梅田店が全館大規模改装の新構想を発表した。2027年春に一部フロアを先行開業し、2030年春ごろのグランドオープンを目指す。美、ファッション、カルチャーを集める計画と、変化する購買行動をどうつなぐか。
大丸松坂屋百貨店は2026年10月13日15時30分、大丸梅田店の全館大規模改装について新たなストアコンセプトを公表した。「アトリエ・フューチャー」を掲げ、2027年春に4階・5階・9階を先行オープンする。その後も段階的に改装し、2030年春ごろのグランドオープンを目指す計画だ。
「2030年春ごろ」は目標時期であり、確定した開業日ではない。2026年3月からの地下食品フロアのリニューアルに続く取り組みとして位置づけられ、具体的な出店ブランド、サービス内容、空間デザインなどの詳細は2027年1〜2月ごろに順次発表する予定としている。現段階で未公表のテナントやサービスを予想で補うことはできない。
先行改装では、4階をビューティーとファッション雑貨のフロアにする。JR大阪駅直結の利便性を生かす入口と位置づけ、コスメ売場を2階から移し、面積を約1.5倍へ広げる計画だ。商品販売に加え、美容サービスやカフェを組み合わせる。
5階はメンズ・レディスの垣根を越えたファッションを展開する構想で、セレクトショップを核に多様なブランドとカフェを組み合わせる。9階はファン・カルチャーの接点を目指し、K-POPやVTuberなどのコンテンツを想定する。大丸ミュージアムの拡大改装も計画し、展示と物販、イベントをつなぐ。
これらは会社が示した計画であって、すでに実現した売場や成果ではない。特に「初出店」や具体的な店舗数は、今後の詳細発表を確認する必要がある。共通する方向性は、買いたい商品がある時だけ訪れる場所から、関心や体験を起点に人が集まる場所への転換だ。
編集部の分析では、今回の計画を考える鍵は、施設整備とデジタル変化の速度の違いにある。大規模な売場改装には、建築、設備、テナントとの調整など長期の準備が必要になる。一方、顧客が商品を発見し、比較し、来店を決める手段は、その間にも変化する。
2030年時点のAIやECの利用状況は確定していない。だからこそ、今あるデジタルサービスを前提に施設の役割を固定してしまうと、開業時の顧客行動との間にずれが生じる可能性がある。逆に、美容の体験やイベントなど、現地を訪れる価値を育てながら、情報発信や予約、購買への接続を見直せる運営なら、変化に対応する余地を残せる。
ここで挙げたデジタルとの接続は編集部の論点であり、大丸梅田店が発表した導入施策ではない。改装の評価も、完成時の売場面積や開業日の売上だけで終えるべきではない。段階的に開くフロアを通じて顧客の反応を把握し、その後の運営へどう反映するかが問われる。未来の購買行動を当て切ることと、変化を受け止める余地を用意することは、別の経営課題である。
2030年に完成するというのは、長いと感じます。そのころにはAIが本格化し、デジタルも大きく変わっているでしょう。
大丸松坂屋百貨店公式発表(2026年10月13日15時30分)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003997.000025003.html
FASHIONSNAP:大丸梅田店が全館リニューアル(2026年10月13日16時55分)
https://www.fashionsnap.com/article/2026-10-13/daimaru-umeda-renewal/
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ファッションブランドの魅力を伝える会社と、飲食店や施設を運営する会社が組む。その接点には、広告やイベントの受託にとどまらず、ブランドや体験を自ら事業として育てる可能性がある。HiRAO INCとクラムの資本業務提携は、その可能性と難しさを考えるニュースだ。
株式会社HiRAO INCとクラム株式会社(KRAM Inc.)は、2026年7月28日付で資本業務提携契約を締結し、両社が10月3日に発表した。FASHIONSNAPの紹介記事は10月5日付で、契約日とは異なる。HiRAO INCの代表取締役は平尾香世子、クラムの代表取締役は永砂智史。確認した公開発表では出資額と持ち分比率は示されておらず、資本関係の規模や経営支配については判断できない。
HiRAO INC側の発表は、ブランド・IPの共同開発や新規事業、俳優・アーティストを起点とする事業開発、東京とソウルを起点とする海外事業、既存カテゴリーを越えた事業共創を挙げる。単発の企画協力から、事業を継続して育てる関係へ進むことが狙いとなる。
HiRAO INCは2006年設立のコミュニケーションエージェンシーだ。会社紹介の抽象的な言葉だけでは、今回の提携で何ができるのかは見えにくい。公式サイトの公開実績を見ると、ファッション、空間、海外ブランド、アーティストにまたがる仕事が分かる。
例えば、公式ポートフォリオにはプッチの「L’ALBA COLLECTION LAUNCH PARTY」が掲載されている。開催日は2026年4月24日、会場は東京エディション銀座の「THE ROOF」。これはブランドの発売パーティーに関する公開実績であり、出演者が同社の所属タレントだという意味ではない。
韓国ブランドを中心とする合同展示会「MECORE」も具体例だ。公式説明では、韓国のFUTURESOCIETYSHOWがブランドのキュレーション、4OPUSがセールス、HiRAO INCがPR・コミュニケーションとブランドディレクションを担う三社共催の取り組みとなっている。HiRAO INCが単独で展示会の販売機能をすべて担っているわけではなく、専門性を分担しながら日本市場でブランドを伝える仕組みだ。
エンターテインメントでは、韓国俳優チョン・イルの日本におけるエージェンシー業務を継続すると今回の発表に明記されている。公式サイトにもアーティストマネジメントの対象として掲載されている。ブランドの顧客、イベントの出演者、エージェンシー契約の対象者は、別の関係として読む必要がある。
クラムは2022年設立で、事業投資、不動産、ホスピタリティ、飲食などを展開する。公式発表では、日本橋兜町の「ease」「Neki」「teal」「BANK」など、レストラン、パティスリー、複合ショップの事業を紹介している。グループとして東京を中心に約40の店舗・施設を展開しているという。
この「約40」は発表時点のグループの店舗・施設数であり、提携で新たに開く店舗数ではない。具体的な飲食・空間事業を持つことは、ブランドの構想を生活者が訪れる場に落とし込み、日々運営するための基盤があるということでもある。
HiRAO INCは韓国法人「HiRAO INC KOREA(仮称)」の設立を予定すると発表した。東京とソウルを拠点に、日本と韓国のブランド、企業、クリエイター、アーティストとの事業基盤をつくり、将来は欧州、米国、中東との連携も視野に入れる。今回確認した発表からは、法人設立完了や開業時期までを確定できない。
FASHION SHIFTの経営分析として注目したいのは、ブランドの価値を編集して伝える能力と、店舗・サービスを継続して運営する能力の接続だ。受託案件では納品やイベント実施が一区切りになる。一方、自ら事業を持つ場合は、その後も顧客に選ばれ、売上と費用を管理し、サービスを改善する責任が続く。両社の専門性が互いを補える可能性はあるが、提携したことだけで収益化が約束されるわけではない。
今後は、どのブランドやサービスを実際に立ち上げるのか、誰が事業運営を担うのか、顧客が繰り返し利用する理由をどうつくるのかが焦点になる。華やかな企画発表と、継続する事業の成果を分けて見る必要がある。
楽しみな取り組みです。ただ、クライアントワークと、自分たちのサービスをつくることでは、必要なスキルやノウハウが違います。うまく事業にできるのか、注目したいと思います。
クラム公式発表(2026年10月3日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000177061.html
HiRAO INC公式発表(2026年10月3日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000007464.html
HiRAO INC|プッチ発売パーティー公開実績
https://hirao-inc.com/works/lalba-collection-launch-party/
HiRAO INC|MECOREの役割分担
https://hirao-inc.com/showroom-project/
HiRAO INC|Artist Management
https://hirao-inc.com/artist-management/
FASHIONSNAP(2026年10月5日)
https://www.fashionsnap.com/article/2026-10-05/hirao-inc-kram-inc/
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2026年秋冬からジャケットやシャツを増やし、品番をおよそ半分に絞る。商品改革の狙いを確認し、狙う顧客とブランドの印象の距離を考える。
繊研新聞が2026年10月14日6時27分更新の記事で報じた公開部分によると、ストライプインターナショナルのearth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)は、2026年秋冬から商品企画を見直し、30代前後の顧客の獲得を目指す。大人が取り入れやすいジャケットやシャツを増やし、商品を絞り込む方針だ。報道日が改革の開始日という意味ではなく、対象はすでに始まっている秋冬シーズンである。
報道では、品番数を従来のおよそ半分に絞り、在庫の適正化とスタイリング提案を重視するとしている。ただし、公開部分には比較対象となるシーズンの総品番数や削減後の実数は示されていない。「半分」は品番の話であり、生産数量、在庫金額、売上まで半減させる計画ではない。
背景には、店舗立地とブランドの受け止められ方のずれがある。記事は、主力立地のショッピングセンターを利用する30代・40代に対し、学生や若年層向けの印象が強くなり、20代後半以降の女性が入りにくくなっていた課題を説明している。これは報道による課題の整理であり、今回の改革で再来店が増えたという成果の発表ではない。
会社の公式ブランド紹介は、ターゲットを20代〜30代女性としている。この会社側の設定と、報道が示す実際の客層や店舗への印象は同じ指標ではない。狙う人を定義することと、その人が店に入り、商品を選んでくれることの間に課題がある。
公式通販の2026〜2027年秋冬ビジュアルには、税込8,800円のジャケットや6,600円のシャツなどを使った着こなしが掲載されている。ただし、これは掲載商品の例であり、全商品の価格帯や改革後の構成比を示すデータではない。
また、会社は9月16日の公式発表で、今季のコンセプトを「JUST AS I AM」とし、シーズンモデルを起用したビジュアルを案内している。特設サイトには15のコーディネートがあり、公式Instagramで映像を発信する計画も示された。商品だけを変更し、広告や発信には一切取り組んでいないと捉えるのは正確ではない。今回の記事では、有料記事の未読部分や、改革の効果を推測で補わない。
ここからはFASHION SHIFTの分析だ。品番を減らすと、個々の商品の役割や組み合わせを明確にしやすくなる可能性がある。ジャケットを一着見せるだけでなく、手持ちの服とどう合わせ、どんな場面で着られるかを伝えられれば、買う理由は年齢以外にも広がる。一方、選択肢を減らした結果、既存顧客が欲しい商品を見つけにくくなる可能性もあり、絞り込みだけで在庫や収益が改善すると断定はできない。
もう一つの論点は、商品が変わる速さと、ブランドの認識が変わる速さの違いだ。新しい服が入荷しても、店の前を通る人が以前の印象のままなら、その変化は試着まで届かない。逆に、広告で新しい印象をつくっても、実際の商品や着こなしがその期待と離れていれば、継続的な購入にはつながりにくい。これは本ブランドで効果を測定した結果ではなく、リブランディングを考える上での仮説である。
改革の評価では、単に狙った年齢層の売上を見るだけでなく、新たに訪れた人が何を入口に来店し、何を試し、再び購入したかを確認したい。商品、店頭の提案、映像などの接点が、顧客の中で一つの印象につながっているか。年齢設定そのものより、選ばれる理由を具体化できるかが事業上の問いになる。
30代・40代に買ってもらいたいから、その世代向けの商品をつくればよい、という考えには私は懐疑的です。狙った世代より一つ上の世代が反応することもある。アースは過去のCMの印象が強く、商品を変えるだけでは、ブランドの認識まで変わりにくいと思います。
リブランディングするなら、タレントと親しみやすい音楽で印象をつくってきた型を生かし、中身を今の時代に更新したい。新しい世代のタレントを起用し、TVer、YouTube、Instagram、TikTokなどで映像を広く届ける。やり方の型を生かしながら、コンテンツと届け方を更新する方が、イメージを変えるには早いのではないかと考えています。
繊研新聞:2026年10月14日6時27分更新(有料記事の公開部分を参照)
https://senken.co.jp/posts/stripe-intl-261014
ストライプインターナショナル公式:ブランド紹介・ターゲット設定
https://www.stripe-intl.com/brands/earth/
ストライプインターナショナル公式発表:秋冬シーズンビジュアル(2026年9月16日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001273.000036659.html
STRIPE CLUB公式:2026〜2027年秋冬ビジュアル・商品例
https://stripe-club.com/assets/earth1999/cts1/2609/seasonvisual26aw_emae/
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

2027年3月の共同持株会社設立を予定。本部・物流・ITの効率化に加え、両社のブランドと顧客接点をどうつなぐか。公式発表と最新決算を読み、竹内真が期待する「新しい買い物体験」を考える。
ワールドとTSIホールディングスは2026年10月14日、共同株式移転による経営統合契約を締結した。2027年3月1日を効力発生日として、両社を完全子会社とする共同持株会社「株式会社インフィニティ・ユナイテッド(INFINITY UNITED Inc.)」を設立し、東証プライム市場への上場を予定する。10月14日は合意・発表の日であり、統合が完了した日ではない。
新会社の代表取締役会長にはTSIHD社長CEOの下地毅、代表取締役社長執行役員にはワールド社長執行役員の鈴木信輝が就く予定だ。取締役副社長執行役員には中林恵一と内藤満を予定する。組織再編後はTSI、ワールド・ブランズ、ワールド・ソリューションズの三つの中間持株会社を置く構想で、ワールド・ブランズはワールドへの商号変更を検討している。
実行には両社の株主総会と関係当局の承認等が必要となる。株式移転計画を承認する臨時株主総会は12月24日、両社の上場廃止は2027年2月25日を予定。ワールド株1株に新会社株1株、TSIHD株1株に0.8株を割り当てる計画で、日程はいずれも変更の可能性がある。
直近通期である2026年2月期の売上は、ワールドが売上収益2,840億1,400万円、TSIHDが売上高1,670億8,500万円。単純合算すると4,510億9,900万円になる。ただし、これは統合後の売上予想ではなく、異なる会計基準で開示された過去実績を足した参考値だ。新会社の業績見通しは、確定次第公表するとしている。
最新の中間決算は、いずれも2026年3〜8月が対象となる。ワールドは10月5日、TSIHDは10月14日に発表した。以下の営業利益は各社の会計基準による数値であり、ワールドの管理指標である事業利益とは区別している。
| 2027年2月期中間期 | ワールド(IFRS) | TSIHD(日本基準) |
|---|---|---|
| 売上収益/売上高 | 1,424億8,900万円 前年同期比4.1%増 | 889億500万円 同34.4%増 |
| 営業利益 | 84億900万円 同1.2%増 | 9億9,500万円 同55.5%増 |
ワールドはIFRS第18号を早期適用し、比較数値を組み替えている。TSIHDの増収には、前期に連結したデイトナ・インターナショナルとウォーターフロントの期初からの寄与が大きい。いずれも今回の統合が実行される前の業績であり、統合効果を示すものではない。
店舗規模も、時点と範囲を揃えて読む必要がある。ワールドのデータブックは2026年8月末の連結店舗数を2,500店(海外44店を含む)とする。TSIHDは7月15日公表の第1四半期説明資料の店舗表に総計785店(アパレル749店、飲食6店、コスメ30店)を掲載している。ただし同表はスライドの期名と列見出しに年度表記の不整合があるため参考値とし、最新中間期末の8月末店舗数とは扱わない。今回確認できた資料ではTSIHDの8月末の同基準総数は確認できず、両社の「現在の総店舗数」として合算はしない。
ワールドはアンタイトル、タケオキクチ、シューラルーなど幅広いブランドを持ち、TSI側にはナチュラルビューティーベーシック、アヴィレックス、パーリーゲイツなどがある。両社はブランドの顧客層や販路、商材・価格帯の重複が少なく、相互補完性があると説明する。
会社が背景として挙げるのは、ブランド・店舗の供給過剰、物流やシステムなどの重複投資、調達費用の上昇、顧客接点の変化だ。一方、統合の目的は縮小対応だけではない。ワールドのB2Bや循環型事業の基盤と、TSIの個性あるブランド・創造力を組み合わせ、成長投資や人材投資に振り向ける方向を示している。
公式資料には、IT、物流、コーポレート機能を共通基盤として高度化し、生産・調達から販売までの基盤を相互活用する方針がある。購買・決済の一体化によるコスト競争力の強化も想定する相乗効果に含まれる。ただし、個別システムの移行日や削減額、閉鎖店舗の数を決定した発表ではない。
顧客情報の統合によるデジタルマーケティングの拡充、オンラインと店舗を一体で考えるOMOの販路戦略、商品コンテンツの相互供給や販売チャネルの共同開発も、公式に示された方向性だ。これらの実現方針と、すべてのブランドでポイントや購買履歴を共通利用できるサービスの完成は、別の段階にある。
ここからはFASHION SHIFTの経営分析である。本部や物流の重複費用を減らせれば、売上規模を拡大しなくても利益率が改善する余地がある。在庫の所在や販売状況を把握する仕組みが整えば、欠品と売れ残りの両方を減らせる可能性もある。ただし、情報基盤の共通化だけで、異なるブランドの商品を自在に移動できるわけではない。顧客、商品の仕様、販売時期はそれぞれ異なる。
店舗網の見直しやブランドへの資源配分も今後の論点になるが、今回の発表から具体的な統廃合を確定事項としては書けない。仮に低採算の売場を絞れば、減収でも利益が増える場合はある。一方で、顧客との接点を失い、残る店舗やECの売上まで落とすリスクもある。売上と費用を同時に見る必要がある。
さらに、システム移行、物流拠点の再配置、人材の配置転換には時間と費用がかかる。恒常的な費用削減と、移行期の一時費用、在庫の改善による資金への効果を分けなければ、統合の成果は見えにくい。ブランドポートフォリオの最適化も、個性を一律に揃えることではなく、それぞれの顧客価値を保って共通化できる業務を見極める仕事になる。
足元では両社とも中間期は増収増益である。統合後に減収増益型が続くという見方は、編集長の将来シナリオであり、現在の決算の説明や会社が公表した業績予想ではない。
経営統合による効率化は利益改善につながる可能性がある。しかし、縮小圧力に耐えるための費用削減で終われば、新しい成長の理由は生まれにくい。両社のブランド、店舗、EC、顧客情報を組み合わせ、これまでになかった買い物体験をつくれるか。会社が掲げる成長の構想と、編集長が期待する顧客価値を、今後の具体策と実績で確かめたい。
今回の経営統合について、私は売上高の大幅な成長はあまり期待していません。国内アパレル市場が大きく成長するとは考えにくく、統合による店舗の統廃合や経営効率化が進むと予想しています。その結果、売上高は減少しても利益が増える「減収増益型」の経営が続くのではないでしょうか。
一方で、顧客にとってのメリットには期待しています。例えば、ワールドとTSIのブランドを自由に組み合わせたセレクトストアが誕生したら面白い。これまで別々の店舗で購入していた商品を、一つの店舗で比較しながら購入できるようになります。
また、両社のポイントや購入履歴が統一され、すべてのブランドで共通して利用できるようになれば、顧客の利便性は大きく高まるでしょう。企業側もブランドを横断して顧客を理解できるようになり、CRMやマーケティングの高度化につながると考えます。
経営統合の成功を、単なるコスト削減だけで評価するべきではありません。両社が持つブランド資産を組み合わせ、これまでになかった顧客価値をどれだけ生み出せるか。そこに今回の統合の本当の可能性があると考えています。
TSIホールディングス公式:共同持株会社設立による経営統合のお知らせ(2026年10月14日)
https://www.tsi-holdings.com/press/_tsi.html
両社適時開示・説明資料:統合方式、承認条件、経営体制、想定相乗効果(2026年10月14日)
https://www.tsi-holdings.com/pdf/261014_Business_integration.pdf
ワールド公式サイト
https://corp.world.co.jp/
ワールド:2027年2月期中間決算短信(2026年10月5日)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544846.pdf
TSIHD:2027年2月期中間決算短信(2026年10月14日)
https://www.tsi-holdings.com/pdf/261014_ZENBUN.pdf
ワールド:中間決算データブック(PDF12ページ・印刷11ページ、2026年8月末の店舗数)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544879.pdf
TSIHD:2027年2月期第1四半期決算説明資料(2026年7月15日、PDF27ページ・店舗表は年度表記不整合につき参考値)
https://www.tsi-holdings.com/pdf/260715_Result%20Briefing.pdf
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

伸びているのは顧客の人数か、売上か。公式IRの対象期間とグループ指標を確認し、外商と専門的な接客から、百貨店が長期的な顧客関係を育てる意味を考える。
三越伊勢丹ホールディングスが2026年8月13日に公表した2027年3月期第1四半期決算説明会資料によると、2026年4〜6月の「グループ1,000万円以上購買顧客売上高」は前年同期比117%、「グループ300万円以上購買顧客売上高」は116%だった。それぞれ売上高が17%、16%増えたという意味であり、顧客人数の増加率ではない。
両指標は「国内顧客動向」の中で示されたグループの顧客区分別指標だ。伊勢丹新宿本店だけの実績ではなく、海外顧客を含めた連結売上高全体の伸び率でもない。図表の区分名は「以上」であるため、本記事もこの表記に合わせる。
同じ組み合わせの114%・108%は、2025年8月8日公表の2026年3月期第1四半期資料に載っている。対象は2025年4〜6月で、比較先は2024年4〜6月だ。いずれも高額購買顧客の売上高前年比であり、2026年の顧客数の伸びとして紹介することはできない。
最新の2026年4〜6月の前年比は2025年4〜6月との比較である。下表はそれぞれの四半期の前年同期比を並べたもので、同じ顧客を固定して2年間追跡した調査を意味しない。
| 公式図表の指標 | 2025年4〜6月 2024年同期比 | 2026年4〜6月 2025年同期比 |
|---|---|---|
| グループ1,000万円以上購買顧客売上高 | 114%(14%増) | 117%(17%増) |
| グループ300万円以上購買顧客売上高 | 108%(8%増) | 116%(16%増) |
旧説明要旨では年間300万円以上・年間1,000万円以上の購買顧客として説明され、最新の説明要旨も300万円区分には「年間」を付けている。最新図表の1,000万円区分は「年間」を省略した名称なので、見出しは図表の呼称に合わせた。これは、4〜6月の3か月だけで1,000万円を買った人数が17%増えた、というデータではない。
一方、年間購買額の判定が前年度実績か直近12か月か、区分を更新する時期、対象企業・店舗・チャネルの細かな範囲、名寄せの方法、同じ顧客を固定した比較かどうかは、確認した資料に明示されていない。人数と一人当たり購入額の寄与も分解されていないため、「新たな富裕層が何人増えた」とまでは読み取れない。
また、1,000万円以上の層と300万円以上の層は、金額条件が重なる。独立した二つの市場として売上を足したり、伸び率を合算したりするものではない。
ここからはFASHION SHIFTの経営分析である。高額購買顧客との関係を考える際、単価の高い商品が売れたという説明だけでは不十分だ。同じ人が、衣服だけでなく靴、宝飾、食品、ギフトなどへ利用を広げる場合と、たまたま一度だけ高額商品を購入した場合では、次の売上の生まれ方が異なる。企業にとって重要なのは、購入の背景を理解し、次の相談にも応えられる関係を持てるかである。
会社も2026年8月13日の決算説明会の質疑応答で、年間300万円以上の顧客による購買分野の広がりと客単価向上が売上をけん引していると説明している。これは会社側の業績要因の説明であって、高額購買層の人数が同率で増えたという意味ではない。
売上の伸びと利益の伸びも分けて見たい。高額品であっても商品ごとに粗利益率が異なり、専門的な接客には人員や時間が必要になる。会社は同四半期の決算で売上成長とともに経費コントロールも説明しているが、高額購買層別の利益や利益寄与額は確認できない。今回の売上指標だけで「この顧客層が増えた分だけ利益も増える」とは言えない。
三越伊勢丹ホールディングスレポート2026は、2026年度に「グループ外商統括部」を新設し、首都圏・地域・海外の外商連携を統括する体制を示している。顧客理解をもとに希少な商品や体験、グループ各社のサービスを提供する方針で、接点を一店舗の売場だけに閉じない考え方だ。
また、最新の決算説明会の質疑応答では、個人外商でAIを使ったレコメンド提案を実施し、より広い範囲への展開に取り組んでいると説明した。全顧客への導入完了や、AI単独による売上効果が示されたものではない。担当者の提案を支える仕組みとして読みたい。
確認できるサービス例が、伊勢丹新宿店の「ISETAN STYLING Robe」だ。公式案内では、パーソナルカラー診断や骨格スタイル分析などの専門資格を持つスタイリストが、診断に基づく着こなしを提案し、一緒にフロアを巡って商品を探すサービスを紹介している。公式案内では2025年10月1日から、三越伊勢丹カスタマープログラムのゴールドステージ以上を対象としている。利用条件や料金は予約時に公式案内で確認する必要がある。
これは伊勢丹新宿店のサービスの一例であり、グループの高額購買顧客売上をそのまま同店の成果へ置き換える根拠ではない。今回の売上増加がこのサービスによって生じたと実証されたわけでもない。
商品そのものが希少であることに加え、自分に合う選択肢を探してもらえること、使用場面まで相談できること、購入後にも頼れることには、価格表だけでは比較しにくい価値がある。こうした対応を継続するには、個々の販売員の経験だけに頼らず、顧客の希望を適切に引き継ぎ、専門性を育てる運営が必要になる。これは編集部の分析であり、今回の売上伸長への寄与を測定した結果ではない。
高額購入を一度獲得して終えるのか、長く相談してもらえる関係へ進めるのか。百貨店の競争力を考える評価軸は、価格や品ぞろえの広さだけでは足りない。顧客を深く理解する仕組みと、担当者が向き合う時間を両立できるかが、継続的な利用を支える経営課題になる。
百貨店は、もともと高額購入者を大切にしてきた小売業態です。今回、高額購買顧客の利用が伸びていることも、単に富裕層ビジネスが好調だという話だけで捉える必要はないと思います。むしろ、百貨店が本来得意としてきた仕事を、しっかり実践している結果ではないでしょうか。
百貨店の強みは、商品を並べて販売することだけではありません。顧客一人ひとりを理解し、信頼関係を築き、長く買い物を楽しんでもらうことにある。価格競争や利便性だけでECと勝負するのではなく、百貨店だからこそ提供できる価値を磨くことが大切だと考えています。
今回の数字は、百貨店の原点にこそ、これからの成長のヒントがあることを示しているように感じます。
三越伊勢丹HD:2027年3月期第1四半期決算説明会(2026年8月13日、資料4ページ「国内顧客動向」)
https://pdf.irpocket.com/C3099/xoA3/tx0r/Tu8Q/MGfV.pdf
同・説明要旨(2026年8月13日、顧客区分と年間購買額の説明)
https://pdf.irpocket.com/C3099/xoA3/tx0r/ZXcN/BCsA.pdf
同・質疑応答要旨(説明会2026年8月13日、8月14日掲載、購買分野拡大・個人外商のAI活用)
https://pdf.irpocket.com/C3099/xoA3/tx0r/f5EY/rxQQ.pdf
三越伊勢丹HD:2026年3月期第1四半期決算説明会・説明要旨(2025年8月8日、資料5ページ、114%・108%の元資料)
https://pdf.irpocket.com/C3099/bffO/jyM1/E1jQ.pdf
三越伊勢丹ホールディングスレポート2026(2026年9月30日発行、39〜44ページ「百貨店事業」)
https://www.imhds.co.jp/content/dam/imhds/corporate/pdf/ir/library/annual-report/imhds_report2026_16_p39.pdf
三越伊勢丹公式:ISETAN STYLING Robe サービス案内(公表日記載なし、2026年10月16日確認)
https://www.mistore.jp/shopping/feature/women_f3/personal_consulting_w
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モーグル日本代表の使用済みユニフォームを全7型へ再生。来歴を伝えるDPPと競技支援を組み合わせた取り組みから、循環を商品価値と継続事業に変える条件を考える。
ゴールドウインが2026年9月30日に発表した「サーキュラーアクション」は、役目を終えたウェアを修理やアップサイクルで再生する取り組みだ。第1弾ではモーグル日本代表が大会や練習で着用したユニフォームを回収し、バッグなどの日用品に作り替える。会社発表による販売期間は10月15〜25日、場所は東京・神田のGRAVITY KANDA。数量限定で、なくなり次第終了する。
対象はスキー日本代表の全競技のウェアではなく、まずモーグルチームのものだ。全7型を展開し、発表価格はポーチ4,950円、サコッシュ8,250円、ビッグトート24,200円など。いずれも税込みで、使用済み素材のため色柄や仕様に個体差がある。10月17日時点の店頭在庫や販売実績までは確認できていない。
今回の製品にはデジタルプロダクトパスポート、DPPが導入される。会社の説明では、タグの二次元バーコードから再生前の製品情報、着用したアスリート、再生の背景、環境関連情報、ケアや修理、回収に関する情報を確認できる。売上の一部はSAJへの寄付を通じ、アスリート支援に充てる予定だ。寄付率や金額は発表されていない。
この仕組みの経営上の意味は、素材を再使用する工程に、購入後も参照できる情報を重ねた点にある。布の機能だけなら新品の同等素材と比較される。誰がどのような場面で使い、その後どう作り替えられたかが分かれば、同じ形のバッグでも選ぶ理由が変わり得る。ただし、ストーリーへの共感が販売や価格受容をどこまで押し上げるかは、今後検証すべき仮説である。
DPPの利用を店頭で一度読み取って終えるものにしないことが重要だ。例えば、汚れた時に適切な手入れを確認できる、破損時に修理窓口へ進める、手放す際に回収方法を探せる。こうした具体的な用事に応えられれば、ブランドと顧客の接点は購入後も続く。これはFASHION SHIFTの分析であり、同社が全ての利用行動を把握できると確認したものではない。
一方、データを載せるだけで循環が完成するわけではない。誰が情報を更新するのか、修理や再利用の現場で何を参照できるのか、情報が古くなった際にどう直すのかが問われる。会社はDPP活用の共同PoCへの参画も説明している。今回の導入を、全製品への展開完了や特定の海外制度への適合認証と読み替えることはできない。
個体差は希少性の源になる一方、事業運営には手間を生む。通常の商品なら同じ仕様を繰り返し生産できるが、使用済みウェアは傷み方や使える面積が違う。回収、状態確認、洗浄、裁断、縫製、検品に必要な作業をどう標準化するか。一点ごとの違いをどこまで顧客に説明するか。商品価値と費用を同時に設計する必要がある。
継続性を測るなら、売り切れたかに加え、回収量に対する製品化率、作業時間、修理対応、再回収率なども見たい。少量の限定販売で得た学びを、次の回収や設計へ戻せるかが大切になる。現段階で収益性や環境効果の改善幅を断定できる情報はなく、話題性だけで事業の成功を判断するのは早い。
製品の背景を伝えることと、環境負荷の削減を数値で示すことも分けて考えたい。DPPに環境関連情報があるという説明から、通常品より何%排出量が少ないと推計することはできない。回収や再加工を含む比較条件がそろって初めて、効果を評価できる。
それでも、この取り組みはファッション企業に一つの問いを投げかける。環境配慮の説明を追加するだけでなく、見た目、使いやすさ、背景への共感、手入れのしやすさを一つの商品体験にできるか。選手の活動を支えた服が生活の道具となり、その売上が再び競技支援へ向かう構想を、顧客が使い続ける実感につなげられるか。循環型ビジネスの評価は、その購入後の時間にもある。
もう一つの論点は、競技団体や選手との関係をどう継続するかだ。回収できる量には限りがあり、同じ素材を安定して調達する通常の仕入れとは条件が違う。限定品としての販売と、修理を通じて長期使用を支えるサービスでは、必要な運営も異なる。それぞれの目的と費用を分け、販売後の対応まで含めた負担を見積もることが、次の展開を考える土台になる。顧客が背景に納得して選び、その後も気持ちよく使えることが、循環への信頼を支える。
ゴールドウイン公式発表/2026年9月30日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001288.000007414.html
Goldwin公式/DPPの取り組み
https://www.goldwin-global.com/jp/brand/sustainability/dpp/
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公式SNSは総フォロワー300万超、実店舗は10月15日時点で19店。動画の話題性を購入の確信へつなぐ、LOWYAの顧客接点の設計を読み解く。
家具・インテリアブランドLOWYAを運営するベガコーポレーションは、2026年10月15日の公式発表で、SNSの総フォロワー数が300万を超えたと説明した。複数の公式アカウントを合わせた規模であり、重複を除いた顧客数や購入者数とは異なる。動画を見た人と、家具を買った人の関係を考える時には、この区別が出発点になる。
今回のテーマとなった「SNS動画の年間総再生回数10億回超」は、10月15日付の繊研新聞の公開部分に記載がある。ただし、本稿で確認した企業の一次資料では、対応する集計の開始・終了日、対象SNS、再生の集計方法を確定できなかった。このため、検証済みの会社公表値としては扱わない。分析の軸は、一次情報で確認できる顧客接点と、その組み合わせ方に置く。
会社発表によると、実店舗は10月15日時点で全国19店。10月30日には、静岡県で2店目となるららぽーと沼津店が開業予定で、通算20店目になる。10月17日の記事で20店が既に営業しているとは書けない。店舗面積は約240平方メートルの予定だ。
家具の購入では、動画で使い方に納得しても、座り心地や素材の感触、実際の大きさに不安が残る。店舗は、その不安を解消できる場所になる。SNSで商品を知り、ECで仕様を比較し、店舗で確かめた後に自宅から注文する。こうした移動を想定すると、店舗の価値をその場の売上だけで評価することには限界がある。これは購買行動についての分析であり、来店者の何割が後日ECで購入したかを確認したものではない。
LOWYAは自社開発の3D家具配置アプリ「おくROOM」を展開する。2026年4月27日の発表では、累計100万ダウンロードを突破したと公表した。ダウンロード数は累計の導入規模であり、日々利用する人数や購入率を表す数字ではない。SNSのフォロワー数と足し合わせて、顧客基盤の総人数を計算することもできない。
経営上注目したいのは、ブランドが提案する部屋を眺める段階から、自分の部屋に家具を置く段階へ検討を進められる点だ。動画では魅力的でも、家の寸法や既存の家具に合うか分からない。その迷いを少しずつ減らす機能が、ECや店舗と補完し合う。もっとも、画面上のシミュレーションが、搬入経路や設置条件の確認まで代わりに済ませるわけではない。購入前に必要な情報を分かりやすく届ける運営が欠かせない。
同社の公式採用サイトでは、自社EC、実店舗、SNSを顧客体験の柱とし、SNSを潜在的な顧客の声をつかむ場として説明している。10月15日の発表でも、投稿コメントを担当者が読み、返答する運用を紹介した。発信と応答の両方を続ける姿勢が確認できる。
ここには、広告を届ける以上の可能性がある。使い方への質問やサイズへの不満は、次に用意すべき説明や商品仕様の手掛かりになる。ただし、コメントをくれる人の意見が市場全体の需要を代表するとは限らない。購入者のレビュー、返品理由、店舗で受ける相談などと合わせて読む必要がある。声の大きさだけで企画を決めず、どの悩みがどれほど広く存在するかを確かめることが、商品開発への橋渡しになる。
ファッション企業にも、この考え方は応用できる。着用動画で興味を持った人に、ECではサイズや素材を伝え、店舗では試着を支援する。各担当が別々の成果指標だけを追うと、動画は伸びても、購入に必要な情報がつながらない。顧客が次の接点へ進みやすいかを共通の課題として扱いたい。
評価には再生数やフォロワー数に加え、商品ページへの流入、検討の継続、購買、返品、粗利益まで段階を設ける必要がある。店舗を増やすほど、人件費や家賃、展示商品の管理も増える。ECへの送客効果と費用を同じ期間で比べ、出店が顧客の不安を減らしながら利益も残しているかを見たい。LOWYAの戦略を読む鍵は、話題になった動画の本数だけでなく、知る、確かめる、選ぶという行動を一つの購買体験にできるかにある。
接点をまたぐ成果を測る際には、同じ購買をSNSと店舗の両方の成果として重複計上しない工夫も必要になる。来店前に何を見たかという調査や、出店前後の地域別の変化など、複数の方法を組み合わせたい。一つの経路だけで購入を説明し切らず、顧客が迷わず検討を進められたかを確かめることが、次の投資判断を助ける。
ベガコーポレーション公式/沼津店・2026年10月15日
https://www.vega-c.com/pr/20761/
同社公式発表/SNS・店舗数の基準日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000174.000026707.html
同社公式/おくROOM・2026年4月27日
https://www.vega-c.com/pr/20326/
同社公式採用サイト/SNSプロジェクト(取材当時の情報)
https://www.vega-c.com/recruit/project/p01/
繊研新聞/10月15日・公開部分のみ、10億回の一次検証は未了
https://senken.co.jp/posts/vega-261015
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2027年2月期の連結売上予想は10.1%増、営業利益は53.4%増。売上の上方修正と利益据え置き、事業別の動きから、増益の質と今後の課題を考える。
4℃ホールディングスが2026年10月9日に発表した決算短信によると、2027年2月期の通期連結予想は売上高770億円、営業利益43億円。前期比ではそれぞれ10.1%増、53.4%増となる。対象期間は2026年3月1日から2027年2月28日までで、ジュエリーブランド「4℃」単独の売上や、既に確定した通期実績ではない。
今回の修正では、売上高を従来の750億円から20億円引き上げた一方、営業利益43億円は維持した。会社は経営環境と今後の投資計画を勘案し、各段階利益は計画通りを見込むとしている。売上の上振れがそのまま利益予想の追加増額へ向かったわけではない。この点を押さえると、増収増益という見出しの先にある経営判断が見えてくる。
公表値から計算すると、通期予想の営業利益率は約5.6%。前期実績の売上高699億62百万円、営業利益28億2百万円から求めた約4.0%を上回る。約1.6ポイントの改善を見込む計算だ。増収率を上回る増益率は、この利益率の変化と併せて読むと理解しやすい。
ただし、グループ全体の利益率が上がることから、個々の商品の採算や4℃ブランドの評価が同じだけ改善したとは言えない。事業構成、販売数量、費用、一時的な要因が重なって連結利益は決まる。利益の伸びを評価しながら、その再現性を別に検討する必要がある。
2026年3〜8月の中間期実績は、連結売上高394億42百万円、営業利益27億9百万円。前年同期比は売上21.5%増、営業利益141.0%増だった。通期予想の53.4%増と、中間期実績の141.0%増は対象期間が違う。いずれも「利益成長率」とだけ書くと、読者が混同しやすい。
会社はブランド事業で、ジュエリーのエフ・ディ・シィ・プロダクツグループにおけるMD改革やチャネル戦略による既存店売上の伸長を説明した。加えて、高級ブランド時計のリユース販売を手掛ける羅針で、品ぞろえ拡充に伴い売上と営業利益が大きく伸びたとしている。ブランド事業の好調を、ジュエリーだけの成果として語らないことが重要だ。
連結損益計算書では、中間期の売上総利益は前年の107億77百万円から123億87百万円へ増加。一方、販管費は96億52百万円から96億77百万円にとどまった。増えた売上総利益の多くが営業利益の増加に結び付く構図を読み取れる。ただし、これだけで全社的なコスト削減が唯一の要因と断定することはできない。
アパレル事業では、会社は退職給付制度の改定に伴う一時的な費用の減少にも言及した。こうした前年との費用差は、毎年繰り返す成長とは区別したい。翌期以降の評価では、一時要因がなくなっても利益を維持できるか、商品や販売チャネルの改善で粗利益を積み上げられるかを見る必要がある。
中間期の営業キャッシュ・フローは1億95百万円の支出だった。営業利益が大幅に増えていても、同じ期間の営業活動から得る現金が増えるとは限らない。税金の支払いや運転資金の動きが影響するためだ。商品及び製品の残高も前期末から増えており、販売の成長と在庫の回収を合わせて確認したい。
通期予想から中間期実績を単純に差し引くと、下期に相当する営業利益は15億91百万円となる。ただし、これは会社が独立した下期予想として示した数値ではなく、本稿の計算だ。上期の進捗が高いから確実に上方修正される、と結論付ける材料にはならない。投資や季節性、外部環境を含め、下期を確認する必要がある。
ファッション企業にとって参考になるのは、売上規模を追うだけでなく、事業ごとの利益の生まれ方を見直す視点だ。どの顧客に、どの商品を、どの接点で提供するか。その選択が在庫や販管費とどう結び付くかを確かめる必要がある。
今回の決算は、収益の改善を示す一方、その背景を一つの成功要因へまとめられないことも教える。ジュエリー、時計リユース、アパレルの動きと一時的な費用差を分け、さらに現金の回収まで見る。売上770億円、営業利益43億円という計画が実現するかとともに、翌期にも続く利益の基盤が育っているかを追いたい。
なお、営業利益率や下期相当額は、公表された百万円単位の数値を基に計算し、率は丸めている。会社の予想値と本稿の計算を区別したうえで、今後の開示との比較に用いたい。
4℃HD公式/2026年10月9日・中間決算短信(表紙、添付2〜3、6ページ)
https://cdn.clipkit.co/tenants/2641/item_files/assets/000/006/512/original/20261009_77.2Q.tanshin.pdf
4℃HD公式/IR資料一覧
https://yondoshi.co.jp/ir
AI生成のイメージ画像。紹介企業の実際の商品・店舗・製造現場を撮影した写真ではありません。

バロックジャパンは通期営業利益予想を1億1,100万円へ引き下げた。EC刷新時の出荷遅延に加え、ブランド販売不振や商品評価損も重なる。決算の数字から、アパレル企業の販売基盤を支える経営課題を読み解く。
バロックジャパンリミテッドは10月15日、2027年2月期の通期連結業績予想を修正した。売上高は4月公表の529億7,000万円から508億3,200万円へ、営業利益は13億5,200万円から1億1,100万円へ引き下げた。営業利益予想の修正率は91.8%減。「65.4%減」は前期実績との比較であり、下方修正率とは異なる。
経常損益は13億200万円の黒字予想から3,900万円の赤字、親会社株主に帰属する当期純損益は7億4,300万円の黒字から6億9,600万円の赤字へ見直した。売上の減少幅以上に利益計画が縮んだことが、今回の重要な論点だ。
同日発表の中間期(2026年3月1日〜8月31日)は、売上高234億6,900万円、前年同期比5.4%減。営業損失は9億400万円で、前年同期の7,700万円の損失から拡大した。経常損失は10億2,800万円、親会社株主に帰属する中間純損失は14億9,500万円だった。
会社は、6月に導入した新ECシステムの初期トラブルによって出荷遅延が生じたと説明している。遅延は上期中に解消し、その後は徐々に回復傾向にあるとしている。ただし、資料には解消した具体的な日付や、トラブルの技術的な原因、顧客離反の規模は示されていない。
中間期の国内EC売上高は43億1,100万円で、前年同期比10.6%減。国内売上高に占める比率は18.8%だった。これは国内ECの数字であり、海外を含むグループ全体のEC売上ではない。また、この減収のうち出荷遅延だけによる影響額は確認できない。EC売上の減少をすべてシステム障害の結果として扱うことはできない。
出荷が正常化したことと、失われた販売機会や顧客の信頼が回復したことも別の問題だ。「障害は解消した」という説明だけで、その後の事業への影響まで解消したと判断するのは早い。
ブランドの状況は一様ではない。決算補足資料では、MOUSSYやLAGUA GEMが好調に推移し、RODEO CROWNS WIDE BOWLも既存店売上高が2桁成長した。一方、AZUL BY MOUSSYは春物でシンプル・ベーシックな商品を広げたものの、従来の独自性を支持する顧客への訴求が弱まり、3〜6月の客数が苦戦したと説明している。7月以降の商品・販促の修正で客数は回復したが、前半の落ち込みを補えなかった。
百貨店系ブランドも厳しく、SC系を中心とした商品評価損やサプライチェーンコストの上昇が収益を圧迫した。連結売上総利益率は前年同期の60.8%から58.7%へ低下している。システム移行だけでなく、商品と顧客のずれ、在庫、原価という複数の課題が重なった決算と読む必要がある。
さらに、減損損失7億6,500万円を特別損失に計上した。このうち5億5,500万円は「The SHEL’TTER TOKYO」東急プラザ表参道「オモカド」店の閉店に伴うものだ。会社は賃料上昇や中国人インバウンド客の減少などを背景としている。減損は営業損失の内訳ではなく、特別損失である。繰延税金資産の取り崩しも最終損益に影響しており、損失の段階を混同してはならない。
ここからはFASHION SHIFTの経営分析だ。アパレルECでは、新商品投入、販促、受注、在庫引当、倉庫からの出荷が連動する。サイトが注文を受け付けても、顧客へ予定どおり商品が届かなければ販売基盤としては不十分だ。移行計画は画面や機能の完成だけでなく、注文から返品・返金まで一連の業務が成立するかで評価したい。
実務上は、繁忙期を避けた切り替え、段階的な移行、注文集中時の負荷確認、倉庫との在庫整合、旧システムへ戻す条件の事前設定などが検討事項になる。障害時の顧客への案内や問い合わせ対応も、技術復旧と同時に準備する必要がある。これらは一般的な対策であり、同社が実施しなかったと確認された事項ではない。
経営者が追うべきなのは、導入費用と予定日だけではない。未出荷件数、出荷までの日数、在庫差異、問い合わせ、キャンセルなどを部門横断で確認できるか。売上拡大のための投資が顧客体験を損なわないよう、IT、EC、物流、店舗、顧客対応の責任と判断基準を揃えることが重要になる。
ECシステムの刷新は、売上拡大や業務効率化を目指して行うものだ。しかし、システムの移行に失敗すれば、販売機会を失うだけでなく、顧客からの信頼にも影響する。
ECは今やアパレル企業の重要な販売基盤だ。だからこそ、システム刷新はIT部門だけの仕事ではなく、経営者が責任を持って進めるべきプロジェクトではないだろうか。
2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)/2026年10月15日公表
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08261/81767f70/cd34/407e/bed5/8131cbd131e6/140120261014550590.pdf
2027年2月期 第2四半期 決算補足説明資料/2026年10月15日公表
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08261/ccfaeaa8/8224/4ccc/9ef7/ffaf60a9abe9/140120261014550596.pdf
特別損失(減損損失)の計上並びに通期業績予想の修正に関するお知らせ/2026年10月15日公表
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08261/e5b73b03/9642/4609/a600/c2bbf9a16d03/140120261014550602.pdf
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着るスキンケア、LANEIGE×Matin Kim、SNIDEL BEAUTY。三つの事業モデルから、衣料の先に顧客との関係を広げる方法と、異分野へ進出する条件を考える。
10月19日付の繊研新聞「【記者の目】加速する美容消費 ファッションとの協業に商機あり」は、公開部分で、美容に関心を持つSNSコミュニティの活発な情報交換と、美容を意識した商品・ブランド開発の広がりを取り上げた。本稿はその問題提起を起点に、企業の公式発表から三つの事業モデルを比較する。有料本文の未確認部分を補うものではなく、美容市場全体の成長率や協業の収益効果を示す記事でもない。
一つ目は、衣料品そのものに美容の要素を加える方法だ。アルページュは7月10日、Arpege story Originalの「着るスキンケア」を発表した。Tシャツは税込1万1,000円、リブニットタンクは同8,250円。7月8日に名古屋のポップアップで先行発売し、7月16日から全店発売とした。発表日と発売日は異なる。
セラミドNPなどを含む成分を繊維に付着させ、着用時の肌の潤いを提案するという会社説明だ。ここで重要なのは、服を化粧品へ置き換えるというより、日常のベーシック服に別の購入理由を加えている点にある。なお、効能は企業の説明であり、本稿が独自に検証した臨床結果ではない。
二つ目は、専門企業との協業だ。アモーレパシフィックジャパンは8月20日、LANEIGEとファッションブランドMatin Kimの限定コレクション全4種を発表し、9月1日に発売した。クッションファンデーション、フェイスパウダー、リップティント、ミストタイプのローションを展開。限定デザインに加え、バッグやポーチ、リップケースなども用意した。
この事例では、美容商品の機能とファッションのデザイン・携帯する楽しさを組み合わせている。アパレル側が美容商品の開発をすべて内製しなくても、専門性を持つ企業と組み、ブランドの表現を広げる選択肢になる。ただし、今回の販売数量や利益、相互の新規顧客獲得効果は確認できない。
三つ目は、自社の世界観を美容ブランドへ展開する方法だ。マッシュホールディングスは2021年2月9日、マッシュビューティーラボによるSNIDEL BEAUTYのデビューを発表した。同年3月3日、公式オンラインストアとルミネ新宿ルミネ2の1号店で発売。当初はメイクやスキンケアなど85アイテムを打ち出した。これは2026年の新発表ではなく、ファッションのブランド名と美意識を別の商品領域へ広げた先行事例であり、85は現在の商品数ではない。
ここからはFASHION SHIFTの分析だ。服と美容は、別々の市場分類に入っていても、顧客の生活の中ではつながっている。仕事の日の装い、休日の外出、ギフトなど、同じ場面で服、肌、メイク、香りを選ぶことがある。ブランドが既に理解している顧客の好みや生活場面を、美容の提案に生かせる可能性がある。
SNSでは、着こなしとメイクを一つの投稿で紹介しやすい。一方、ファッションのフォロワーがそのまま美容商品の購入者になるとは限らない。商品の品質、使用感、肌との相性など、衣料とは異なる判断材料があるためだ。見た目の統一や話題性だけでは、継続購入まで説明できない。
既存顧客へのクロスセルやLTVの向上も、期待できる可能性と、実績として確認された効果を分けたい。服と美容商品の併買率、購入頻度、再購入、値引き後の利益、在庫回転まで追って初めて、顧客との関係が深まったかを評価できる。SNSで話題になったことを、事業の成功と同一視しない視点が必要になる。
三つの方法は、必要な能力もリスクも違う。機能性衣料では加工の性能や洗濯・使用条件を伝える必要がある。他社との限定協業では契約上の役割、販売期間、残った在庫の扱いが課題になる。自社美容ブランドは、品質管理や継続的な商品開発、問い合わせ対応まで含めた運営体制が求められる。
販売員には、服と一緒に勧める理由に加え、説明できる範囲を共有したい。ECもイメージ写真だけでなく、成分、使い方、注意点など、購入判断に必要な情報を整理する。顧客データを活用する場合も、美容の購入履歴を無条件で他用途へ広げるのではなく、利用目的を踏まえた提案が前提になる。
衣料の販売点数を増やす以外にも、成長の道はある。ただし、新しいカテゴリーを増やすこと自体を目標にせず、自社の顧客が求める価値と、それを届け続けられる事業体制がつながっているかを確かめたい。
ファッションと美容は、一見すると別の事業領域ですが、顧客に提供する価値には共通点があります。服を選ぶことも、スキンケアやメイクを楽しむことも、自分らしくありたい、美しくありたいという気持ちにつながっています。
アパレル企業にとって、美容への展開は単なる新規事業ではなく、既存顧客との関係を深める手段になり得ると思います。
ただし、流行しているから美容商品を扱えばよいわけではありません。自社ブランドの顧客が求めている価値を理解し、その延長線上で商品やサービスを提供できることが重要ではないでしょうか。
繊研新聞「【記者の目】加速する美容消費 ファッションとの協業に商機あり」/2026年10月19日13時更新・公開部分のみ参照
https://senken.co.jp/posts/journalist-eye-261019
株式会社アルページュ「【Arpege story Original(アルページュストーリーオリジナル)】肌に潤いを与えるベーシック服「着る、スキンケア」発売」/2026-07-10発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000093787.html
アモーレパシフィックジャパン株式会社「[LANEIGE] 韓国を代表するファッションブランド「Matin Kim」と初コラボレーション。限定デザインコレクション全4種が9月1日(火)より登場!」/2026-08-20発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000021350.html
株式会社マッシュビューティーラボ(発表者:株式会社マッシュホールディングス)「マッシュビューティーラボから新ブランド「SNIDEL BEAUTY(スナイデル ビューティ)」がデビュー」/2021-02-09発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000875.000018505.html
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2010年と最新通期の売上を公式資料で比較。7社の変化と現在8社の規模から、順位の先にある商品・在庫・顧客接点の競争を読む。ワールド×TSIの統合も、規模と成長力を分けて考える。
10月20日付の流通ニュースは、アパレル企業の売上規模と業界再編を取り上げた。FASHION SHIFTはその報道を起点に、各社の公式IRや有価証券報告書へさかのぼり、2010年と現在の主要企業を比較した。既存の日本アパレル50年史が市場全体を扱ったのに対し、本稿は企業の規模と事業モデルの変化に焦点を当てる。
最初に確認したいのは、2010年もファーストリテイリングとしまむらが大きかったことだ。「昔は総合アパレルが売上上位を独占していた」とは言えない。変化は突然の順位逆転というより、成長する企業の規模、顧客との接点、商品と在庫を動かす仕組みの差が広がった過程として読む方が適切だ。
対象は衣料を主な事業とする日本の主要上場企業グループ8社。スポーツ用品・靴専門、総合生活雑貨、百貨店、ECモールを主業とする企業は両時点とも除外した。一方、対象企業の連結決算に含まれる雑貨、飲食、美容、海外事業などは切り離していない。衣料品だけの国内売上ランキングでも、市場シェアの比較でもない。
過去は2010年に終了した通期を採用し、2月・3月・8月・12月と期末月が異なる。現在は2026年10月20日までに公表された最新通期実績で、2027年の予想や中間期を混ぜていない。過去資料まで確認できた7社と、2011年設立のTSI HDを加えた現在8社を並べる。TSIの前身2社を足して架空の2010年値を作ることはしない。レナウン、イトキンなどは同条件の過去・現在の連結比較を確認できず、順位に含めていない。
確認できた主要企業内の売上順位。全国の全企業を網羅したランキングではなく、国内市場シェアでもありません。単位:億円。
TSI HDは2011年設立のため現在側のみ掲載。過去は2010年に終了した各社の通期、現在は調査日時点で公表済みの最新通期。各社の連結売上高/売上収益からFASHION SHIFT作成。詳細資料は記事末尾。
ファーストリテイリングの連結売上収益は、2026年8月期で3兆9,633億8,900万円。2010年8月期の8,148億1,100万円から約4.9倍になった。ユニクロ国内だけの実績ではなく、海外ユニクロ、GUなどを含む数字であり、日本の市場が同じ倍率で拡大したことを意味しない。
しまむらは2026年2月期7,000億3,400万円、アンドエスティHDは同3,043億5,100万円。商品と顧客接点をつなぐ小売・直販企業が大きな規模を持つ。ただし、仕入れ主体のしまむらと、企画・生産管理まで一体で進めるSPAを、同じ運営モデルとみなすのは粗い。呼び名以上に、何を自社で判断し、どこを取引先と担うかを見る必要がある。
ワールドは2,840億1,400万円、オンワードHDは2,368億400万円、パルグループHDは2,347億400万円。パルの数字には3COINSなどの雑貨事業も含まれる。会社の売上規模を、そのままアパレルブランドだけの競争力と読み替えることもできない。
灰色=2010年、黒=最新通期。線形の横軸は各ブロック内で共通。読みやすさのため、ファストリと他6社では横軸の上限を変えています。企業名横の率は公表値から計算した名目売上の増減率。
海外事業、為替、買収・売却、会計基準や決算期の違いを含みます。増減率は既存事業の実質成長率ではありません。TSI HDは同一条件の2010年値がないため非掲載。
| 企業・系譜 | 過去 | 最新通期 | 売上増減率 | 営業利益率 過去 → 現在 |
|---|---|---|---|---|
| ファーストリテイリング | 8,148.11億円 2010年8月期 | 39,633.89億円 2026年8月期 | +386.4% | 16.2% → 18.7% |
| しまむら | 4,296.51億円 2010年2月期 | 7,000.34億円 2026年2月期 | +62.9% | 8.6% → 8.8% |
| ポイント→アンドエスティHD | 976.84億円 2010年2月期 | 3,043.51億円 2026年2月期 | +211.6% | 17.3% → 5.4% |
| ワールド | 3,141.17億円 2010年3月期 | 2,840.14億円 2026年2月期 | -9.6% | 未確認 → 5.5% |
| オンワードHD | 2,486.34億円 2010年2月期 | 2,368.04億円 2026年2月期 | -4.8% | 1.8% → 4.9% |
| パル→パルグループHD | 698.79億円 2010年2月期 | 2,347.04億円 2026年2月期 | +235.9% | 未確認 → 11.6% |
| TSI HD | 対象外(設立前) | 1,670.85億円 2026年2月期 | — | 未確認 → 2.6% |
| 三陽商会 | 1,120.57億円 2010年12月期 | 584.48億円 2026年2月期 | -47.8% | 未確認 → 2.2% |
率は百万円単位の公表値からFASHION SHIFTが算出し、小数第1位に丸めた参考値。利益率は各社の営業利益を使用し、事業利益・経常利益とは区別。ワールドの現在値はIFRS第18号の表示変更を反映した統合報告書の営業利益による。過去の営業利益が一次資料で未確認の欄は埋めていない。
オンワード、ワールド、三陽商会などは、多様なブランドの商品開発や販売ノウハウを蓄積し、百貨店を含む販路で存在感を築いてきた。ただし、総合アパレルを一律に「卸だけの企業」とするのは正確ではない。ワールドは今回の統合資料でも、1992年のSPARCS構想以来の事業モデル変革に言及している。企業の出自と、現在の仕組みは分けて考えたい。
比較期間には、企業そのものの姿も変わった。ポイントは2013年にトリニティアーツなどと経営統合し、アダストリアを経て2025年9月にアンドエスティHDへ商号変更した。売上の約3.1倍という変化には、その事業範囲の拡大も含まれる。パルも現在は持株会社の連結値であり、ブランド構成は当時のままではない。三陽商会も決算期変更やバーバリーのライセンス事業終了を経ており、数字の縮小を同じ商品の販売力低下だけで説明できない。
ここからはFASHION SHIFTの分析だ。SPAの強みは、単に中間流通を減らすことだけではない。顧客の反応を商品企画に戻し、発注、追加生産、店舗配分、値下げまでを一つの判断として動かせることにある。自社店舗やECは売場であると同時に、顧客が何を選び、何を選ばなかったかを知る接点になる。
一方、直販なら必ず高収益になるわけでもない。店舗費用や在庫の責任は重くなる。ポイントと現在のアンドエスティHDの比較でも、売上規模の拡大と営業利益率の改善は同じ動きではない。逆にオンワードは比較した2時点で売上が小さくても、営業利益率は高い。規模、収益性、成長の内訳を分けて評価する必要がある。
この比較は名目円によるもので、物価調整をしていない。海外展開、為替、買収や事業売却、会計基準の変更も含む。ファストリとワールドは日本基準からIFRSへ移行し、ワールドと三陽商会は期末月も変わった。長期の増減率は、既存店成長率や国内の販売数量を表すものではない。
両社は10月14日、共同持株会社「インフィニティ・ユナイテッド」を2027年3月1日に設立する経営統合を発表した。株主総会や関係当局の承認等を前提とする予定で、まだ統合済みではない。直近通期の売上を足すと4,510億9,900万円となり、今回の対象企業内ではしまむらとアンドエスティHDの間に位置する規模だ。ただし、異なる会計基準の過去実績を足した参考値であり、新会社の確定売上や業績予想ではない。
既報では統合の概要と顧客価値を扱った。本稿で注目するのは、異なるブランドを束ねる企業が、共通基盤への投資規模を持つ意味だ。IT、物流、生産・調達などを共有しても、各ブランドの商品が顧客に選ばれなければ持続的な成長にはならない。統合で変わる順位と、事業の競争力が変わることは別の段階にある。
老舗企業が持つブランド、商品開発力、販売ノウハウは資産である。問われるのは、それを店舗とECの分断、部門ごとの在庫判断、古い商習慣の中に閉じ込めないことだ。顧客との直接接点を増やし、購買データをCRMや商品企画へ戻す。ブランドごとの役割を明確にし、投資を続ける領域と見直す領域を判断する。
評価指標も、グループ売上だけでなく、粗利益、値引き、在庫、継続購入、投資に対する収益を組み合わせたい。M&Aは成長や効率化の手段になり得るが、買収による増収と、既存ブランドの改善は分けて確かめる。勢力図の変化を、自社の顧客へ価値を届ける仕組みを見直す材料にしたい。
関連記事:ワールドとTSIの経営統合と顧客価値 / 関連記事:日本アパレル50年史
日本のアパレル業界には、かつて総合アパレル企業が大きな存在感を持っていた時代があります。しかし現在、売上規模と成長力で強い存在感を示しているのは、SPAや直販モデルを持つ企業です。
この変化は、単に企業の順位が入れ替わったという話ではありません。顧客との接点、商品開発、在庫、販売チャネルを誰がコントロールするかという、ビジネスモデルそのものの変化だと考えています。
一方、老舗アパレル企業にも、長年築き上げたブランド、商品開発力、販売ノウハウがあります。その資産をどう生かし、現代の顧客行動に合わせて事業モデルを変革できるかが重要です。
経営統合で規模を大きくするだけでは、成長が約束されるわけではありません。大事なのは既存の事業構造を守ることではなく、顧客に価値を届ける仕組みを変え続けることではないでしょうか。
流通ニュース「アパレル売上高ランキング/ユニクロが1位独走、来期はファッション業界再編の動きも」/2026年10月20日14時36分公開
https://www.ryutsuu.biz/strategy/s102046.html
2010年8月期 決算短信/2010-10-08公表・発行
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/tanshin201008_4q.pdf
2026年8月期 決算短信〔IFRS〕/2026-10-08公表・発行
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/tanshin202608_4q.pdf
2011年2月期 決算短信/前年2010年2月期実績欄/2011-03-30公表・発行
https://www.shimamura.gr.jp/assets-c/uploads/20110330_H23_02FStanshin.pdf
2026年2月期 決算短信/2026-03-30公表・発行
https://www.shimamura.gr.jp/assets-c/uploads/73_04_tanshin.pdf
キッザニア東京 ファッションブティック デザインコンテストを開催(会社概要の2010年3月期連結売上)/2010-09-22公表・発行
https://corp.world.co.jp/news/company/2010/3746/
統合報告書2026/11カ年財務サマリー p.62/2026-09(発行月)公表・発行
https://corp.world.co.jp/ir/pdf/2026_integrated_report.pdf
2010年2月期 決算短信/2010-04-09公表・発行
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/ir_20100409.pdf
2026年2月期 決算短信/2026-04-09公表・発行
https://www.onward-hd.co.jp/ir/library/b7d6166824b8a08a0cda8ffac5bc7b1a2f0f466f.pdf
POINT INC. 2011年2月期 決算短信(英語)/前年2010年2月期実績欄/2011-04-04公表・発行
https://www.adastria.co.jp/archives/002/202102/e5d648021c62a84b35fd953df4c10db8860907828ff4d5ad0f7a04e327fc3328.pdf
Summary of Consolidated Financial Results FY ended February28,2026/2026-04-06公表・発行
https://www.andst-hd.co.jp/archives/005/202604/6c0e2a555d2717529ac164da90dc9b74281b4c4642413de14a5223e0bc61a844.pdf
2025年2月期 第2四半期決算説明会資料/業績推移 p.17/2024-10-17公表・発行
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2024/10/65c4de60a555eca26a6ecd7af57eeb9d.pdf
2026年2月期 決算短信(差替え)/2026-04-08(元公表4月7日)公表・発行
https://www.palgroup.holdings/wp/wp-content/uploads/2026/04/e8f735649f2d0acdc2b1c16ae5f76c58.pdf
2026年2月期 決算短信/2026-04-10公表・発行
https://www.tsi-holdings.com/pdf/260410_ZENBUN.pdf
三陽商会 第72期有価証券報告書/主要な経営指標等の推移 p.2(2010年12月期実績)・EDINET提出書類の保存PDF/2015-03-27公表・発行
https://f.irbank.net/pdf/E00593/ir/S1004EPX.pdf
2026年2月期 決算説明資料/2026-04-14公表・発行
https://www.sanyo-shokai.co.jp/assets/pdf/FY2026_Financial_Results_Explanatory_Material.pdf
アンドエスティHD:会社概要・沿革/公表日表記なし、2026年10月20日確認
https://www.andst-hd.co.jp/aboutus/outline/
ワールド・TSIHD:共同持株会社設立による経営統合のお知らせ/2026年10月14日
https://www.tsi-holdings.com/pdf/261014_Business_integration.pdf
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AI関連の4指標を短期賞与の調整要素に採用し、最大±10%を反映。対象外の役員と賞与上限もある。ラルフ ローレンの制度から、AIの学習・導入と事業成果を分けて考える。
ラルフ ローレンは2026年度の短期インセンティブ制度で、従来の企業市民活動・サステナビリティ関連の調整指標をAI関連のスコアカードへ置き換えた。Reutersが10月15日に報じた動きだ。焦点は、AIが人事評価を自動で行うことではなく、経営幹部の賞与を決める際に、会社のAI学習・活用基盤づくりを評価する仕組みを組み込んだ点にある。
根拠となる2026 Proxy Statement(株主総会の委任状説明書)は6月18日にSECへ提出されている。対象の2026年度は2026年3月28日終了の同社会計年度であり、日本の2026年4月からの年度ではない。10月15日は報道日で、同日に制度を新たに発表したという意味ではない。導入を決めた具体的な日付までは今回の資料から確認できない。
短期の現金賞与制度であるEOAIPは、財務目標を土台にしている。2026年度の評価ウエートは全社売上40%、調整後営業利益率40%、戦略的成長領域の売上10%、調整後販管費10%。AIスコアカードは、この財務評価に追加する「戦略目標の調整要素」と位置づけられた。
AI関連の目標達成状況に応じて、対象者の賞与を5%または10%増減できる。最大幅は±10%だが、基本給や長期株式報酬を含めた報酬総額の10%をAIに連動させる制度ではない。調整を含めた賞与の上限は、目標賞与額の200%である。
対象は同資料で開示される主要経営幹部(NEO)のうち、創業者ラルフ・ローレン氏を除く5人。資料上の役職ではPatrice Louvet(CEO)、Robert Ranftl(COO)、Justin Picicci(CFO)、Halide Alagoz(商品・マーチャンダイジング責任者)、David Lauren(ブランド・イノベーション責任者)だ。ローレン氏は短期賞与制度には参加するが、この調整要素は適用されない。すべての取締役や社員に同じ仕組みが適用されるという説明ではない。
スコアカードが測るのは、AIへの理解と、それを仕事に生かせる状態を整えるための指標だ。内容は次のように整理できる。
表は横にスクロールして確認できます。
| 区分 | 開示された指標の内容 | 2026年度結果 |
|---|---|---|
| 学習修了率① | コーポレート従業員向けAI学習プログラムの修了率 | 目標超過 |
| 学習修了率② | AIを含むグローバル情報セキュリティ研修の従業員修了率 | 目標超過 |
| 従業員調査① | 日常業務でAIツールを使うための十分な研修を受けたと感じるか | 目標超過 |
| 従業員調査② | 全社の従業員が力を発揮できる環境に関する総合指標(Overall Enablement) | 目標超過 |
二つ目の研修はAIだけの講座ではなく情報セキュリティ研修であり、四つ目もAI単独の生産性指標ではない。具体的な数値目標や実際の修了率・アンケート得点は、同スコアカードでは示されていない。労働時間や在庫削減、AI単独の増益額を測った四つの指標、と説明するのは誤りになる。
人材・報酬を担当するTalent Committeeは、4指標すべてが目標を上回ったと判断し、10%の上方調整を承認した。ただし上限があるため、実際の支給額が一律10%増えるわけではない。資料では財務評価の支給水準が目標額の197%、AI調整の対象者は上限の200%、対象外のローレン氏は197%と示される。
また、同委員会は会社の財務・戦略面の実績で賞与を判断し、個人の業績は賞与決定で考慮しないと説明している。AIの使用回数で一人ひとりを採点した制度と捉えるのも適切ではない。
ここからはFASHION SHIFTの分析だ。AIを経営幹部の評価に入れる意味は、技術の導入をIT部門の作業で終わらせず、組織の優先課題として示すことにある。ツールを契約しても、部門ごとに異なる業務手順やデータの持ち方が変わらなければ、会社全体の仕事は変わりにくい。
研修予算だけでなく、誰が業務を見直すのか、どの情報を使えるのか、現場の試行に時間を配分できるのか。こうした判断は、現場の熱意だけでは進めにくい。報酬制度は、その責任を経営の議題に引き上げる方法になり得る。一方、本件だけから小売業界全体で同じ評価が標準になったとは言えない。
今回置き換わったのは短期賞与の調整指標であり、サステナビリティ施策そのものを終了したという意味でもない。同じ説明書は、取締役会が引き続きサステナビリティを事業戦略の重要要素として監督することも記している。評価制度の変更と、事業方針の廃止は区別したい。
日本企業への示唆は、この制度をそのまま移すことより、AIで変える業務と責任者を決めることにある。例えばMD・発注では需要予測の誤差と欠品、在庫移動や値下げでは在庫回転と粗利益を追う。ECの商品情報作成は制作時間と修正率、CRMや広告は顧客反応と利益への寄与を分けて確認する。
カスタマーサポートなら回答までの時間に加え、誤回答や再問い合わせも見る。本部の事務処理は削減した時間だけでなく、確認・差し戻しが増えていないかを確かめる。いずれも本稿が提案する評価例であり、ラルフ ローレンのAIスコアカードが採用した項目ではない。
学習・導入の指標は、変革の初期段階を捉えるために意味がある。その先で事業成果を判断するには、導入前の水準、対象業務、測定期間、品質の条件を揃えたい。売上や利益が改善しても、価格変更や気温、広告投資などの影響を切り分けずに、すべてをAIの成果とすることはできない。
AIを経営者の責任として位置づける動きは、人材育成と組織運営を変える可能性がある。ただし、学んだこと、使える環境が整ったこと、事業成果が出たことは別の段階だ。どの段階を評価する制度なのかを明確にすることが、実装の出発点になる。
今回のラルフ ローレンの取り組みで注目したいのは、AIを導入するかどうかではなく、AI活用を経営者の評価にまで組み込んだことです。
日本でもAI研修を行う企業は増えています。しかし、研修を受けたことと、会社の仕事が変わることは別です。アパレル企業なら、商品企画、発注、在庫移動、値下げ、EC運営、顧客対応など、AIで改善できる可能性のある業務は多くあります。
それでも、従来のやり方を変えることへの抵抗があり、部署をまたぐ改革になれば、なおさら進みにくい。だからこそ、私はAI活用を現場任せにするべきではないと思います。経営幹部が自ら学び、業務を理解し、AIを組み込んだ新しい仕事の進め方を設計する。そこまで責任を持つことが重要です。
一方、AI研修の受講率や利用回数だけでは、本当の成果は測れません。最終的には、どれだけ労働時間や在庫が減ったのか、売上や利益が改善したのか。事業成果で評価する仕組みが必要だと考えます。
AIを使える社員を増やす段階から、AIで成果を出せる組織をつくる段階へ。日本のアパレル企業にも、そんな経営の転換が求められているのではないでしょうか。
Ralph Lauren Corporation:2026 Proxy Statement/2026年6月18日付・印刷64〜65、76〜77ページ(企業公式PDF)
https://investor.ralphlauren.com/static-files/f8b651cd-0182-4c79-9504-5bf8577c21ac
SEC:Ralph Lauren Corporation DEF 14A/2026年6月18日提出(制度・AIスコアカード・対象者)
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1037038/000114036126025788/ny20071304x1_def14a.htm
SEC:提出記録/Filing Date 2026年6月18日
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1037038/000114036126025788/0001140361-26-025788-index.htm
Reuters:Ralph Lauren ties executive payouts to AI in sign of retail’s shifting priorities/2026年10月15日報道
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/ralph-lauren-ties-executive-payouts-ai-sign-retails-shifting-priorities-2026-10-15/
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。

Gucciの2026年7〜9月売上高は12億9,100万ユーロ、比較可能ベースで6%減だった。新しい商品が届き始めても再建は一足飛びには進まない。過去の成長とクリエイティブの変遷から、ブランドを再び選んでもらう難しさを考える。
Keringが2026年10月22日に公表した第3四半期売上によると、Gucciの7〜9月売上高は12億9,100万ユーロ。前年同期比は報告ベースで4%減、為替と連結範囲の影響を調整した比較可能ベースで6%減だった。Kering全体の売上高33億4,500万ユーロとは別の数字である。
Gucciの直営小売は比較可能ベースで9%減。卸売・その他は35%増だった。卸売単独では1億2,000万ユーロ、45%増であり、「卸売・その他」の伸び率と混同しない。販売チャネルによって動きが異なり、ブランド全体の数字だけでは直営店の回復を判断できない。
会社は来店客数が主な制約として残る一方、新コレクションによって購入率や平均価格、平均客単価が改善したと説明した。こうした説明は回復の手掛かりにはなるが、それだけで継続的な増収や利益の改善が確定したわけではない。
公式資料によるGucciの通期売上高は、2022年104億8,700万ユーロ、2023年98億7,300万ユーロ、2024年76億5,000万ユーロ、2025年59億9,200万ユーロだった。いずれも通期の報告ベースの金額であり、2026年第3四半期単独の数字をそのまま並べて年間規模の減少と比較することはできない。為替の影響も含まれる。
かつてのGucciは、ブランドの歴史と現代のカルチャーを組み合わせて存在感を高めた。The North Faceとの協業ではアウトドアの機能的な装いを取り込み、adidasとのコレクションは2022年6月7日に発売。服、バッグ、シューズなどへ両者の意匠を展開した。
これらの協業の存在や商品展開は公式情報で確認できる。一方、若年顧客の比率やコラボ単独の売上寄与は確認できない。「若い世代を引きつける勢いがあった」という評価は、後述する編集長の見方として扱う。
Alessandro Micheleは2022年11月に退任。Keringは2023年1月28日にSabato De Sarnoの起用を発表し、2025年2月6日に協業の終了を発表した。新しい方向をつくるトップの交代が続いてきた。
Balenciagaを率いたDemnaのGucciアーティスティック・ディレクター就任は2025年3月13日に発表され、始動は同年7月初旬とされた。Keringの2025年通期決算発表によると、2025年9月に提示した「La Famiglia」は2026年1月初旬から順次展開された。就任発表、仕事の開始、顧客が商品を購入できる時点は異なる。
2026年7〜9月はすでに新しい商品の投入が進む期間だが、商品構成全体の切り替えや顧客の反応には時間差がある。今回の減収だけから、Demnaの起用が失敗したと評価することはできない。
ブランド再建には、新しい表現を示すことに加え、商品が店頭に届き、顧客が価格や品質を納得して購入し、次の購入へつながるまでの運営が必要になる。話題を生むコレクションと、継続的に選ばれるバッグや服を育てる仕事は、重なりながらも同じではない。
直営店の来店が弱い中では、新規顧客を呼ぶ施策と既存顧客への提案の両方が問われる。購入率や客単価の改善が続くか、来店の回復につながるか、主力商品が繰り返し選ばれるか。売上だけでなく、こうした動きを継続して見ることが必要だと考える。広告投資を増やせば解決する、といった単一の処方箋は示せない。
Miu Miuの最新決算は、急成長した前年との比較で四半期売上が減少した局面であり、Gucciの数年にわたる規模縮小と同一ではない。ただし、いずれも一時的な注目を長期の顧客関係へ変えることが経営の核心になる。新しいデザイナーの発信と、商品・店舗・接客を通じた体験がつながるかが、再成長を見る重要な視点になる。
グッチの苦戦が長引いている。かつてはザ・ノース・フェイスやアディダスとのコラボレーションが大きな話題を呼び、アパレルもファッション性が高く、若い世代からも支持を集めていた。
あの頃のグッチには、ラグジュアリーブランドでありながら、ストリートカルチャーや若者の感性を取り込む勢いがあったと思う。
ブランド再建に向けて、バレンシアガを率いたデムナを新たに迎えた。しかし、今回の決算でも売上はマイナス成長が続いている。もちろん、クリエイティブの刷新が売上に反映されるには時間がかかる。
それでも、かつてあれほどの熱狂を生み出したブランドが、再び消費者を惹きつけることの難しさを感じる。新しいデザイナーの起用だけで、ブランドは再生できるのか。今後のデムナによる商品展開と、それに対する顧客の反応に注目したい。
Kering Revenue for the 3rd quarter of 2026/2026年10月22日
https://www.kering.com/en/news/revenue-for-the-3rd-quarter-of-2026/
2022 Annual Results/2023-02-15
https://www.kering.com/assets/front/documents/Press%20release%20-%202022%20Annual%20Results%20-%2015%2002%202023.pdf
2023 Universal Registration Document/2024; exact publication day not verified
https://www.kering.com/api/download-file/?path=Kering_2023_URD_PDF_format_2235e8e3b5.pdf
2025 Results/2026-02-10
https://www.kering.com/api/download-file/?path=Kering_2025_Results_Press_Release_bd7165a4ea.pdf
Kering クリエイティブ責任者に関する公式発表/2023-01-28
https://www.kering.com/en/news/sabato-de-sarno-appointed-creative-director-of-gucci/
Kering クリエイティブ責任者に関する公式発表/2025-02-06
https://www.kering.com/en/news/gucci-ends-its-collaboration-with-sabato-de-sarno/
Kering クリエイティブ責任者に関する公式発表/2025-03-13
https://www.kering.com/en/news/demna-appointed-artistic-director-of-gucci/
Kering クリエイティブ責任者に関する公式発表/2026-02-10
https://www.kering.com/jp/news/2025-results-sequential-improvement-unlocking-the-next-phase-of-sustainable-and-profitable-growth/
adidas x Gucci is here/2022年6月7日
https://news.adidas.com/originals/adidas-x-gucci-is-here/s/73828335-7f0b-4f46-8d9a-ba0af35277c5
Gucci The North Face x Gucci 公式コレクション紹介
https://www.gucci.com/us/en/st/stories/article/the-north-face-gucci-campaign-wave-2
Reuters Gucci sales slip again in latest blow to Kering recovery plan/2026年10月22日
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/guccis-sales-drop-5-third-quarter-weak-chinese-demand-dampens-turnaround-hopes-2026-10-22/
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Miu Miuの2026年7〜9月の小売売上高は恒常為替で2.7%減。一方、1〜9月累計は0.8%増だった。高い前年実績を踏まえ、四半期の減速と長期的なブランド経営の課題を分けて考える。
Prada Groupが2026年10月22日に公表した1〜9月売上開示によると、Miu Miuの小売売上高は11億5,578.8万ユーロだった。前年同期の11億7,823.7万ユーロに対し、報告ベースでは1.9%減、為替の影響を調整した恒常為替ベースでは0.8%増となった。対象は直営店とECによる小売売上で、卸売などを含むブランド全体の売上とは区別する。
7〜9月の第3四半期単独では、恒常為替ベースで2.7%減。説明会資料はこれを3%減と丸めて表示している。同じ資料の1〜9月累計の1%増も、詳細開示の0.8%増を丸めたものだ。「3%減」は年間や累計の数字ではない。
前年2025年の小売売上は、1〜9月累計で41.4%増、第3四半期単独で28.6%増だった。報道や説明資料の41%増、29%増に対応する。今回の減速は、すでに大きく成長した前年との比較でもある。
会社は第3四半期について、高い比較対象に加え、地域構成や中東情勢の影響を挙げ、中東の悪影響を除くとおおむね横ばいだったと説明している。これは会社側の説明であり、個々の要因の寄与度を独立に実証したものではない。プラダグループ全体にはVersaceの連結寄与もあり、その成長率をMiu Miuの勢いと同一視することもできない。
同じ1〜9月累計で見ると、恒常為替ベースの成長率は2023年49.5%、2024年97.3%、2025年41.4%。2024年には前年のほぼ2倍へ拡大した。成長率の低下は確認できるが、率が下がることと、それまで積み上げた売上規模を失うことは別である。
2023年の会社発表は、WanderやArcadieなどのバッグ、コレクションやキャンペーンを通じた認知と顧客関係の強化に言及した。2024年にはアート企画「Tales & Tellers」など文化との接点も紹介。2026年の資料では、新しいレザーグッズと既存のアイコン商品、音楽を軸にしたMiu Miu Vinyl Clubなどを説明している。商品だけでなく、ブランドに触れる機会を継続してつくってきたことが分かる。
ただし、SNSや特定企画が売上を何%押し上げたかは確認できない。会社が紹介する活動と、売上への因果関係は分けて読む必要がある。
急成長期の難しさは、需要の勢いを前提にした店舗投資や在庫、人員の計画が、そのまま長期の適正規模とは限らないことだ。短期の話題に合わせて供給を増やしすぎれば、販売が落ち着いた際に値引きや在庫負担へつながる可能性がある。これはブランド経営に共通するリスクであり、Miu Miuが実際に過剰在庫を抱えていると確認したものではない。
持続的な成長には、新規顧客の獲得だけでなく、定番商品の継続購入、修理や接客を含めた信頼関係、無理のない供給量が重要になると考える。話題性のある商品から入った顧客が、数年後も何を理由にこのブランドを選ぶのか。その問いを、成長しているうちから商品と店舗の運営へ落とし込む必要がある。
Gucciは過去の高成長から再建へ取り組む段階にあり、Miu Miuの今回の四半期減収と同じ状態ではない。共通する論点は、関心を集める力を継続的な購買へ変える難しさだ。今回だけで「ブーム終了」と結論づけず、今後の顧客の継続購入や地域別の動向を見極めたい。
ファッションブランドには、勢いが勢いを呼ぶ時期がある。商品が話題になり、SNSで拡散され、新しい顧客が次の顧客を呼ぶ。ミュウミュウは、まさにそうした成長を遂げてきたブランドの一つだと思う。
しかし、ブランド経営で難しいのは、その人気を維持することだ。かつてのグッチも、若い世代から支持を集め、ファッション業界をリードしていた。そうしたブランドが長い苦戦を強いられていることに、再び関心を引きつける難しさを感じる。
一度ブームが過ぎ、消費者の関心が別のブランドへ移ると、人気を取り戻すのは容易ではない。広告宣伝費やマーケティング投資も、それまで以上に必要になる可能性がある。だから私は、一時的な爆発的成長よりも、長く続く緩やかな成長を目指すことが重要だと考えている。
ヒット商品や話題性だけに頼らず、定番商品を育て、顧客との関係を深め、繰り返し購入してもらえるブランドをつくる。成長しているときこそ、その先を考えるべきなのだと思う。
もちろん、今回の四半期減収だけでミュウミュウのブームが終わったと判断するのは早い。急成長してきたブランドだからこそ、ここからどのような成長曲線を描くのかに注目したい。
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2023/公表 2023-10-31/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2023/inglese/e-Announcement%20of%20the%20Consolidated%20Revenues%20for%20the%20period%20ended%20September%2030%202023.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2024/公表 2024-10-30/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2024/Inglese/9M/e%20-%20Announcement%20of%20the%20Consolidated%20revenues%20for%20the%20period%20ended%20September%2030%202024.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2025/公表 2025-10-23/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2025/e-Announcement-of-the-Consolidated-revenues-for-the-period-ended-September-30-2025.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine-Month Period Ended September 30, 2026/公表 2026-10-22/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2026/inglese/e-Announcement-of-the-Consolidated-revenues-for-the-period-ended-September-30-2026.pdf
Prada Group 9M2026 analyst presentation/2026年10月22日
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/investors/9M-2026/Prada-Group-9M26-analyst-presentation.pdf
Prada Group 9M2023 ブランド活動/2023年10月31日
https://www.pradagroup.com/en/news-media/press-releases-documents/2023/23-10-31-prada-group-results-9m.html
Prada Group 9M2024 ブランド活動/2024年10月30日
https://www.pradagroup.com/en/news-media/press-releases-documents/2024/24-10-30-prada-group-2024-9m-revenue.html
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10月30日発売の「UNIQLO F.RISSO」は、セーター5型と小物2型を展開する。デザイナーの表現を製造技術と販売基盤で商品に変える協業は、話題づくりを超えて何を生み出せるのか。
ユニクロは2026年10月20日、フランチェスコ・リッソとの「UNIQLO F.RISSO」ニットウェアカプセルコレクションを発表した。発売予定日は10月30日。フルラインナップは105店舗と公式オンラインストアで取り扱う予定だ。発表と発売は別の日であり、記事公開時点では発売前となる。
2026年夏に続く第2弾で、計7アイテムを展開する。公式価格はニット3,990〜4,990円、ビーニー1,500円、ソックス590円。ただし、7型すべてが3Dニットという意味ではない。3Dニット技術を使うセーター5型に、ビーニーとヒートテックソックスを加えた構成で、小物2型は3Dニットの対象外と明記されている。
公式説明は、薄手のタートルネックやモックネックポロ、ボリュームを楽しむVネックやボートネックなどを紹介する。ヴィンテージニットを着想源とし、配色と立体的なシルエットを通じて日常の装いに変化を加える提案だ。
3Dニットは、立体的に編み上げることで、肌あたりとシルエットの自由度を両立させる技術だ。今回の公式発表は、機械の精密さを使いながら、手仕事を思わせる自然な表情を目指したというリッソの制作意図を説明している。
「縫い目のない」という表現にも条件がある。公式注記では、ラベル資材の取り付けや補強目的など、一部に縫製を用いる場合がある。完全に縫製工程が存在しない商品や、製造コストを必ず引き下げる技術とまで解釈してはいけない。
製造技術の経営的な価値は、工程の合理化だけでは測れない。従来の設計では表現しにくかった形や着心地を、顧客が選ぶ理由に変えられるかが重要になる。今回の協業は、技術の機能説明を、着たいと思える商品へ翻訳する試みとして読める。
リッソは2016〜2025年にマルニのクリエイティブ・ディレクターを務めた。GUは2026年1月8日に同氏のクリエイティブ・ディレクター起用を発表している。UNIQLOでの個別協業と、GUでの役割は分けて理解する必要がある。
ユニクロとリッソの関係は今回が初めてではなく、2022年には「UNIQLO and MARNI」を手掛けている。ユニクロには、2017年秋冬に始まったJW ANDERSONなど長期にわたる協業の蓄積もある。共通するのは、外部の創造性と、商品を一定の品質・価格で届ける事業基盤を組み合わせる点だ。一方、今回のニットに焦点を絞った企画と、長期協業全体の展開は、対象商品や継続期間が異なる。同じ成功モデルだと結論づける段階ではない。
協業は新しい顧客に接してもらう機会になり得る。普段とは異なる色や形を入り口に、店舗やECへ訪れる理由が増える可能性がある。ただし、協業単独の売上、新規顧客数、利益は確認できず、効果が実証されたとは記載しない。
経営上は、発売直後の話題だけでなく、継続して着られるか、品質や価格に納得が得られるか、その後もブランドを選んでもらえるかを見たい。デザイナーの表現を量産へ落とし込む過程で得られる知見も、将来の商品開発の資産になり得る。
ただし、今回の商品が通常商品へ転用されると決まったわけではない。顧客の反応や製造上の学びを次の開発へつなぐ仕組みを持てるかという、FASHION SHIFTの分析である。技術と感性の接続を、一度の販売で終わらせない運営が問われる。
ユニクロのデザイナー協業で注目したいのは、単に有名デザイナーの名前を借りて商品を売ることではない。
ユニクロには、素材開発、生産技術、品質管理、世界規模の販売基盤がある。そこにデザイナーの感性が加わることで、通常の商品開発だけでは生まれにくい商品や、新しい顧客との接点をつくることができる。今回の3Dニットは、その分かりやすい例だと思う。
高い技術力があっても、消費者に欲しいと思ってもらえなければ売れない。一方で、優れたデザインも、価格や品質、生産体制が伴わなければ大きな事業にはならない。デザインと製造技術の両方を組み合わせて、手の届く価格で提供する。そこにユニクロの強さがあるのではないか。
コラボレーションは将来の商品開発のヒントを得る機会にもなり得る。話題づくりだけで終わらず、その後の商品開発やブランド価値につなげられるかが重要だ。
株式会社ユニクロ:MADE FOR DREAMING『UNIQLO F.RISSO』Knitwear Capsule Collection 2026/2026年10月20日11時
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000076227.html
ユニクロ公式プレスリリース:UNIQLO F.RISSO Knitwear Capsule Collection 2026/2026年10月20日
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2026/10/made_for_dreaminguniqlo_frisso_1.html
ユニクロ公式:UNIQLO F.RISSO 2026年ニットウェアカプセルコレクションの販売について/閲覧2026年10月24日
https://faq.uniqlo.com/articles/Knowledge/100015816
ユニクロ公式:フルラインナップ取扱い店舗/閲覧2026年10月24日
https://www.uniqlo.com/jp/ja/special-feature/collaboration/uniqlo-f-risso/26fw/store
ファーストリテイリング:ジーユーのクリエイティブ・ディレクターにフランチェスコ・リッソ氏を任命/2026年1月8日
https://www.fastretailing.com/jp/group/news/2601081538.html
ファーストリテイリング:新しいジーユー、はじまる。2026年秋冬コレクション/2026年7月14日
https://www.fastretailing.com/jp/group/news/2607140800.html
ユニクロ:2026年サマーカプセルコレクション/2026年6月4日
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2026/06/made_for_dreaminguniqlo_frisso.html
ユニクロ:ホールガーメント技術による革新的なニット/2018年8月30日
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2018/08/18083011_3dknitfinal.html
島精機製作所:WHOLEGARMENT技術紹介/閲覧2026年10月24日
https://www.shimaseiki.co.jp/wholegarment/
ファーストリテイリング:UNIQLO and JW ANDERSON Collection/2017年7月18日
https://www.fastretailing.com/jp/group/news/1707181800.html
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10月23日、ケリング株は取引中に約16%下落した。グループは2026年通期で少なくとも125店舗の純減を計画する。ブランド再建に必要な時間と、投資家が求める改善の速度をどう両立するか。
Reutersは2026年10月23日、ケリング株が取引中に約16%下落したと報じた。この記事で扱う16%は終値の確定下落率ではない。
前日の公式売上発表では、Gucciの2026年7〜9月売上高は12億9,100万ユーロ、比較可能ベースで前年同期比6%減、報告ベースで4%減だった。会社側は来店客数が主な制約と説明する。株価下落をこの一つの数値だけで説明することはできないが、再建の進捗に対する市場の厳しい反応が表れた局面といえる。
Keringの10月22日公式資料によると、2026年1〜9月の店舗網は128店の閉鎖と23店の開設により、105店舗の純減となった。グループは従来の通期100店舗純減目標を前倒しで上回り、2026年通期では少なくとも125店舗の純減を計画する。
これはGucciだけの125店閉鎖でも、今後さらに125店を閉めるという意味でもない。対象はグループ全体で、開店と閉店を差し引いた年間の純減である。会社は2025年にも75店舗を純減させたと説明しており、店舗網の最適化は継続的な経営課題となっている。
会社は2026年の経常営業利益率(非経常項目を除く営業利益率)の改善目標を維持し、効率化を進めながらブランドの魅力への投資を続ける方針を示した。利益率改善の方針と、その実現を確認した決算実績は別である。
ブランドは新しい商品を発表した瞬間に売上が戻るわけではない。商品構成を変え、顧客に伝え、店舗やECで購入され、再購入へつなげるまでには時間がかかる。一方、投資家は数四半期ごとの数字から、計画が前に進んでいるかを判断する。
株価には、現在の売上だけでなく、将来の利益やキャッシュフローへの期待、投資に見合う収益が得られるまでの時間も織り込まれる。大幅な値動きから読み取れるのは評価の変化であって、再建が不可能だという確定的な結論ではない。会社の計画、報道で紹介される市場の評価、編集部の分析を分ける必要がある。
不採算拠点の見直しは、賃料や人員配置、在庫配分の効率を改善する可能性がある。ただし、契約解約や移転などの費用、顧客が訪れる場所を失う影響も検討しなければならない。125店舗の純減がいくらの利益改善を生むかは、今回確認した資料では特定できない。
店舗は販売拠点であると同時に、接客や商品体験を通じて信頼関係を築く場でもある。閉鎖する店舗の顧客を別店舗やECへ引き継げるか、残る店で質の高い体験を届けられるか。単純な店舗数や売上高の削減だけでは、再編の良否を判断できない。
短期の効率化と長期の魅力づくりを両立するには、削減で得た余力をどこへ再配分するかが重要になる。顧客接点や商品開発への投資を削りすぎれば、回復のための基盤まで弱める恐れがある。これは店舗再編に共通する経営上の論点であり、Keringがすでにそうした失敗をしたと断定するものではない。
FASHION SHIFTの10月23日付記事は、Gucciの商品とクリエイティブの再建を扱った。今回は、店舗再編と利益率改善の方針が、顧客との関係を維持しながら事業成果につながるかに注目する。
来店、購入、継続利用、利益の改善がどの順番で進むのか。デザイナーの刷新だけに成否を帰すのでも、コスト削減だけを成功とするのでもなく、複数の指標を通じて再建を評価する必要がある。
グッチの再建は、短期間で結果が出るようなものではないと思う。ファッションブランドには、人気が人気を呼び、売上が大きく伸びる時期がある。しかし、消費者の関心が離れてしまったブランドが、もう一度かつての熱狂を取り戻すのは簡単ではない。
デザイナーを交代し、広告投資を増やし、新商品を投入しても、すぐに顧客が戻るとは限らない。一方で、上場企業である以上、投資家からは業績改善のスピードも求められる。今回の株価下落は、その難しさを象徴しているように感じる。
店舗の統廃合やコスト削減で収益性を改善することは必要だろう。ただし、それだけではブランドの魅力そのものを取り戻せない。グッチが再び「欲しい」と思われる商品や世界観をつくれるか。そこが再建の本質ではないだろうか。
Reuters「Gucci owner Kering drops 16% as luxury braces for tough winter」/2026年10月23日、取引中の報道
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/kering-shares-drop-11-gucci-sales-slide-2026-10-23/
Kering「Revenue for the 3rd quarter of 2026」/2026年10月22日発表
https://www.kering.com/en/news/revenue-for-the-3rd-quarter-of-2026/
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。