リセール市場が問うブランド価値。「何年経っても欲しい服」を作れているか

古着市場の拡大は、販売チャネルの話だけではない。素材や作り、過去のデザインが、次の持ち主に選ばれる価値を考える。
FACTS / 拡大する市場。ただし予測と実績は分ける
ThredUpが4月2日に公表した2026年版リセールレポートでは、世界の中古衣料市場は2030年に3,930億ドルへ拡大するとの予測が示された。GlobalDataの市場分析などに基づく将来推計であり、現在の市場規模ではない。米国の2025年の中古衣料市場は、衣料市場全体のおよそ4倍の速度で成長したとされる。市場の大きさが4倍という意味ではない。
この調査は米国の消費者・小売業者への調査と市場モデルなどを土台にしている。世界市場の予測がそのまま日本の市場規模や、個々のブランドの成長率になるわけではない。
The RealRealが8月に公表した自社のリセールレポートでは、特定の年代を指定する保存検索が前年より135%増えたという。古い商品が時代やデザインを指定して探される動きを示すが、同社内の検索指標であり、購入額や古着市場全体の伸びとは区別する必要がある。
BACKGROUND / 素材と作りを求めて、過去の服を探す人
9月9日のInStyleによる衣料の品質をめぐる報道には、Macy Eleniが古着で見つけた過去のForever 21のシルク100%のブラウスを紹介し、以前の服の素材や作りに魅力を感じる例が登場する。品質を理由に古着を探す個人の事例は確認できる。
ただし、この事例だけで「新品全体の品質が低下した」「多くの消費者がシルクやウールを求めて古着へ移っている」とまでは言えない。特に、ウールを求める消費者の広がりを定量的に裏付ける最新データは今回確認できなかった。個人の声と、市場全体の傾向を分けて考える。
ANALYSIS / 長く残る価値は、次の顧客にも伝わる
ここからはFASHION SHIFTの考察だ。新品で売った時点で関係が終わるのではなく、何年か後に別の人が探して買う。そこでは、ブランド名に加え、素材、縫製、デザイン、状態、修理のしやすさなどが、再び商品の価値として評価される可能性がある。
毎年、新しい商品を大量に作ることだけが成長ではない。長く着られる商品を作り、手入れや修理を支え、過去のモデルについても情報を残すことが、顧客との関係を広げる選択肢になる。次の持ち主が初めてブランドに触れる入口にもなり得る。
もっとも、良い素材なら必ず高く再販できる、という単純な話でもない。需要、状態、サイズ、流通量、時々の人気によって価格は変わる。中古価格だけをブランド価値の指標にせず、長く使われるか、使った人が満足するかという本来の商品力も見たい。
STRATEGY / 定番を育てる議論と、リセールはつながる
本日掲載の秋冬商戦の記事では、翌年も販売できる定番商品を育てる重要性を取り上げた。リセールは、それをさらに顧客側の時間へ広げる視点になる。会社にとって翌年も売れるだけでなく、顧客が何年経っても着たい、別の人も欲しいと思える服にすることだ。
短期の新しさと、長く残る価値をどう組み合わせるか。企画の段階から、着用後の劣化、補修、情報の引き継ぎまで考えることが、売り切りの先にあるブランド経営につながるのではないか。
SOURCES / 出典・元記事URL
ThredUp/2026 Resale Report・2030年予測と2025年の動向
https://thredup.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/thredups-14th-annual-resale-report-reveals-new-era-structural
The RealReal/2026 Resale Report・自社内検索などの分析
https://investor.therealreal.com/news/news-details/2026/THE-REALREALS-2026-RESALE-REPORT-REVEALS-RESALE-IS-BECOMING-FIRST-CHOICE-FOR-SHOPPERS/default.aspx
InStyle/衣料品質をめぐる取材・2026年9月9日
https://www.instyle.com/clothing-quality-investigation-12069139
毎年新しい商品を大量に作ることだけが、成長ではないと思います。何年経っても着られる服、次の持ち主にも欲しいと思われる服を作ること自体が、ブランドの価値になるはずです。
秋冬商戦で話した「定番商品を育てる」という議論ともつながります。長く使える素材や作りを大切にし、年月が経っても価値が残る商品を積み上げる。リセール市場の拡大を、その問いから見ていきたいです。
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