記事一覧へ戻る
2026.10.09 / BUSINESS / AND ST HOLDINGS

営業利益34.6%増、利益率7.1%。and STの約2,270万会員は、次の収益へつながるか

服を選びながらスマートフォンを使う顧客(イメージ写真・and STの店舗や会員ではありません)

売上の伸び以上に利益が増えた理由を、粗利・値引き・費用から分解する。巨大な会員基盤の価値は、人数の先にある。

FACTS / 売上1.9%増に対し、営業利益は34.6%増

アンドエスティHDが9月30日に発表した2027年2月期中間決算は、2026年3月1日〜8月31日を対象とする。正確な連結数値は売上高1,521億1,000万円、営業利益107億3,100万円。会社の説明資料に基づく営業利益率は7.1%で、前年の5.3%から改善した。

指標中間実績前年同期比
売上高1,521億1,000万円1.9%増
営業利益107億3,100万円34.6%増
営業利益率(会社表示)7.1%前年5.3%
親会社株主に帰属する中間純利益59億5,100万円0.6%減

営業利益の増加と純利益の増加は同じではない。一過性の費用などもあり、中間純利益はわずかに減った。利益率の改善幅を示す際は、会社が小数点以下1桁で表示した5.3%と7.1%の比較であることにも注意したい。

PROFIT / 在庫・値引き・原価と費用を組み合わせた改善

会社は、原価低減による値入率の改善と、在庫コントロールによる値引きの抑制を説明している。売上総利益率は55.2%から56.5%へ上昇。値入率は販売価格と仕入れ原価の関係、値引きは実際の販売時の価格調整であり、二つを分けて読む必要がある。

一方、販管費率は49.8%から49.5%へ低下した。広告宣伝の効率化に加え、前年の旗艦店オープンに伴う費用との比較も影響する。人件費は処遇改善などで増えており、全面的な費用削減で利益を作ったという説明ではない。

金額の変化(前年同期比)決算数値からの計算
売上総利益の増加36億2,400万円
販管費の増加8億6,600万円
差し引き営業利益の増加27億5,800万円

この表は決算の金額差を編集部が整理したものだ。粗利の増加が、費用の増加を上回った形を示しており、施策別に利益を配分した会社の効果測定ではない。また、8月末の在庫は前年同期比2.5%増だった。在庫が減ったから増益になったと断定せず、値引きを抑えながら売れる商品を用意できたかを見るべきだ。

BRANDS / GLOBAL WORKは、ほぼ横ばいの売上でも利益改善

ブランド別の上期売上高は、公式データブックで以下の数値を確認した。ブランドの売上であり、既存店だけの増減ではない。

ブランド上期売上高前年同期比
GLOBAL WORK261億2,400万円0.1%増
niko and ...193億4,800万円8.8%増
LOWRYS FARM131億500万円8.1%増
LEPSIM99億1,500万円13.7%増
JEANASIS54億3,300万円0.5%減
BAYFLOW53億3,100万円3.8%減

会社はGLOBAL WORKについて、値引き販売を抑えたため売上の伸びは小さかった一方、収益性が改善したと説明する。売上の増減だけでは商品・販売政策の成果を読み切れない事例だ。ただし、ブランド単独の利益額はここでは確認できない。グループ内には減収ブランドもあり、全体の好決算を一律のブランド成功とみなさない。

PLATFORM / 会員数、GMV、利益は別の指標

8月31日時点の店舗・EC共通会員は約2,270万人、アクティブ会員は約810万人。確認した資料にはアクティブの期間や行動の定義が明記されておらず、810万人を購入者数と読み替えることはできない。

and STの上期GMVは248億円で10.9%増。グループ外のGMVは37億円、77.7%増で、外部ショップは82に拡大した。GMVは流通総額であり、連結売上高やプラットフォームの利益とは異なる。外部ブランドの取り扱いが伸びていることは確認できるが、それだけで会員が生む利益を算定できるわけではない。

ANALYSIS / 人数を、継続的な収益に変える仕組みへ

ここからはFASHION SHIFTの考察だ。会員基盤の強さは、単に多くの人へ広告を届けられることだけではない。同じ顧客が店舗で試し、ECで買い、別のブランドにも出会う。その接点を継続できれば、一度の購入にとどまらない関係を作る余地がある。

しかし、会員数が増えても買わない人が増えるだけなら、収益の基盤にはならない。他社ブランドが加わって選択肢が広がった時、自社の商品に代わるだけなのか、購入頻度や用途が増えるのかも確かめたい。GMVの伸びと、手数料や費用を含む事業としての利益を両方見る必要がある。

今後注目したいのは、購買頻度、客単価、継続率、店舗とECの相互送客、会員との関係に対して残る利益だ。本決算は、売上を追うだけでなく、粗利を守りながら顧客接点を育てる方向を考える材料になる。会員数を強みとして評価しつつ、その先の収益化を継続して追いたい。

SOURCES / 出典・元記事URL

アンドエスティHD/中間決算短信・2026年9月30日(冒頭、損益計算書)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/0b8752f197577e62c1cfaa3c0ea1a8f087e840378383c07c2ef9e93c31494dc6.pdf

アンドエスティHD/決算説明資料・説明文付き(6〜9、12、17ページなど)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/2727feb7904a109591d274ec3efd35f9caefaca2e4862cfe57c74e7eb3b4bf15.pdf

アンドエスティHD/DATABOOK(ブランド別売上高・5ページ)
https://www.andst-hd.co.jp/archives/001/202609/db7005791ce28b7c080b8404a8bfab67c88e8360050184c7f0cb11c2b817b9ee.pdf

編集長・竹内 真はこう見る

特に注目したいのは営業利益率の高さと改善幅です。売上高の伸び以上に営業利益が伸びていることは、収益構造の改善を示しています。売上だけでなく、どれだけ利益を残せたかを見たいと思います。

and STの約2,270万人という会員基盤は非常に大きな強みです。ただし、人数が多いだけでは意味がありません。その会員基盤が実際にどれだけ売上や利益を生むかが重要です。購買頻度、客単価、継続率、ECと店舗の相互送客にも注目したい。巨大な顧客基盤を継続的な収益へ変えるところに、今後の成長可能性があると考えます。

出典と数値・制度の対象時期は公開前に確認。写真は記事テーマのイメージで、紹介企業の実際の商品・店舗・販売員を示すものではありません。