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2026.10.12 / BUSINESS / NIKE / LOUIS VUITTON / CHINA

ナイキとルイ・ヴィトン、中国で問われる「選ばれる理由」。同じ不振と見る前に

都市の商業街を歩く消費者とショップウィンドウ(AI生成イメージ・実際のナイキやルイ・ヴィトンの店舗ではありません)

ナイキの中国減収と、LVMHのアジア回復は同じ話ではない。決算の範囲を分け、世界的ブランドが次の顧客に選ばれる条件を考える。

FACTS / 『世界的ブランドなのに売れない』を分解する

ナイキとルイ・ヴィトンは、なぜ中国で以前と同じように選ばれなくなるのか。この問いを考えるには、まず確認できる業績と、ブランドへの評価を分ける必要がある。最新資料は、両社が同じ状態にあるとは示していない。ナイキには中国事業の減収がある一方、LVMHには日本を除くアジアの回復と、北京のルイ・ヴィトン新旗艦店の好調が記されている。

FACTS / ナイキの中国売上は22%減。為替を除くと26%減

ナイキが10月1日に発表した2027年5月期第1四半期は、2026年6〜8月の実績だ。全社売上高は112億ドルで前年同期比4%減、為替変動を除くと5%減。10月2日提出の四半期報告書によると、NIKE Brandのグレーターチャイナ売上高は11億8,000万ドル、報告ベース22%減、為替変動を除くと26%減だった。同地域のEBITは2億4,800万ドルで34%減。EBITは利息・税金控除前利益で、全社純利益とは異なる。

同報告書は、中国での店頭客数の減少、販促の増加、市場に積み上がった在庫を課題として挙げる。地域売上は中国大陸単独の数字ではなく、NIKE BrandにはJordanも含まれる。再建に伴う調整もあるため、減収を『商品の機能が落ちたから』と決めつける根拠にはならない。

FACTS / LVMHの部門減収を、ヴィトンの中国売上と読まない

LVMHが7月27日に公表した2026年上期の売上高は386億4,400万ユーロ。報告ベース3%減だが、為替と連結範囲の変動を除くオーガニック成長率は2%増だった。ファッション&レザーグッズ部門は181億4,600万ユーロ、報告ベース5%減、オーガニックでは1%減。ただし、第2四半期はオーガニックで1%増へ転じている。

地域別の日本を除くアジアは、グループ全体の上期オーガニック売上が6%増、売上構成比は29%だった。これは中国だけでも、ルイ・ヴィトンだけでもない。部門の数字にはDiorなど複数ブランドが含まれる。今回参照した資料では、ルイ・ヴィトン単独の中国売上額・増減率を確認できない。

公式発表は、北京とソウルのルイ・ヴィトン新旗艦店が良好な業績を収めたと説明している。したがって、過去のラグジュアリー市場減速や部門減収から、現在のヴィトンの中国事業全体が不振だと断定するのは適切ではない。問いは、中国で何が変わり、どんな顧客接点が次の成長につながるかへ進めたい。

BACKGROUND / 消費の弱さと、伸びる企業は両立する

中国国家統計局の9月公表資料では、2026年1〜8月の社会消費品小売総額は前年比1.1%増、8月単月は0.4%増だった。一定規模以上の企業を対象とした衣服・靴・帽子・繊維製品の小売は、1〜8月が5.1%増、8月は0.5%減。全国の衣類消費や高所得者だけを測った統計ではなく、名目額の変化である。

一方、ANTA Sportsの公式IRでは、2026年上期のグループ売上高は435億1,000万元、営業利益率は27.0%だった。ANTAだけでなくFILA、DESCENTEなどを含む多ブランド企業の数字であり、全額を中国ブランドANTA単独の売上と読んではいけない。それでも、同じ消費環境のなかで事業を育てる競争相手が存在することは、ブランド責任者が見ておきたい点だ。

McKinseyの2026年4月の中国消費分析は、成長領域の違いと、現地企業によるソーシャルコマースでの迅速な商品検証・顧客獲得を指摘している。2025年5月公表の同社調査は、2024年末に中国の1万7,000人超を調べ、雇用や不動産価値への不安と、生活の充実を重視する姿勢を示した。高所得の都市消費者については、住宅や車などのモノに加え、喜びを得られるサービスや体験にも支出を向けると分析している。これはモノを買わなくなったという意味ではない。調査・分析の時点と対象は企業決算とは異なるが、『中国全体が悪い』だけでは競争を説明しきれないことを考える材料になる。

ANALYSIS / 所有の次に、何を届けるか

ここからはFASHION SHIFTの考察だ。世界的な知名度や長年の技術は強みだが、それだけで次の購入が決まるとは限らない。すでに十分な服やバッグを持つ顧客にとって、買い足す意味は何か。スポーツに参加する楽しさ、店舗で文化や職人技に触れる時間、長く使うための修理など、商品と一緒に得られる価値を設計する余地がある。ヴィトンが新旗艦店で独自の体験を提供しているという公式説明も、この問いにつながる。

さらに、リユース、環境への配慮、社会貢献につながる購買が、選択理由になる可能性もある。ただし、今回の決算や調査だけで、中国の消費者全体が所有から体験、さらに社会貢献へ移行したとは言えない。その変化が両ブランドの売上低迷を引き起こしたという因果関係も確認できない。これは編集長の仮説として、今後確かめたい論点だ。

BUSINESS VIEW / ブランド力を、現在の顧客に接続する

経営として確かめたいのは、誰が買わなくなり、誰が新しく買っているかだ。初回購入と買い替え、定価と値引き、商品だけの購入と体験を伴う購入を分けて見れば、次に投資すべき接点が見えてくる可能性がある。環境配慮も言葉だけでは足りない。修理の利用、再販への参加、顧客の継続購入などで、実際の価値を検証する必要がある。

商品力を否定する前に、持っている強さが今の顧客の生活に届いているかを問う。中国での競争は、名の知られたブランドが、選ばれる理由を更新し続けられるかという経営課題でもある。

編集長・竹内 真はこう見る

ナイキもルイ・ヴィトンも、世界的な商品力とブランド力を持っています。業績が伸びないことを、単純にデザインや機能性が落ちたからだとは考えたくありません。まず、地域や顧客層ごとの数字を見て、どこで何が起きているのかを分けて考える必要があります。

そのうえで、すでに多くのモノを持つ人の間では、所有することから体験することへ、さらに環境や社会への貢献へと、価値観が徐々に動いている可能性があるのではないかと思います。リユースや環境配慮型商品、社会貢献につながる商品は、新しい選ばれる理由になり得る。

ただし、それが中国での売上低迷の原因だと断定するつもりはありません。今回確認した資料では、LVMHのアジア事業には回復も見えます。調査で分かることと仮説を分けながら、強いブランドが次の顧客に何を届けるかを追っていきたいです。

SOURCES / 出典・元記事URL

NIKE/FY2027第1四半期決算・2026年10月1日発表
https://about.nike.com/en/newsroom/releases/nike-inc-reports-fiscal-2027-first-quarter-results

NIKE/2026年8月31日終了四半期・10-Q(10月2日提出)
https://investors.nike.com/sec-filings/all-sec-filings/content/0000320187-26-000193/nke-20260831.htm

LVMH/2026年上期決算・2026年7月27日
https://www.lvmh.com/en/publications/accelerating-growth-in-the-second-quarter---solid-first-half-results

LVMH/2026年上期決算説明資料(地域別構成・成長率)
https://lvmh-com.cdn.prismic.io/lvmh-com/68yUok3lubOY0jf__LVMH_2026FirsthalfResults_Presentation.pdf

中国国家統計局/2026年1〜8月小売統計(英語版9月16日)
https://www.stats.gov.cn/english/PressRelease/202609/t20260916_1965341.html

ANTA Sports/2026年中間決算・公式IR
https://ir.anta.com/en/index.php/financial.php

McKinsey/中国消費分析・2026年4月9日
https://www.mckinsey.com/cn/our-insights/our-insights/china-consumption-update-what-is-new-in-the-year-of-the-horse

McKinsey/中国消費者調査に基づく分析・2025年5月7日
https://www.mckinsey.com/cn/our-insights/our-insights/chinese-consumption-amid-the-new-reality

AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。