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2026.10.19 / BUSINESS / FASHION / BEAUTY

服の次に、何を届けるか。美容と近づくファッションブランドの成長条件

衣服の柔らかな素材と無地の美容容器を組み合わせたAI生成イメージ。紹介企業の実際の商品ではありません。

着るスキンケア、LANEIGE×Matin Kim、SNIDEL BEAUTY。三つの事業モデルから、衣料の先に顧客との関係を広げる方法と、異分野へ進出する条件を考える。

NEWS / 美容を、衣料以外の売上だけで捉えない

10月19日付の繊研新聞「【記者の目】加速する美容消費 ファッションとの協業に商機あり」は、公開部分で、美容に関心を持つSNSコミュニティの活発な情報交換と、美容を意識した商品・ブランド開発の広がりを取り上げた。本稿はその問題提起を起点に、企業の公式発表から三つの事業モデルを比較する。有料本文の未確認部分を補うものではなく、美容市場全体の成長率や協業の収益効果を示す記事でもない。

FACTS / 衣料に機能を加える、他社と組む、自社で育てる

一つ目は、衣料品そのものに美容の要素を加える方法だ。アルページュは7月10日、Arpege story Originalの「着るスキンケア」を発表した。Tシャツは税込1万1,000円、リブニットタンクは同8,250円。7月8日に名古屋のポップアップで先行発売し、7月16日から全店発売とした。発表日と発売日は異なる。

セラミドNPなどを含む成分を繊維に付着させ、着用時の肌の潤いを提案するという会社説明だ。ここで重要なのは、服を化粧品へ置き換えるというより、日常のベーシック服に別の購入理由を加えている点にある。なお、効能は企業の説明であり、本稿が独自に検証した臨床結果ではない。

二つ目は、専門企業との協業だ。アモーレパシフィックジャパンは8月20日、LANEIGEとファッションブランドMatin Kimの限定コレクション全4種を発表し、9月1日に発売した。クッションファンデーション、フェイスパウダー、リップティント、ミストタイプのローションを展開。限定デザインに加え、バッグやポーチ、リップケースなども用意した。

この事例では、美容商品の機能とファッションのデザイン・携帯する楽しさを組み合わせている。アパレル側が美容商品の開発をすべて内製しなくても、専門性を持つ企業と組み、ブランドの表現を広げる選択肢になる。ただし、今回の販売数量や利益、相互の新規顧客獲得効果は確認できない。

三つ目は、自社の世界観を美容ブランドへ展開する方法だ。マッシュホールディングスは2021年2月9日、マッシュビューティーラボによるSNIDEL BEAUTYのデビューを発表した。同年3月3日、公式オンラインストアとルミネ新宿ルミネ2の1号店で発売。当初はメイクやスキンケアなど85アイテムを打ち出した。これは2026年の新発表ではなく、ファッションのブランド名と美意識を別の商品領域へ広げた先行事例であり、85は現在の商品数ではない。

ANALYSIS / 共通するのは「同じ人の生活」を見る発想

ここからはFASHION SHIFTの分析だ。服と美容は、別々の市場分類に入っていても、顧客の生活の中ではつながっている。仕事の日の装い、休日の外出、ギフトなど、同じ場面で服、肌、メイク、香りを選ぶことがある。ブランドが既に理解している顧客の好みや生活場面を、美容の提案に生かせる可能性がある。

SNSでは、着こなしとメイクを一つの投稿で紹介しやすい。一方、ファッションのフォロワーがそのまま美容商品の購入者になるとは限らない。商品の品質、使用感、肌との相性など、衣料とは異なる判断材料があるためだ。見た目の統一や話題性だけでは、継続購入まで説明できない。

既存顧客へのクロスセルやLTVの向上も、期待できる可能性と、実績として確認された効果を分けたい。服と美容商品の併買率、購入頻度、再購入、値引き後の利益、在庫回転まで追って初めて、顧客との関係が深まったかを評価できる。SNSで話題になったことを、事業の成功と同一視しない視点が必要になる。

ANALYSIS / 自社の顧客に合う参入方法を選ぶ

三つの方法は、必要な能力もリスクも違う。機能性衣料では加工の性能や洗濯・使用条件を伝える必要がある。他社との限定協業では契約上の役割、販売期間、残った在庫の扱いが課題になる。自社美容ブランドは、品質管理や継続的な商品開発、問い合わせ対応まで含めた運営体制が求められる。

販売員には、服と一緒に勧める理由に加え、説明できる範囲を共有したい。ECもイメージ写真だけでなく、成分、使い方、注意点など、購入判断に必要な情報を整理する。顧客データを活用する場合も、美容の購入履歴を無条件で他用途へ広げるのではなく、利用目的を踏まえた提案が前提になる。

衣料の販売点数を増やす以外にも、成長の道はある。ただし、新しいカテゴリーを増やすこと自体を目標にせず、自社の顧客が求める価値と、それを届け続けられる事業体制がつながっているかを確かめたい。

編集長・竹内 真はこう見る

ファッションと美容は、一見すると別の事業領域ですが、顧客に提供する価値には共通点があります。服を選ぶことも、スキンケアやメイクを楽しむことも、自分らしくありたい、美しくありたいという気持ちにつながっています。

アパレル企業にとって、美容への展開は単なる新規事業ではなく、既存顧客との関係を深める手段になり得ると思います。

ただし、流行しているから美容商品を扱えばよいわけではありません。自社ブランドの顧客が求めている価値を理解し、その延長線上で商品やサービスを提供できることが重要ではないでしょうか。

SOURCES / 出典・元記事URL

AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。