ミュウミュウ、急成長にブレーキ。ブランドはブームの先に何を目指すべきか

Miu Miuの2026年7〜9月の小売売上高は恒常為替で2.7%減。一方、1〜9月累計は0.8%増だった。高い前年実績を踏まえ、四半期の減速と長期的なブランド経営の課題を分けて考える。
FACTS / 四半期は2.7%減、累計は0.8%増
Prada Groupが2026年10月22日に公表した1〜9月売上開示によると、Miu Miuの小売売上高は11億5,578.8万ユーロだった。前年同期の11億7,823.7万ユーロに対し、報告ベースでは1.9%減、為替の影響を調整した恒常為替ベースでは0.8%増となった。対象は直営店とECによる小売売上で、卸売などを含むブランド全体の売上とは区別する。
7〜9月の第3四半期単独では、恒常為替ベースで2.7%減。説明会資料はこれを3%減と丸めて表示している。同じ資料の1〜9月累計の1%増も、詳細開示の0.8%増を丸めたものだ。「3%減」は年間や累計の数字ではない。
前年2025年の小売売上は、1〜9月累計で41.4%増、第3四半期単独で28.6%増だった。報道や説明資料の41%増、29%増に対応する。今回の減速は、すでに大きく成長した前年との比較でもある。
会社は第3四半期について、高い比較対象に加え、地域構成や中東情勢の影響を挙げ、中東の悪影響を除くとおおむね横ばいだったと説明している。これは会社側の説明であり、個々の要因の寄与度を独立に実証したものではない。プラダグループ全体にはVersaceの連結寄与もあり、その成長率をMiu Miuの勢いと同一視することもできない。
Miu Miuの売上成長率の推移
BACKGROUND / 商品と文化的な接点を重ねた成長
同じ1〜9月累計で見ると、恒常為替ベースの成長率は2023年49.5%、2024年97.3%、2025年41.4%。2024年には前年のほぼ2倍へ拡大した。成長率の低下は確認できるが、率が下がることと、それまで積み上げた売上規模を失うことは別である。
2023年の会社発表は、WanderやArcadieなどのバッグ、コレクションやキャンペーンを通じた認知と顧客関係の強化に言及した。2024年にはアート企画「Tales & Tellers」など文化との接点も紹介。2026年の資料では、新しいレザーグッズと既存のアイコン商品、音楽を軸にしたMiu Miu Vinyl Clubなどを説明している。商品だけでなく、ブランドに触れる機会を継続してつくってきたことが分かる。
ただし、SNSや特定企画が売上を何%押し上げたかは確認できない。会社が紹介する活動と、売上への因果関係は分けて読む必要がある。
ANALYSIS / 成長期にこそ、人気が落ち着いた後の設計を
急成長期の難しさは、需要の勢いを前提にした店舗投資や在庫、人員の計画が、そのまま長期の適正規模とは限らないことだ。短期の話題に合わせて供給を増やしすぎれば、販売が落ち着いた際に値引きや在庫負担へつながる可能性がある。これはブランド経営に共通するリスクであり、Miu Miuが実際に過剰在庫を抱えていると確認したものではない。
持続的な成長には、新規顧客の獲得だけでなく、定番商品の継続購入、修理や接客を含めた信頼関係、無理のない供給量が重要になると考える。話題性のある商品から入った顧客が、数年後も何を理由にこのブランドを選ぶのか。その問いを、成長しているうちから商品と店舗の運営へ落とし込む必要がある。
Gucciは過去の高成長から再建へ取り組む段階にあり、Miu Miuの今回の四半期減収と同じ状態ではない。共通する論点は、関心を集める力を継続的な購買へ変える難しさだ。今回だけで「ブーム終了」と結論づけず、今後の顧客の継続購入や地域別の動向を見極めたい。
ファッションブランドには、勢いが勢いを呼ぶ時期がある。商品が話題になり、SNSで拡散され、新しい顧客が次の顧客を呼ぶ。ミュウミュウは、まさにそうした成長を遂げてきたブランドの一つだと思う。
しかし、ブランド経営で難しいのは、その人気を維持することだ。かつてのグッチも、若い世代から支持を集め、ファッション業界をリードしていた。そうしたブランドが長い苦戦を強いられていることに、再び関心を引きつける難しさを感じる。
一度ブームが過ぎ、消費者の関心が別のブランドへ移ると、人気を取り戻すのは容易ではない。広告宣伝費やマーケティング投資も、それまで以上に必要になる可能性がある。だから私は、一時的な爆発的成長よりも、長く続く緩やかな成長を目指すことが重要だと考えている。
ヒット商品や話題性だけに頼らず、定番商品を育て、顧客との関係を深め、繰り返し購入してもらえるブランドをつくる。成長しているときこそ、その先を考えるべきなのだと思う。
もちろん、今回の四半期減収だけでミュウミュウのブームが終わったと判断するのは早い。急成長してきたブランドだからこそ、ここからどのような成長曲線を描くのかに注目したい。
SOURCES / 出典・元記事URL
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2023/公表 2023-10-31/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2023/inglese/e-Announcement%20of%20the%20Consolidated%20Revenues%20for%20the%20period%20ended%20September%2030%202023.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2024/公表 2024-10-30/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2024/Inglese/9M/e%20-%20Announcement%20of%20the%20Consolidated%20revenues%20for%20the%20period%20ended%20September%2030%202024.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine Months Ended September 30, 2025/公表 2025-10-23/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2025/e-Announcement-of-the-Consolidated-revenues-for-the-period-ended-September-30-2025.pdf
Prada S.p.A. Announcement of Unaudited Revenues for the Nine-Month Period Ended September 30, 2026/公表 2026-10-22/小売表2ページ
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/Shareholderinformation/2026/inglese/e-Announcement-of-the-Consolidated-revenues-for-the-period-ended-September-30-2026.pdf
Prada Group 9M2026 analyst presentation/2026年10月22日
https://www.pradagroup.com/content/dam/pradagroup/documents/investors/9M-2026/Prada-Group-9M26-analyst-presentation.pdf
Prada Group 9M2023 ブランド活動/2023年10月31日
https://www.pradagroup.com/en/news-media/press-releases-documents/2023/23-10-31-prada-group-results-9m.html
Prada Group 9M2024 ブランド活動/2024年10月30日
https://www.pradagroup.com/en/news-media/press-releases-documents/2024/24-10-30-prada-group-2024-9m-revenue.html
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