ゼニア、店舗を絞りながら直販成長。競争力は「店舗数」から「顧客価値」へ

ZEGNAの直営店は6月末279店から9月末275店へ。一方、7〜9月のブランドDTC売上は報告ベース18.2%増だった。閉店を成長要因と断定せず、顧客接点の質と直販戦略を考える。
掲載日・初公開:2026年10月28日
FACTS / グループ売上8.9%増、ブランドでは明暗
Ermenegildo Zegna Groupが10月22日に公表した2026年7〜9月の未監査売上高は4億3,376.8万ユーロ。報告ベースで前年同期比8.9%増、為替と買収・売却の影響を除くオーガニックでは8.2%増だった。1〜9月累計の7.2%増と区別する。
下表は同じ第3四半期のブランド別数値。グループには繊維事業なども含まれ、3ブランドの合計がそのまま総売上になるわけではない。
表は左右にスクロールして確認できます。
| Q3売上 | 百万ユーロ | 報告前年比 | オーガニック |
|---|---|---|---|
| グループ全体 | 433.768 | +8.9% | +8.2% |
| ZEGNA | 283.844 | +13.8% | +12.7% |
| Thom Browne | 45.358 | −5.9% | −7.4% |
| TOM FORD FASHION | 69.573 | +5.4% | +5.5% |
FACTS / 直販は伸び、卸売は減少
グループDTC売上は3億3,532.9万ユーロ、報告ベース13.0%増、オーガニック11.4%増。ZEGNAのDTCは2億4,859.9万ユーロ、18.2%増、オーガニック16.4%増だった。ブランド商品卸売はグループで5.2%減となった。
DTCは直営店だけではなく、直営オンラインストアも含む。卸売は第三者が運営する販売先への売上で、商品の出荷時期の影響を受ける。直販が伸びたという事実を、すべての実店舗の既存店売上が増えたという意味には置き換えられない。
地域別ではグループの米州売上が報告ベース14.0%増、オーガニック13.6%増。中華圏は8.7%増、同5.7%増だった。いずれもZEGNA単独ではなくグループの地域集計である。
DATA / 店舗数と売上は、期間を分けて読む
ZEGNAの直営店は6月末279店から9月末275店へ、四半期で4店純減した。同期間にThom Browneは128店から129店、TOM FORD FASHIONは67店で横ばい。グループ全ブランドが同じ縮小策を採っているわけではない。
| 直営店数(期末) | 2026年6月末 | 2026年9月末 |
|---|---|---|
| ZEGNA | 279 | 275 |
| Thom Browne | 128 | 129 |
| TOM FORD FASHION | 67 | 67 |
| ZEGNA DTC売上(百万ユーロ) | 2025年7〜9月 | 2026年7〜9月 |
|---|---|---|
| 同じ四半期の売上比較 | 210.373 | 248.599 |
DATA NOTE / 期末店舗数で店舗生産性は測れない
出典は第3四半期売上資料と6月末中間報告。店舗数は期末の時点値、売上は四半期の期間値である。DTCにはECも含まれるため、この売上を275店で割った数字を、正確な店舗生産性や既存店売上として使わない。店舗数減少が増収を引き起こしたとも断定できない。
前年9月末のZEGNA直営店は282店で、275店との差は7店。「前年より20店少ない」は、卸売店舗を含むグループ全体のモノブランド店舗網という別の集計に対応するため、ZEGNA直営店の説明には使わない。
ANALYSIS / 直販の価値は、売価だけではない
直販は、商品をどう見せ、誰にどう提案するかをブランドが管理しやすい。接客や購入履歴を通じて、次の提案や商品開発に使う情報を得る機会も生まれる。卸売と比べた売上や粗利益の構造だけでなく、顧客との関係を直接育てられることに戦略的な意味がある。
一方、賃料、人員、在庫、配送、決済などの運営負担を引き受ける。直販比率が上がれば必ず営業利益率も上がるとは限らない。第3四半期の今回の資料は売上開示であり、店舗別採算や四半期利益の改善は確認できない。
卸売も、ブランドに初めて触れる場所や、地域の顧客を知る販売者との接点になり得る。どちらか一方を善しとせず、商品と地域に応じて直営店・EC・卸先の役割を決める必要がある。
ANALYSIS / 残す店舗をどう強くするか
上期公式報告は、直営網を通じた個別の顧客対応や体験を戦略として説明している。ただし、今回の増収を特定の接客施策の成果と実証したものではない。顧客生涯価値や購入頻度がどれだけ改善したかも、公表資料からは確認できなかった。
日本の百貨店ブランドやセレクトショップにも、店舗の数と役割を分けて評価する視点は参考になる。閉店した拠点の顧客を残る店やECへ引き継ぎ、好み、サイズ、購入履歴を理解した提案へつなげられるか。接客スタッフがその仕事に使える時間と情報を整えることが重要だ。
評価には売上だけでなく、継続購入、顧客の利用チャネル、返品、粗利益、接客にかかる費用なども必要になる。LTVは顧客との長期的な関係から得られる価値であり、会員情報を集めただけで高まるものではない。出店数を目標にする経営から、一人の顧客に届ける価値と採算を磨く経営へ転換できるかが問われる。
ファッション企業の成長を考えるとき、これまでは店舗数や売場面積を増やすことが一つの重要な指標だった。しかし、国内外の市場が成熟する中で、店舗を増やせば売上が伸びるという時代ではなくなってきたと思う。
今回のゼニアの決算で注目したいのは、店舗網を見直しながらも直販事業が成長していることだ。重要なのは、何店舗あるかではなく、一つひとつの店舗がお客様にどれだけの価値を提供できているかではないだろうか。
特にラグジュアリーブランドでは、一人の顧客との関係が長く続くことに大きな価値がある。顧客の好みや購入履歴を理解し、その人に合った提案を続けることで、店舗は単に商品を販売する場所ではなく、ブランドとの関係を深める場所になる。
私は、日本のアパレル企業も店舗数や売上高だけでなく、既存顧客との関係、購入頻度、顧客生涯価値などをもっと重視するべきだと思う。不採算店舗を減らすことは重要だが、閉店するだけでは成長戦略にならない。
残した店舗をどう強くするのか。そこで働くスタッフの接客力や顧客との関係を、どう事業の強みに変えていくのか。出店数ではなく顧客価値を競う経営への転換が、これからのアパレル企業に求められているのではないだろうか。
SOURCES / 出典・元記事URL
Ermenegildo Zegna Group Q3 2026 Revenues/2026年10月22日発表、SEC Exhibit 99.1
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1877787/000187778726000040/pressreleaserevenuesq32026.htm
Ermenegildo Zegna N.V. 2026年6月30日中間報告/SEC、店舗網・DTC定義・上期戦略
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1877787/000187778726000036/zgn-20260630.htm
AI生成イメージ。紹介企業の実際の店舗・商品・社員、技術や過去の記録写真ではありません。